4749.金融システムの安定化には何が必要か



プロジェクト・シンジケートでインドの経済学者でインド政府の経
済顧問をしているラグハラム・ラジャン(Raghuram Rajan)氏の
「Central Bankers on the Ground」と半年前の「Is Finance Too 
Competitive?」が面白い。その意見を参考に考察したい。

金融システムの安定化には何が必要かを論じている。その答えが常
識的であり、従前からすると当たり前のことだからである。

このようなことになるのは、米国も欧州も歴史がなく、経験の積み
上げがないために、壮大な実験をしているように感じる。アジアや
インド、日本は歴史があり、金融システムの安定には何が必要かを
長い歴史の中で考察されている。中国は革命後の歴史しかないので
米国と同じ失敗をしている。

1999年以降、米国は大きな実験をしている。銀行業務で規制撤廃を
して銀行を競争的にしたが、それは顧客の奪い合いのために金利を
高くできる商品を作り、それを売り出した。これがサブプライムで
あり、現在問題な中国の理財商品である。

このサブプライムバブルが崩壊した後、バーナンキFRB議長が中央銀
行の量的緩和をして、政府の財政出動を助けようとした。この財政
出動のために国債を大量に買い、銀行は大量の資金の投資先をなく
して、新興国に流れる。

しかし、バーナンキ議長が量的緩和の見直しとほのめかした途端、
銀行は資金を回収し始めた。このため、銀行は大きな損害を被るこ
とになる。

そして、米国の失業率も低くならないし、経済も復活していないの
で、この方法は有効ではないという結果になった。

中央銀行は、その基盤の上で今までの常識に従った政策をしていく
しかないという結論である。

それに比べると、日本の銀行は流石である。米国の銀行のように、
新興国への投資をせずに、日銀の当座預金に預けて、米国の銀行の
ようなこととしていない。

というように、日銀の金融緩和政策での欠点である資金の行き先が
なくなっても安易な貸出への誘惑を歴史からの教訓から行っていな
い。

ということで、米国では失敗する運命にある量的緩和政策を日本で
は、銀行が安易な貸出に走らないので成功させることができる。

その大きな原因は、日本の銀行は、規制緩和されていずに守られて
いるからである。

その意味では、この2つの評論は面白いことが書いてある。

興味があるなら読んでください。
Central Bankers on the Ground
Is Finance Too Competitive?

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