5369.覇権移行期の混乱か?



世界は混乱の中に投げ込まれたようである。イエメン内戦、シリア
とイラクのイスラム国、シリア紛争、ウクライナ紛争、ナイジェリ
アのボコハラム、ソマリア紛争、リビアとアルジェリアの内戦、南
シナ海での中国の紛争などと徐々に、世界の紛争地域が増えてきた。

それにギリシャや英国のEU離脱、世界経済の長期停滞問題と経済
問題も加わり、米国の同盟国である英国もイスラエルも同盟を解消
に動くなど、世界はどこにいくのであろうか?と疑問が起きる。
それを検討したい。            津田より

0.覇権移行期か?
このコラムを発行した動機は、世界の覇権が移行期を迎えて、今後
世界が混乱することを予想されたので、この状況を見ていこうとし
て、2008年秋に、この有料版を作った。

しかし、世界経済より、日本経済が凋落して、中国が米国の対抗と
して、その姿を現してきた。しかし、中国はソ連とは違い、経済力
が重要と、米国との軍事的な対決をしないで、米国の技術をもらっ
て、その経済力を伸ばしてきた。そして、2010年に米国に次い
で経済規模が2位になる。現在、日本の約2倍の経済規模になって
いる。

1992年トウ小平が南方講話で、先に豊かになるものがいてもよ
いと市場経済化した。中国は、技術コピー戦略で、1994年に、
通貨を切り下げて、自国の労働賃金を圧倒的に安くし、世界の優秀
な企業が中国国営企業と合弁を作り、自国にその工場を立てさせて
技術の取得を目指した。この戦略が大成功であった。

一方、米国は日本との技術戦争に負けそうであり、中国を日本の対
抗馬に仕立て上げ、日本を潰そうとした。その時の米国は、中国が
発展すれば、独裁政治から民主政治になるから心配する必要はない
ということであった。米国にとって、日本の技術力の方が脅威であ
ったのだ。世界的な安値戦争に巻き込まれて、日本企業も中国に工
場を建てて、技術を盗まれている。

川崎重工は、JR東海葛西会長の中国に新幹線技術を持っていったら
、盗まれるだけだから止めておけという注意を振り切って、中国に
技術を提供してしまった。中国の新幹線技術が確立して、現在、世
界的に安値で輸出しようとしている。

米国の中国も豊かになれば民主化するという考え方は、大きな落と
し穴であったことが分かる。中国は変わらなく、独裁政治を続けて
いるし、その強化をして、米国より経済力でも軍事力でも仰臥しよ
うとしている。米国から覇権を奪い取る方向に向かっている。

中国の賢いことは、それでも米国と直接的な対決をしないで、徐々
に経済的軍事的な優位性を確立していくことである。そのために軍
事費を年率10%以上も増額している。また、中国はロシアなどに
資金を提供して、米国への代理戦争を仕掛けている。

EUから離脱するギリシャにもロシア経由で資金を提供しようとし
ている。トルキッシュ・ストリームというパイプラインがギリシャ
を通るが、その権利金をギリシャに払うというが、その建設費の半
分以上は中国の出資金である。

一方、米国経済は3回の量的緩和で3%程度の成長をし始めたが、
労働賃金なども低く、貧富の差が開き、石油価格が下落して、シェ
ールオイル企業等も縮小していて、また、ドル高であり株価が上が
っているが、今後の産業が見いだせない状況である。世界市場で日
本企業との競争に負け始めている。1ドル=115円であれば、日
本の技術力は、世界的に向かうところなしになる。

このため、米軍事予算規模は徐々に下げざるを得ない方向であり、
共和党や民主党でも海外での軍事行動はやめようという意見が多く
なり、米国がモンロー主義に戻る方向に向かっている。

このため、覇権移行が必然的になると見て、今後の世界の安定化に
ついて考えておく必要がある。もちろん、米国が復活して覇権を維
持することになるかもしれないが、現時点の米国世論を見ると、そ
うではない。

