5215.円安が変わる日本



日銀の追加緩和と米国の雇用統計で32万人の雇用が増えたことで
、円ドルで、1ドル=121円まで円安が進んだ。インフレで、か
つ金利がゼロという事態は、老人層を直撃することになるが、円安
でどうなるのかを検討しよう。津田より

0.現状の様子
5日のニューヨーク外国為替市場で円相場は大きく下落し、前日比
1円65銭の円安・ドル高の1ドル=121円40〜50銭で終えた。一時は
121円69銭まで下げ、2007年7月20日以来およそ7年4カ月ぶりの円
安・ドル高水準を付けた。

11月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が32万1000人増えた。
増加幅は23万人程度とされた市場予想を大きく上回った。米連邦準
備理事会(FRB)による利上げ時期が早まるとの見方が広がり、
将来的な日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが加速した。

この急激な円安の進行を受け、冷凍食品や即席麺などの値上げが相
次いでいる。5日にはコクヨが、円安や原材料価格の高騰を理由に
文具1122品目の価格を平均9.5%引き上げると発表するなど、
値上げは生活関連商品全般に広がる様相をみせている。食材のコス
ト増から外食産業も値上げに踏み切るのは時間の問題とみられるだ
けでなく、食品の追加値上げも視野に入ってきた。円安がもたらす
負の側面が消費者を直撃しそうだ。

国際市況の高騰と円安のダブルパンチで牛肉輸入価格が急騰する中
、「もはや牛丼を300円台で提供することは難しい」(外食大手
幹部)とされるだけに、外食各社がいつ値上げしてもおかしくない
状況にある。すき家の牛丼は280円であり、いつまでこの価格が維持
できるかである。

一方、日米に展開している自動車部品の会社は、新規受注の部品を
米国工場製造から、日本工場の製造に変更し始めた。輸送費を含め
ても、日本で製造したほうがコストが安くなるためである。この判
断は合理的である。

また、サムソン製スマホも日本市場では売れなく、ソニー製、シャ
ープ製、富士通製、京セラ製など現在製造している日本のメーカの
後になっている。今後、先進国市場では日本製が徐々に市場を確保
する可能性が出てきたようである。しかし、中国製が徐々に実力を
上げているので、安閑とはしていられない。

どちらにしても、円安で韓国製とは価格競争ができるレベルになっ
てきたことによる。円安の良い面である。円安を引き起こす金融政
策は、基本的にゼロサムゲームであり、他国の産業を潰して、自国
産業を活性化することになる。

しかし、いくら、円安になっても日本の労働賃金の水準は、ソウル
やシンガポールの数割増になったが、中国の数倍、東南アジアの数
十倍である。米国など先進国と比べたら、日本の労働賃金は安くな
ったが、アジア諸国と比べると、まだまだ高いのが現状である。

このため、40歳以上の社員をリストラして、若い人を正規雇用に
するか、非正規雇用を増やすことを現時点でも日本企業はしている。
賃金水準を引き下げたいからである。また、企業利益が出て、40
歳代以上の社員のリストラ費用ができたので、行う企業も複数ある。

このため、ネット上では多くの企業が日本に戻るようなことを言っ
ている人がいるが、日本に製造を戻す企業は限られるのが現状でも
ある。

1.この政策は、どう評価するのか?
それでは雇用が増えないかというと、大幅に増えることになる。そ
れも非正規雇用である。しかし、日本の特殊事情で、非正規雇用で
も徐々に賃金は上がるはずである。労働人口が急激に減少している
ので、非正規雇用でも賃金が上昇する。

輸出企業や海外で活躍している企業は、円安で円での売上げ、利益
ともに拡大するからである。価格競争力もUPするので、家電などの
価格で負けていた企業群も復活する可能性が出てきた。しかし、社
員を増やすことはない。製造はアジア諸国になるためである。

このため、サービス産業を中心に、今後は増えることになる。製造
業の利益が社員に還元されて、それをトリガーに日本国内での消費
が増えるためである。

また、海外からの旅行客が増えて、その旅行客が日本国内でお金を
使ってくれて、それで国内景気は良くなる。雇用もサービス産業を
中心に増える。しかし、サービス産業の雇用は非正規雇用が多くな
る。

しかし、経済的に良い面だけではない。固定金額を毎月もらう人た
ち、年金生活者には、非常に暮らしにくい時代になる。物価が上昇
して、物価上昇に比べて金利がゼロであり、預金の価値が大幅に減
額することになる。

