■ISIL問題の解決 西洋は十字軍を詫びてイスラム社会と和解 せよ 佐藤 ●例えISIL(イスラム国)の猛威が収束しても、中東の混乱は 収まらず、イスラム過激思想は各国の若者を惹き付け続け、世界中 でテロは止まない。 ●その解決には、イスラム世界の中で穏健派を圧倒的に増やすと共 に、過激派への供給源を絶つしかない。 ●そのため、西洋キリスト教社会、なかんずく象徴としてローマ法 王が十字軍や植民地支配を詫びてイスラム社会と和解する必要があ る。 ●一方、イスラム教は宗教改革・近代化を行い、産業育成により貧 困からの脱出を図る必要がある。 ◆ISILの席巻◆ 日本人人質を殺害するなど残虐行為を繰り返し、中東シリア北東部 とイラク北部に掛けて席巻するISIL(イスラム国)は、スンニ ー派によるイスラム帝国再興を目的としてアルカイダ系過激派組織 を母体に結成され、シリア内戦での反政府過激派やイラクのサダム フセイン政権の残党を取り込むと同時に、インターネットを使って イスラム過激思想に染まった若者を全世界からリクルートしている。 ISILの席巻により、中東はスンニー派VSシーア派、イスラム 原理主義VS世俗主義、イスラム教VSイスラエルの対立の構図が より鮮明になり、それらが複雑に絡み合って不安定さを増し、核兵 器使用を伴う中東大戦の危険が高まっている。 また、各国から集まった若者が帰国した場合、母国でテロを起こす 可能性も指摘されている。 3月末現在、ISILは、国際的な経済制裁、米軍中心の有志連合 の空爆、イラク軍による地上戦等によりやや勢いを落としているが 、予断は許さない。 これらが奏功して、例えISILを壊滅できたとしても、残党は形 を変え何処かで現れ、テロと報復の憎しみの連鎖は増幅し、イスラ ム過激思想は勢力を伸ばし、各国の若者を感化し続けるだろう。 ◆大義を以て収めよ◆ この根底には、十字軍の時代からのキリスト教世界とイスラム教世 界の歴史的な根深い対立の構図がある。 筆者は、その根本解決には冒頭掲げた各事項が不可欠であると考え る。 なお加えて、それには象徴として例えば公共の場でのスカーフの着 用、逆に肌の露出についての一定程度の許容ルール化など、双方歩 み寄った寛容の精神の具体的な見える化が必要だろう。 さて日本は、これまでキリスト教とイスラム教の対立から遠い所に あり仲介者 足り得る資格があったが、度重なる米国追従的行動や それに対応した日本人人質殺害等で、西洋キリスト教側に立つと見 做され始めている。 日本は今一度、外交の要諦たる国際的大義と長期的国益の追求の観 点に立ち、仲介者たるポジションを取り戻し、冒頭に掲げたような 事項を実現化するべきだ。 更に進んでは、穏健化したイスラム社会と同盟し、アジア諸国への 侵略意図を最早隠さない中国に対し包囲網を完成させ、その牙を抜 かなければならない。 無為にして世界の調和が保たれるなら良し、また他の者によりそれ が実現するなら善き協力者として振舞うのが良いのかも知れぬ。 しかしそうでない以上、日本には、大義を以て四海に王道を敷く義 務がある。 以上 佐藤 鴻全