事実、現実の紛争に米国は地上軍を参加させていない。このため、
各紛争がほとんど解決していない。そして、徐々に紛争地域が拡大
してきている。米国が弱くなり、イランやトルコなど昔の地域帝国
の夢が復活してきた。中国も唐帝国の夢を実現するということであ
るが、それ以外でも夢を見る国家が出てきているので、紛争は今後
も拡大していく。

1.覇権移行の方法
覇権移行には、2つの形がある。1つが、戦争等で圧勝して移行す
る場合と、2つには英国から米国に覇権が移行したように譲与され
る場合である。

米国は中国と対抗するために、日本が必要になってきた。このため、
技術的な競争で負けても、中国より日本の方が米国の言う事を聞く
し、与しやすしであると見たようである。このため、1ドル=120
円を許したし、今後の技術の柱であるIPS細胞研究の企業を日本企業
が買収することも許した。

米国はITと宇宙で、日本が医療と水素と両国の役割を決めてきた
ように感じる。最先端分野では、周辺技術の積み上げが必要であり
、全ての分野での優位性を持つことはできない。このため、産業分
野を調整することが重要になる。

その代わりに、日本は安全保障分野では米国に譲歩したのである。
日本は米国に変わり、紛争地域にも自衛隊を出すというので、米国
が手を引くことで紛争が拡大する現状で、日本の自衛隊が使えるこ
とは、米国にとっても大きなメリットである。

ということで、中国は、戦争で圧勝して米国から覇権を移行させる
戦略であり、日本は、米国から譲与される戦略である。中国は、こ
のため、ロシアなど米国と対決している国を助けて、米国の同盟国
をも中国の持つ経済力で、味方に引き入れようとしている。

この戦略は成功して、英国やイスラエル、ドイツなどEUがなびい
ている。そして、豊富な外貨を用いて、一帯一路という新シルクロ
ードを作るという大建設計画を出している。欧米から経済の中心を
中国周辺に移行させていく壮大な計画である。

英国やイスラエルは、今まで米国のもっとも密接な関係を持つ同盟
国であったが、米国の衰退を見て、同盟国から一歩後退させている。

その2ケ国と違い、日本は米国に寄り添っていくことを選択した。
このため、米国は喜んだのであり、安倍首相の議会演説が良かった
というような瑣末な問題ではなく、日本の戦略を評価したのである
。状況として、米国ともっとも密接な関係を持つ同盟国として日本
を認識したのである。

しかし、米国と同盟関係を緊密にするということは、必然的に覇権
獲得競争に巻き込まれることになる。

2.覇権の条件
覇権には4つの条件が必要になる。軍事力が他を圧倒すること、経
済力が他を圧倒すること、文化・思想レベルが他国に比べて高く、
その文化・思想をひろめようとすること、支配体制を確立している
ことの4つである。

中国は、現状の支配体制に変わる仕組みを作る必要があり、BRICS銀
行とアジアインフラ投資銀行を作り、金融体制から世界的な支配体
制を作り始めた。日本は譲与される道であり、これは必要がない。

中国とロシアの両国で米国の軍事力より大きくする必要があるが、
現時点では、日本と米国の両国での軍事力は他を仰臥している。

文化・思想レベルで、日本は世界的にも非常に優れていることが、
徐々に日本人でも認識できるようになってきた。そして、その日本
の文化を世界に広めようとしている。世界から観光客が押し寄せて、
日本の良さが世界の人たちにも理解され始めている。

これに対して、中国は公害が酷くて、観光客が減少しているし、中
国の過去の文化は、日本にしかない。中国文化の最高峰である宋の
文化は、鎌倉五山文化として、日本で「わびさび」の文化を生み出
しているが、中国では宋の文化が途絶えている。論語も中国は文化
大革命で論語学者を殺したり、国外追放したので、日本、香港、台
湾にしかいない。

というように中国文化は日本にあることで、中国では文化力が高く
ないのだ。

このため、圧倒的な経済力で世界をひれ伏させようとしているのが
今の中国の姿である。国内に金をばらまかずに、世界に金をばらま
くというので、皆が中国の方を向いている。