インフレで、かつ金利がゼロという事態は、老人層を直撃すること
になる。

しかし、この政策をOKという高齢者たちが多くて、ビックリする。
本来は、デフレの方が高齢者は得であるのに、経済学者などの言葉
に乗せられて、自分が損をする政策を支援するようなことになって
いる。自民党に票を入れるという人が多い。

しかし、デフレは日本の国力を落とすので良くないが、だからと言
って、高インフレになる円安を無条件に受け入れるのは、これもお
かしい。

適度な円安にして、低インフレを実現するのが良い金融政策のはず
である。

民主党のアベノミクス批判は、何でも良くないというので、またデ
フレに戻す気だと誤解されている。コンクリートから人も、その財
源はどうするという疑問が出る。民主党でも、経済の活性化をしな
いと、財源がないではないかという質問に答えていない。

2.米国の現状
ウォール・ストリート紙に「November Jobs Report: How Many New
 Jobs Are Actually Full Time?」があり、現状の米国の雇用状況が
出ている。これによると、フルタイム社員数が大幅に増えているが、
製造業が大幅に減り、サービス業が増えている。行政系も少し減っ
ている。というようにサービス産業に偏っている。このため、フル
タイムで働くが、社員ではない数が相当数ある。

米国は、今まではシャールオイル産業が大きくなり、200万人規
模の雇用を生み出していたが、この石油価格暴落で、シャールオイ
ル企業が倒産、縮小になるようであるが、それに変わる産業はなく
、しかし、石油が安くなり、消費が戻り、サービス産業が立ち上が
っているので、そちらにシフトするようである。

米国の幸運は2008年リーマンショックと同時期にシャールオイ
ルが立ち上がり、雇用を作れたことである。

3.日本の今後は
当分、適度な円安によりグローバル企業が利益を出して、しかし、
一部インフレが起きるが、その間に石油などを代替するイノベーシ
ョンを起こすしか、日本が復活して、国民全員が豊かさを味わえる
ことは難しいと見ている。

金融政策では、他国産業を潰して自国産業を活性化させるために、
どうしても価格競争を引い起こし、かつ消費者を奪い合いことにな
る。イノベーションは新しい市場を作り、そこで価格競争をしない
で、消費者に提供できるので、それを行うことでしか、国民全員の
豊かさは実現できない。

トヨタ自動車は燃料電池車(FCV)「ミライ」の年産能力を2015
年末に現在の3倍に引き上げる。国内2工場に200億円程度投資する
。国内での引き合いが強いほか、米国などへの輸出にあてるため、
増産体制を早期に整えるという。年700台の生産体制を数倍に増
やすという。

このように、徐々にではあるが、再生可能エネルギーの不安定性を
制御できる燃料電池や、セルロース・ナノファイバー、バイオコー
クス、流動形成などの技術が確立してきて、かつ木質からの化学物
質生成ということもできることが分かり、イノベーションの方向性
を決める全体的な技術の概要が見えてきたように感じる。

早く、国が稙生文明という目標を打ち出して、このイノベーション
を引っ張ることであると見る。それにより、加速させることが重要
であると思うが、どうであろうか?

さあ、どうなりますか?


参考資料:
November Jobs Report: How Many New Jobs Are Actually Full Time?
http://blogs.wsj.com/economics/2014/12/05/november-jobs-report-how-many-new-jobs-are-actually-full-time/

5209.石油価格が下落で何が起こる
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/261130.htm

