4762.経済成長なしの世界の発展を考える



アメリカン・コンサバティブやプロジェクト・シンジメート、ガー
ディアンなどで、世界で次の資本主義や経済成長なしで快適になる
世界の発展を考えないといけないという観点での評論が出てきた。
これを検討しよう。      津田より

0.なぜ
貧困追放のために、発展途上国の経済発展を促進する方向であるが
、経済発展させると資源・エネルギーなどが不足することになり、
かつ化石燃料を使うと益々地球の温暖化が進んしまうという問題が
起きる。

しかし、現状でもエネルギー消費が大きくなることは間違えないし
、低賃金を目指して、企業の工場が移動することになる。これによ
り仕事の再分配が起こる。エネルギー消費と仕事の奪い合いが起き
ることになる。

地球温暖化になり、かつ発展途上国に工場が移動してしまうので、
先進国の職場が失われることで、若者の失業率が高まるという問題
も出てくる。

このため、先進国はジョブシェアや新しい仕事の創造が必要になっ
ている。または、より物質的な豊かさを求める生活から、より精神
的に豊かであり、物質的な豊かさを求めない生活にして、資源を使
わない生活を目指すという。

エネルギー消費を確認すると、2000-2012年度を見ると世界GDPは、
年率3.6%で成長した。エネルギー消費は年率56%も増えている。この
増えた主な国は中国とインドである。このエネルギー増加分は化石
燃料が多く、エネルギーにおける化石燃料の割合は80%にもなってい
る。
しかし、再生可能エネルギーは年率2.6%増加しかしていない。とい
うことで、このままの状態を放置すると、エネルギー消費が増えて
地球温暖化はますます進むことになる。

このことをオバマ大統領やCSISなどが心配してオバマの再生可能エ
ネルギー政策になったのである。温暖ガスを出さないということで
原子力発電の推進も含まれているが、米国では原子力発電より天然
ガス火力発電の方がコストが安いために、新規の原子力発電所建設
がなくなるようである。

質が高い生活を追求するとある程度の物資的な豊かさも必要である。
資源を使わないというわけには行かない。この解決は資源のリサイ
クル、リユース、リペア、ゴミを出さないリデュースしかない。エ
ネルギーは化石燃料に頼らない再生可能エネルギー化して地球温暖
化を抑えるしかない。

もう1つオバマの再生可能エネルギー政策の目的は産業構造の変革
で米国の中産階級の仕事を生み出すことである。それと、インフラ
の老朽化が問題になり、それに財政出動をしようとしているが、こ
れに共和党は反対している。

中産階級の仕事がどんどん、賃金が安いインドやフィリピンなどの
新興英語圏国の大学卒業生に移っているので、公共事業を含めて新
しい仕事を生み出したいというのがオバマ政権の仕事になっている。

1.先進国と発展途上国の役割分担
アフリカの経済発展をさせて、先進国は精神的な豊かさを追求する
ことである。単調な工場労働から創造的な仕事や職人芸などへシフ
トすることであると評論家は言っている。

先進国は精神的豊かさを提供する仕事や資源を使わないリサイクル
技術、生命科学分野を研究開発し、発展途上国に物質的豊かさを提
供する仕事を持っていくことになるのか?

米国では中産階級賃金の平準化が起こり、徐々に大学卒業生の賃金
が下がり、大学生活を送るために必要であった学資ローンの返済が
できなくなっているという。これは先進国ではどこも同じようにな
る。

先進国に求められるのは、新しい製品・サービスのアイデアである。
工業製品も同じであり、その製造部門は新興国に持っていけるが、
新しい製品アイデアは、先進諸国でしか生み出させない。今の生活
をより一層便利にする、心が豊かになる物というのは、現時点で既
に、最先端の製品やサービスがあることが必要である。

もしないと、不足している機能の製品、サービスを先進国から導入
すれば済むことであるからだ。今でも十分な最先端な製品があり、
その上で何が必要かと問える環境は、先進国しかない。

韓国のサムソンを見ればわかる。アップルの真似以上の製品は生ま
れないか、昔あった製品のリニューアルしかできない。全く新しい
製品を生み出せない。環境と文化がないことによる。

しかし、このような新しい製品を作ることは、それほど多くの人を
必要としない。ということで、多くの若者が職に着けないか、低賃
金な飲食店などのサービス産業で働くしかないことになる。