中国は人民元を国際通貨化したいようであるが、為替管理をして、
ドルとのリンクを維持して、安値に維持していることで、国際通貨
としては失格とIMFから言われている。しかし、人民元を切り上
げたら、中国製品の競争力はなくなり、大きな経常黒字はできなく
なり、世界に金をばらまけなくなる。

ということで、覇権を取れるような状況ではないが、中国は取る方
向で進んでいくようである。

日本も経済力をつけるためには、人口問題などを解決することが必
要であり、移民制度などの確立が必要になる。

米国の衰退で世界は混乱期にあることは間違えないのであるが、誰
が次の覇権を握り、次の世界を構築するのであろうか?

さあ、どうなりますか?


参考資料
3078.次の産業革命と覇権の移行
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L0/201013.htm

3199.コンドラチェフの波
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L1/210209.htm

3218.次の経済思想はどうあるべきか?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L1/210301.htm

3254.米覇権衰退後の日本の役割
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L1/210406.htm

3114.新世界秩序の歴史と考察
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L0/201117.htm

3518.歴史を循環論的視点から
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L2/220110.htm

1787.覇権とその移行期について
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k6/161023.htm
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日米関係、さらに強化を=福田氏ら有識者が声明
 日米関係の在り方を話し合う有識者の会合が9日、東京都内で開
催され、「両国はアジア太平洋の平和と繁栄を維持する共通の目標
を有している。2国間関係をさらに強化発展させる」とした共同議
長声明をまとめた。中国の台頭など地域情勢の変化を踏まえて日米
同盟のさらなる深化を提起したもので、有識者らは声明の内容の実
現を日米両政府に求めていく考え。
 会合後の記者会見で、日本側共同議長を務める福田康夫元首相は
「日米が戦後70周年を迎える中、中長期的な観点から日米関係を
もう一度見直す」と指摘。米側共同議長のダシュル元民主党上院院
内総務も「安倍晋三首相は訪米中も大歓迎を受けた。強い関係が未
来に渡って続くようにしなければいけない」と強調した。
 声明は、環太平洋におけるオープンな経済的枠組みの構築、日米
の若者交流やビジネスマンの教育機会の拡大などを列挙した。昼食
会には首相も出席し、「安全保障では新ガイドラインの下、日米が
協力をして、地域の平和と安定に貢献をしていきたい」などと語っ
た。(2015/05/09-18:15)
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急接近の中ロ、FTA視野=首脳会談で検討合意
 【北京時事】中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は
8日の会談で、両国を中心とする自由貿易協定(FTA)締結の可
能性について、調査・研究を進めることで合意した。中ロそれぞれ
が抱える事情と思惑が急速な関係強化を促している。
 中国国営新華社通信が9日配信した首脳会談の共同声明では「(
ロシア中心の)ユーラシア経済同盟と中国の自由貿易圏構築という
長期目標について研究する」との文言が盛り込まれた。実質的な中
ロFTAの締結に向けた作業が始まることを意味する。
(2015/05/09-16:22)
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中国の岩礁埋め立て、4カ月で4倍に 米国防総省が分析
ワシントン=佐藤武嗣2015年5月9日11時00分asahi
 米国防総省は8日、中国の軍事力を分析した年次報告書を公表し
た。中国が周辺国と領有権を争う南シナ海・南沙諸島で岩礁の埋め
立てを進めていることに、強い懸念を表明。埋め立て面積について
、報告書は昨年末時点で「約2平方キロメートル」としたが、国防