5204.通貨戦争勃発
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/261125.htm

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現在の世界経済はロシアがデフォルトした1998年に酷似している
広瀬隆雄2014年12月05日 01:22BLOGOS
シリコンバレーが世界のテクノロジー・シーンを支配し、アメリカ
経済が独り勝ちする中で、ドルが独歩高を演じ、原油価格が急落し
、新興国経済に途方もないプレッシャーがかかる……それが現在の
世界経済の置かれた状況です。
僕はそんな様子を見るにつけ(これは、いつか観た映画だな……)
という既視感を覚えます。
その映画とは、1996年頃から始まったドットコム・ブームです。当
時は「グローバル・スタンダード」という言葉が流行りました。つ
まり「世界標準を決めているのはアメリカだ」という考え方です。
アメリカの景気は良かったのでドルは強含みました。
するとドル建てで取引されている原油の価格には下方プレッシャー
がかかりました。
1年足らずのうちに原油価格が半値になったことで、外貨の獲得をエ
ネルギーの輸出に頼っていたロシアはデフォルトしたのです。
当時はロシアだけでなく新興国が全般的に苦しんでいました。その
理由は(新興国にお金を投資しているより、アメリカ本国にお金を
戻した方が有利だ)と考えた米国の機関投資家が資金を引き揚げた
からです。
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NY円、大幅安 1ドル=121円40〜50銭、7年4カ月ぶり円安水準
2014/12/6 7:31nikkei
【NQNニューヨーク=大石祥代】5日のニューヨーク外国為替市
場で円相場は大きく下落し、前日比1円65銭の円安・ドル高の1ド
ル=121円40〜50銭で終えた。一時は121円69銭まで下げ、2007年7
月20日以来およそ7年4カ月ぶりの円安・ドル高水準を付けた。米
雇用統計で雇用者数が市場予想より大幅に増加したことをきっかけ
にして、主要通貨に対するドル買いの勢いが増した。
 11月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が32万1000人増え
た。増加幅は23万人程度とされた市場予想を大きく上回った。米連
邦準備理事会(FRB)による利上げ時期が早まるとの見方が広が
り、将来的な日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが加速
した。
 この日の円の高値は120円09銭だった。
 円は対ユーロで大幅続落し、前日比1円05銭円安・ユーロ高の1
ユーロ=149円20〜30銭で終えた。円が対ドルで急落したことを受け
、対ユーロにも円売りが及んだ。円は一時149円51銭と08年10月1日
以来およそ6年2カ月ぶりの円安・ユーロ高水準を付けた。
 ユーロは対ドルで反落した。前日比0.0090ドル安い1ユーロ=
1.2280〜90ドルで終えた。一時は1.2271ドルと12年8月16日以来、
約2年4カ月ぶりのユーロ安・ドル高水準を付けた。米金利の先高
観が意識され、ユーロ売り・ドル買いが活発になった。
 この日のユーロの高値は1.2379ドルだった。
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円急落…外食産業、値上げ避けられず「もはや牛丼300円台は困
難」
2014.12.6 06:59 sankeibiz  
 急激な円安の進行を受け、冷凍食品や即席麺などの値上げが相次
いでいる。5日にはコクヨが、円安や原材料価格の高騰を理由に文
具1122品目の価格を平均9.5%引き上げると発表するなど、
値上げは生活関連商品全般に広がる様相をみせている。食材のコス
ト増から外食産業も値上げに踏み切るのは時間の問題とみられるだ
けでなく、食品の追加値上げも視野に入ってきた。円安がもたらす
負の側面が消費者を直撃しそうだ。
 来年1月に即席麺を値上げするエースコックの村岡寛社長は「値
上げを決めたときはまだ1ドル=100円台後半だった。120円
までの円安は想定外で、さらなる値上げも考えなくてはいけない」
と話す。
 国際的な食品原料の高騰に円安も加わり、冷凍食品やアイスクリ
ーム、パスタ、食用油などを扱う主要各社は既に値上げを表明して
いる。この状況を受けて食品スーパー、いなげやの成瀬直人社長は
「来年は値上げの春となる」。円安がさらに進めば、第2弾の値上
げもあり得る。
 4月の消費税率引き上げ前後にメニューを改定し、高価格帯の商
品を拡充するなどの対応を取った外食産業は、現状では値上げに慎