米国の最近職が増えているが、このほとんどは低賃金の仕事である。
この状況は、日本も同様である。

2.新しい資本主義を求めて
このため、世界、特に先進国が新しい感覚の資本主義を求め始めて
いる。NHKの「ニホンのジレンマ」で、若い人達が議論しているが、
これは、どこの先進国も同じようなジレンマになっている。

無機物的なお金から、次の社会を作るアイデアや信用などが重要に
なり、多くの人から認められることや自分がしたい仕事ができる社
会にしたいという。多くの若い人たちは希望を語っているが、最後
に「徐々にしか進まない」と社会学者がポツリと言うのが印象的で
ある。

英国のガーディアンが、縮小する経済を維持するために規制を掛け
る政策は有効ではないと論破している。インターネットを使ったピ
アツウピアの仕事を若者は作り始めた。そこには規制がかけにくい
し、お金の交換でもなく仕事の交換という形態も出てくているとい
う。

例えばAirbnbやHouseTripなどであり、家の空いている部屋を貸す人
と借りる人を直に結びつけるサービスなどである。

また、発展途上国で製品を作りそれを先進国で安く売り、途上国の
貧しい人に職を作るなどは、NPOなどの社会的な意義のある仕事であ
る。これも多くの若い人達がやりたがっている。

このように、今までとは違い、インターネット+スマホの環境があ
るので、その環境を利用して意義や便利性を構築しようとしてよう
である。

しかし、このようなサービスは、既存のビジネスより低価格になり
、仕事の交換などは金が絡まない。その意味では経済規模を縮小さ
せているとも言えるのである。

また、大企業の組織力を、インターネットなどを利用した個人のネ
ットワークで置き換えることになる。しかし、まだ経済規模的には
小さく実験段階の域を出ていない。

3.日本の意味
しかし、経済成長なしの発展という意味では、日本には、江戸時代
にその見本がある。江戸時代は物質的な豊かさを鎖国したことでで
きなくなり、日本国内にある資源、エネルギーを効率よく使い、そ
の範囲で精神的な豊かさを求めた時代である。

焼き物でも伊万里焼と鍋島の違いがある。どちらも有田焼であるが、
キラビヤカな伊万里焼はヨーロッパへの輸出品であり、国内では落
ち着いた鍋島が最高級品である。このようにわびさびの美を確立し
た。

和食も同様で、カロリーを追求しないで、うまみ味を追求すること
になる。人と人の心を繋げる「おもてなし」の心も重要なツールで
ある。

心地よい人間関係や落ち着いた風景や器具とそこに流れるゆったり
した時間は、豊かな精神的社会を作る原動力である。

少し前は、この日本の文化は世界には理解されないと思っていたが
、世界的な和食ブームや日本庭園ブーム、日本文化ブームで、日本
の江戸文化が世界的に見直されてきた。世界が日本の文化を理解で
きるレベルに到達したのである。

この江戸時代に流行した結や連が、世界的に必要になってきたよう
である。その個人を結ぶ器具としてインターネットがあり、世界的
な連が出来始めている。個人の趣味がネット化されて、それが仕事
になるような世界ができているようである。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
p0250.オバマ、再度の再生可能エネルギー政策
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/250714.htm

1.PEG on Growth  American Conservative
http://www.theamericanconservative.com/jacobs/peg-on-growth/

2.The Next Social Contract  project-syndicate
http://www.project-syndicate.org/commentary/redefining-the-life-of-work-by-kemal-dervi

3.The End of Growth?   American Conservative
http://www.theamericanconservative.com/jacobs/the-end-of-growth/

4.Is regulation the right road for the sharing economy?  Guardian
http://www.theguardian.com/sustainable-business/blog/regulation-sharing-economy

5.Is Manufacturing “Cool” Again?  project-syndicate
http://www.project-syndicate.org/commentary/skills-and-workers-in-the-new-age-of-manufacturing-by-martin-n--baily-and-james-manyika

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世界エネルギー消費は40年までに56%増加へ=米エネルギー省
2013年 7月 26日 12:14 JST  WSJ
 【ワシントン】世界のエネルギー利用量は今後数十年にわたり大
幅に増加する、と米エネルギー省は25日の報告書で明らかにした。
消費の伸びは中国とインドがけん引すると予測した。
 同省の統計部門、エネルギー情報局(EIA)は、全世界のエネルギ
ー利用量は2040年に10年の水準を56%上回ると予測した。これは
おおむね運輸と電力が占めるもので、成長の半分は中国とインドか
ら来るという。
 現行の政府政策の下、石油や …



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