総省高官は、その後約4カ月で急速に拡大し、現時点ではその4倍
にあたる約8平方キロメートルに達していると指摘した。
 議会向けに作成された報告書では「2014年に中国が南沙諸島
で土地を埋め立て、強化された構造物を建設しはじめた」と指摘。
滑走路のほか、将来的に港湾や輸送・補給拠点などとしても利用可
能になるとし、「中国がこうした施設を持続的な民生・軍事の基地
として利用できるようになり、領有権を争う地域で存在感を著しく
増すことになる」と警戒感を示した。
 同省高官は「こうした大規模な埋め立ては平和と安定を望む地域
の意向と相いれない」と批判した。
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中国、貿易総額11%減 4月、輸入は16%マイナス
 【北京共同】中国税関総署は8日、4月の輸出と輸入を合わせた
貿易総額が前年同月比11・1%減だったと発表した。前月の
13・8%減より減少率が縮小したものの、2カ月連続で前月を下
回った。輸出は6・4%減、輸入は16・2%減だった。
 4月の輸出は前月の15・0%減と比べやや持ち直したが、2カ
月連続で前年同月を割り込んだ。賃金上昇などで生産コストがかさ
むようになり、輸出産業の国際競争力が落ちたことが背景にある。
 輸入は前月の12・7%減から悪化した。中国経済の減速で内需
が低迷したとみられる。資源価格の下落も影響した。
2015/05/08 12:51   【共同通信】
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嵐の前の静けさ
「時事直言」第980号(2015年4月30日号)
ここで言う「静けさ」とは市場のことで、値動きが静かか、静かで
ないかはVIX(ボラティリティ・インデックス)別名恐怖指数で表さ
れ、市場参加者の心理を表す。
VIX指数が低ければ値動きが小さく、指数が大きければ値動きは乱高
下であることを示す。現在のNY市場のVIXは10‐13で2006年以来最も
低い。
2007年末から始まった暴落の前夜は今日と同じくVIX指数は最低であ
った。
Bloombergの最近のアメリカにおけるLeveraged lending(株式売買
信用貸付残)の指標によると2006年のピーク100は2008年9月の暴落
時には60まで下がったが現在は100に戻り、正に暴落前夜の様相。
FRB(連邦準備理事会)は2008年から600兆円相当の緩和資金を、資
金を必要としない市場に国債を買う形で投入、資金インフレによる
金利上昇を人為的に押さえてきた。
もし各先進国中央銀行の超大緩和が無ければ、株式、債券、不動産
価格の上昇は有り得なかった。
FRBは支払い不能の米国債と心中することは出来ないので緩和(国債
買い)を昨年10月末に止め、今や利上げ時期を模索している。
中央銀行が国債を買うから安心して国債を買ってきた結果短期国債
の利回りはマイナスになっている。潜在的不渡り手形を割り引くと
、金利を払うどころかご褒美として金利がもらえるのである。
FRBが言う「正常に戻す」とは、不渡り型手形であろうと、一流手形
であろうと割り引くには金利を払わなくてはならない状態に戻すと
いうことである。
世界の中央銀行としてのFRBが世界の金利を上げると言うことである。
ロシアと中国は米国債の値がピークの現在盛んに売りながら外貨準
備から米国資産を減らしている。
日本の公的資金で米国債を買い続けているが、日本の資金が間接的
にロシアと中国に取られていることになる。今後起きることは国際
的米国債の売り圧力。
米国債10年物利回りが2%を超えて上昇し始めると、一斉に米国債売
りの流れが加速し、国債市場、株式市場、不動産市場が暴落に向か
うだろう。
「米国債市場が暴落の発端になる」と私が言ってきたが、その通り
の様相になってきた。
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中国GDP、世界2位確実に 日本、42年ぶり転落 
10年2ケタ成長
2011/1/20 11:00 (2011/1/20 13:32更新)日経
 【北京=高橋哲史】中国国家統計局は20日、2010年の国内総生産
(GDP)が実質で前年比10.3%増えたと発表した。年間の成長率
が2桁になったのは07年以来、3年ぶり。公共投資や輸出がけん引
し、世界的な金融危機の後遺症から抜け出せない日米欧とは対照的
な高成長を実現した。名目GDPが日本を抜いたのは確実で、日本
は42年間にわたり保ってきた世界第2位の経済大国の地位を中国に
譲る。



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