重だ。だが、食材の高騰は「一企業の努力ではもはや限界」(レス
トランチェーン首脳)という声も多い。
 国際市況の高騰と円安のダブルパンチで牛肉輸入価格が急騰する
中、「もはや牛丼を300円台で提供することは難しい」(外食大
手幹部)とされるだけに、外食各社がいつ値上げしてもおかしくな
い状況にある。
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米景気、消費と雇用で弾み 株高・原油安が追い風 
2014/12/6 0:59日本経済新聞 電子版
 【ワシントン=矢沢俊樹】米景気回復に追い風が吹いている。株
高に大幅な原油安が加わり、消費と雇用増の好循環が生まれている
。賃金と物価の上昇率はまだ低いが、米連邦準備理事会(FRB)
の利上げを後押しする環境が整いつつある。早期の米利上げ観測が
広がり、円安に一段と弾みがつく可能性がある。
 米労働省が5日発表した11月分の雇用統計では、景気動向を映す
非農業部門の雇用者数が前月比で32万1千人増と、市場予…
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トヨタ、燃料電池車増産へ200億円投資 国内2工場に 
2014/12/6 2:00日本経済新聞 電子版
 トヨタ自動車は燃料電池車(FCV)「ミライ」の年産能力を2015
年末に現在の3倍に引き上げる。国内2工場に200億円程度投資する
。国内での引き合いが強いほか、米国などへの輸出にあてるため、
増産体制を早期に整える。独フォルクスワーゲン(VW)も20年に
も日米欧で投入する。世界2強の増産や参入でFCVの普及期が早
まりそうだ。
 現在、トヨタのFCVの年産能力は700台。走行時に二酸化炭素
(CO2)を一…
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石油価格、数年で100ドル近くに反発=国際機関
2014年 12月 6日 02:31 JST
[ストックホルム 5日 ロイター] - 国際エネルギー機関(IE
A)のチーフエコノミスト、ファティ・ビロル氏は5日、今後数年
間で石油価格は1バレル当たり100ドル近くまで反発するとの見
通しを示した。
ビロル氏は当地で開催の会議で長期的な石油価格の見通しについて
聞かれ、「石油価格は今後数年で需給バランスが均衡することから
、100ドル近くに達するだろう」と述べた。
「現在起きていることで判断力を失ってはならない。地質学および
石油市場の経済学から判断すれば、数年後に価格が上昇に転じても
驚くべきことではない」とした。
北海ブレント原油先物は今週初めに68ドルを下回り、5年ぶりの
安値をつけた。
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11月米雇用増は約3年ぶりの大きさ
ついに1ドル121円台に突入
ロイター 2014年12月06日
[ワシントン?5日?ロイター] - 米労働省が5日発表した11月の
雇用統計は、非農業部門の雇用者数が32万1000人増えた。予
想の23万人増を大きく上回り、2012年1月以来約3年ぶりの
大幅な伸びとなった。
賃金も上昇し、連邦準備理事会(FRB)の利上げ時期が早まる可
能性が意識されるほど、景気が底堅いことを示した。
雇用の伸びが20万人を超えるのは10カ月連続で、1994年以
来最長。米経済が中国やユーロ圏などの景気減速や、日本のリセッ
ション(景気後退)などの影響を大きく受けていないことがあらた
めて示された。
失業率は横ばいで6年ぶり低水準の5.8%。9月、10月分の雇
用の伸びは、前回発表から計4万4000人上方修正された。
バイニング・スパークスの首席エコノミスト、クレッグ・ディスミ
ューク氏は「来年6月、もしくは3月までに利上げを開始するよう
、FRBに対する圧力が高まると考える」と話した。
コメリカの首席エコノミスト、ロバート・ダイ氏も、「FRBによ
る2015年半ばの利上げ開始にゴーサインを出すものだ」として
いる。
年初から11月までの雇用者増は265万人と、前年同期の233
万人を超えている。MUFGユニオン・バンクの首席金融エコノミ
スト、クリス・ラプキー氏は、「米経済は急上昇しており、正しい
方向に向かっている。見通しも底堅い」と述べた。
時間当たり賃金は0.09ドル増と、昨年6月以来の大幅な伸びを
記録。労働市場が力強さを増していることで、賃金の伸びも加速し
ていることが確認されたとの見方も出ている。賃金の伸びはFRB
が利上げ開始時期を決定するにあたり重要なカギとなる。
ムーディーズ・アナリティクスのシニア・エコノミスト、ライアン
・スィート氏は、「今後数カ月間、今回と同じくらいのペースでの
改善が続けば、労働市場の需給が引き締まりつつあることの明らか
