5213.木材:流動形成でプラスチックの代替



プラスチックの原材料は石油。しかしそれらは、限りある資源であ
り、枯渇する資源である。これに代わりうるのが、植えれば育つ木
材でマツやスギ、タケなどであり、あらゆる木材を、プラスチック
のように自在に変形できるという常識を覆す技術が開発された。

それが流動形成技術である。『流動成形』技術があれば、衝撃に強
く、難燃性も断熱性もある製品が生まれるのだ。
開発したのが、産業技術総合研究所の金山公三氏である。
もともと、金山は、金属加工の研究をしていた。

金山さんは、あらゆる研究の中から再生可能な“木材”に目をつけ
た。熱を加えたり、圧縮したりと試行錯誤を繰り返すが、目的のも
のができない。

そのため、木の「細胞」まで調べ尽くしたとき、ある発見をする。
それは、『細胞同士がすべる』という現象である。

難しく言うと、木質材料の新規な加工方法として、世界で初めて、
バルク(塊り)状態からの大変形3次元成形加工を可能にしました。
これは、適切な微細構造制御ならびに加工条件制御によって、細胞
と細胞との境界層を選択的に破壊(はく離)させるとともに、個々
の細胞は破壊することなく軟化を生じさせることにより、細胞相互
の位置関係の変化を易化させるものです。また、はく離して移動し
た細胞は、所要形状への変形後に再結合させることも出来ます。従
って、材料全体としては大変形が可能となるのです。

要するに、原料となる木質を高温高圧蒸気処理することで木材の持
っている自己接着性や熱流動性を引き出し加熱、加圧することで射
出成形が可能なことから量産化できることである。

これで、廃木材(木屑)を主な原料として、エンジニアプラスチッ
クと同等の性能(流動性、衝撃強さ、吸水性)を持つ材料の作製が
できるようにあったのである。コストも安いし、再生可能であり、
かつ、CO2も出さない。

金山さんは『資源は、地中深くにあるだけではなく、人間の頭の中
にこそある』という。

これでまた、石油文明から植生文明に変える武器を人類は手にした
のである。

さあ、そろそろ、真剣に文明転換を日本は考えませんか?



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