な兆候となり、来年には労働市場が低迷から抜け出すことが示唆さ
れる」と述べた。
ただ、時間当たり賃金の前年比での伸びは2.1%にとどまり、F
RBが利上げに踏み切りやすい水準とされる3%以上を依然大きく
下回っている。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズの首席エコノミスト、ジョ
エル・ナロフ氏は、「FRBが次回の連邦公開市場委員会(FOM
C)で労働市場が引き締まりつつあると言及することはないと考え
ている」と述べた。
とはいえ、イエレンFRB議長が労働市場のスラック(需給の緩み
)を見極めるために注目している項目の多くが改善。本人の意に反
して職探しをあきらめた人や、正規雇用を望みながらパートタイム
で働く人を含めたU6失業率は11.4%と、前月の11.5%か
ら低下し、6年ぶり低水準を更新した。
労働参加率は横ばいの62.8%。平均週間労働時間は34.6時
間と、2008年5月以来の高水準となった。
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なぜ金融緩和は失敗するか(1)  成長もインフレも引き上げない
wasting time?2014年12月04日 00:15
なぜ金融緩和は失敗するのだろうか。難しく考える必要はなく、経
済成長というのは経済の供給能力できまる。生産性・労働力人口・
資本蓄積などによるわけだ。お金を刷れば経済が良くなるのならば
どこの国もそうしているはずだが、人類の歴史以来お金を刷ってろ
くに仕事もせずに豊かになった国などないから(まあ普通に考えれ
ば誰でもわかるはずだが)お金を刷ることが経済成長につながると
考えるのはおかしい。
もちろん、100歩譲って、急激な景気後退があった時に、金融緩和で
お金を刷って市中にマネーがまわしやすくしショックを和らげると
いうことには効果はあるかもしれないがそれは短期的にしか続くも
のではない。いくらお金を刷ったからといって長期的な経済の成長
力が上昇するわけではない。
いやいや、金融緩和は失敗してないぞという人もいるかもしれない
が、過去20年日本は緩和を続けてきたが経済成長は停滞しインフレ
になることはなかった。ユーロ圏も金融緩和を続けているが経済は
停滞。唯一持ちこたえていたドイツ経済も雲行きがかなり怪しい状
態でデフレの領域も見えてきている。一部のリフレ派が称賛してい
たアメリカも金融危機以降の経済成長は2%を若干超える程度であり
インフレも1%台の伸びに過ぎない。
なぜ金融緩和はうまくいかないのだろうか。少しややこしくなるか
もしれないが次のように考えてみたい。
フィッシャー式 というものがある。
名目金利=実質金利+期待インフレ率
という式だ。中央銀行は名目金利を操作できるので名目金利を下げ
ればインフレが起こせる。あるいは成長を加速させることができる
と一般には言われる。
だが、最初に書いたように長期では実質の経済成長を金融政策によ
って操作することはできない。金融緩和で一時的には経済成長は回
復するかもしれないがそれが長く続くことはない。
一方でフィッシャー式の実質金利は≒実質経済成長率(≒潜在成長
率)と考えることができる。とすると上の式では実質金利はこの式
にかかわらず一定ということになる。
とすると、名目金利を中央銀行が引き下げると何が起こるだろうか?
右辺と左辺を一致させるためには期待インフレ率が低下するしかな
い。金融緩和で経済が成長しないのは理屈の上でも実際に今世界の
先進国で起こっていることを見ても明らかだ。
一般には金融政策でインフレ率を操作することは可能とされる。そ
して金融緩和でインフレ率は上昇するといわれているが、金融緩和
によってインフレ率は低下することがフィッシャー式からは導き出
される。そして緩和をいくら続けてもインフレ率が上がってこない
という世界の先進国で起こっている事象とこれは一致する。
短期的視点で金融緩和でインフレ率は上昇するのだという言説が主
流を占めているが事実とは必ずしも合致していないように感じるの
は僕だけだろうか。
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11月の円安倒産は過去最多の42件、年初来では2.7倍=帝国データ
2014年 12月 4日 16:36 JST
[東京 4日 ロイター] - 帝国データバンクは4日、11月の円
安関連倒産が42件となり、3カ月連続で過去最多を更新したと発
表した。今年1月から11月までの累計は301件で、前年同期に
比べて2.7倍に増加している。
今年1─11月の累計を業種別にみると「運輸・通信業」が86件
と全体の3割弱を占める。次いで卸売業68件、製造業58件、建
設業42件の順。
負債規模別でも10億円以上の倒産が32件で、前年同期の15件
から倍増。11月は負債30億円超の大型倒産も2件発生した。
帝国データバンクでは、ガソリン・軽油価格の高止まりを受けた地
方の運送業者を中心に、原材料を輸入に頼る各種食料品や繊維・ア
パレルなどの製造・卸業者が「今回の円安局面で相次いで行き詰っ
ている」と指摘している。
4日の東京市場でドル/円JPY=EBSは120円目前に迫るなど円安傾
向が続いており「日銀による追加の金融緩和後の円安の影響が出始
めるとみられる年明け以降も、引き続き円安関連倒産はじわり増加
基調をたどる可能性が高い」としている。
(伊藤純夫)
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世代別に正規・非正規就業者数の詳細な推移を確認してみる
2014年12月3日 11時11分
不破雷蔵 | 「グラフ化してみる」ジャーナブロガー 解説者
雇用市場に関する動向が注目を集めている。就業者の人数やそのう
ち非正規の人がどれほどいるのか、全体的な様相は語られるものの
、世代別の流れは案外触れられていない。世代別に区分した上での
、就業者全体に対する非正規の比率はすでに「世代別に非正規社員
率の動向を確認してみる」でチェックをした通りだが、今回は人数
の上での内情を、総務省統計局の労働力調査の公開データを基に確
認していくことにする。
雇用状況が男女で大きく異なるのは承知の通り。社会全体の動向を
概観的に探るレベルなら男女をまとめた値での精査でも構わないの
だが、雇用状況をより深く確認する必要があるため、今回は男性に
限った上で、世代別動向を見ていくことにする。各世代別でデータ
が取得可能な(毎年第1四半期の平均値、2001年以前は(2月と8月のみ
調査が行われているため)2月の値)1984年〜2014年までの男性全体、
そして世代別の正規・非正規の人数をグラフにしたのが次以降の図
。会社役員は除いてあることに注意。
非正規就業者の数の増加、比率の増大が問題視されているのは事実
。その問題と指摘される状況を作るきっかけの一つが関連法案の改
正にあったのも事実で、全体値ではそのきっかけ(1999年と2004年)
以降人数・比率共に増大しているのが確認できる。
ところが世代別に見ると、若年層では非正規の数はほぼ横ばい、良
くて微増の範囲に留まり、正規が漸減し、就業者数全体が減り、結
果として非正規の比率が大きく伸びている実態が分かる。一方中堅
層では総就業数は横ばいか漸増、正規も横ばいかやや増、非正規は
漸増となり、若年層とは状況を異にしている。
そしてもっとも大きな変化を示しているのが55歳以上の高齢者。特
に65歳以上では正規の数はあまり変わらず、非正規の数が大幅に増
加し、この世代における就業者数がかさ上げされているのが分かる。
この増加の原因は定年退職後に勤め先にパートやアルバイト、嘱託
や顧問として再雇用される場合や、ボランティア的な低賃金の就労
に当たる場合が多い。
社会全体の労働状況は次の通りと見ることが出来る。若年層の雇用
は抑えられ、特に正規が削られ、少しずつ非正規が増えていく。代
わりに高齢層の非正規があてがわれていく。これは就業者の世代的
な新陳代謝がスピードダウンすることを意味する。若年層の就労実
態を調査した厚生労働省の「若年者雇用実態調査」でも同様の結果
が導き出されているが、今件データはそれを裏付けたことにもなる。
女性の動向は略するが、非正規率が高めな以外は男性と大きな違い
は無い。高齢層は正規が横ばいで、非正規がグンと伸びる形となっ
ている。
若年層の就業者数が減退しているのは、若年層の人数そのものが減
っていることに加え、大学への進学率が上昇しているのも一因。し
かし高齢層の急激な非正規率・人数の増加によるところが大きい。
そして企業内の新陳代謝が遅れることになる(これは結果であると共
に、原因の一部でもあるのだろう。新陳代謝を遅らせる動きがある
からこそ、若年層の就業が抑圧されることになる)。
就業者全体としての非正規率の上昇原因は、各世代における非正規
数の増加・正規の減少に寄るところに違いはないが、多分に男女な
らば女性、そして世代別ならば高齢層の非正規の増加が大きく係わ
っていることが分かる。
また今回は精査を略するが、ここ数年に限れば就業者数は漸増し、
完全失業者数・率、非労働力人口は漸減の傾向にある。上記グラフ
でもこの数年において、若年層でも就業者数が増加しているのもそ
の表れ。正規・非正規の問題は全体として見れば大きな要件に違い
ないが、表面的な部分だけにとらわれず、複数の側面、そして関連
する各種動向も合わせ、考える必要がある。その位置側面が、今回
の世代別動向という次第である。



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