米国の国防費削減が今後も続くことになるので、経費をかけないで 防衛をする必要になる。その手段が「オフショア・コントロール」 で、米国防大学の研究所T.X.ハメス(T.X.Hammes:元海兵隊大佐) 上級研究員が提唱した。 戦略としてのオフシェア・バランスの戦術としてエア・シー・バト ルが策定されたが、このASBでも経費が掛かりすぎであり、それより コストが安い戦術として提言されている。 オフショア・コントロールは、領土を守る意志のある国と組みなが ら中国の海上貿易を阻止し、決定的な軍事上の勝利よりも、手詰ま りと停戦をもたらすことを目標にする。 中国本土のインフラへのダメージを極限しつつ経済的に消耗させる 戦いを追求する。 米海空軍は中国本土から離れたところに動かし、中国と遠方から戦 わせる一方で、米国と同盟国が統合海空防御の一員としてその領域 上で戦う。米国の損害を減らす。 インドネシアの列島線に沿ったチョークポイントで遠距離海上封鎖 を敷き、中国の海上交通阻止を行う。貿易ができないようにする。 第一列島線の内側で、中国の侵入できない排他的海上区域を、優勢 な潜水艦、機雷と限られた数の航空戦力で設定する。 この米軍の方向を見定めて、日本も防衛力を増強することが必要で ある。中国とのパワーバランスが崩れると、戦争に結びつき安いの で、パワーの均衡を取るしかない。 勝つと思えば、中国は戦争という手段に訴えてくるという厳然たる 心理を、日本人は知る必要がある。それを認識できないと日本の滅 亡に繋がるであろう。 日本人は、目を覚ますことである。 さあ、どうなりますか? ============================== オフショア・コントロールを学ぶ [Air-Sea Battle Concept] 2013-03-19 05:00東京の郊外より・・・ 防衛研究所と米国防大学の研究所 (INSS)は、戦略的に重要と思われ る様々な問題をテレビ会議で議論する関係にあるようで、2月1日に は「オフショア・コントロール」の提唱者T.X.ハメス(T.X.Hammes :元海兵隊大佐)上級研究員と議論が行われた模様です (NIDS NEWS:2013年3月号より)。 同会議でハメネス氏は、「Offshore Control:予期せぬ衝突に備え た軍事戦略」というテーマで、オバマ政権がアジア太平洋地域のリ バランスを提唱するなか、軍事戦略として検討されるOffshore Control 戦略の意義と戦略的利点として、以下5点を指摘したそうです。 @抑止及び安心供与の度合を高める一方、急速なエスカレーション の可能性を低下させる、 A決定におけるタイムラインを伸ばす、 B平時におけるコストを低下させる、 C米国の強みを生かすことができる、 D貿易の再構築を可能とする・・・・・等が指摘されました。 ちなみに、ハメネス氏の「オフショア・コントロール」論文は2012 年春号のInfinity Journalに掲載され、同年6月INSSの 「STRATEGIC FORUM」にも掲載されています。 「Offshore Control: A Proposed Strategy」 →http://www.ndu.edu/inss/docuploaded/SF%20278%20Hammes.pdf 防衛研究所が勉強を始めたと言うことは、米国防関係者の中で「オ フショア・コントロール」がそれなりの地位を得た可能性を示唆し ていますので、ご紹介したいと思います。 なお、本日の「オフショア・コントロール」に関する説明は、26歳 の安全保障研究者によるブログ「Till the end of history」の記述 を借用しています。 その1→http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2012/04/blog-post_13.html その2→http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2012/04/blog-post_15.html //////////////////////////////////////////////////////////////// オフショア・コントロール(「OC」とする)とは 「OC」の概要イメージ・ ●エアシーバトルASBについてハメス氏は、エスカレーションを招き やすい(北京の意思決定者の不確実性を高め核報復のリスクが高ま る)、そして新たに高価な装備を調達する必要があり財政負担が重 く持続可能でないと懐疑的 ●OCでは、領土を守る意志のある国と組みながら中国の海上貿易を 阻止する。また、決定的な軍事上の勝利よりも、手詰まりと停戦を もたらす。 ●このため、中国本土のインフラへのダメージを極限しつつ経済的 に消耗させる戦いを追求する。戦争終結は物理的破壊よりも経済面 での摩耗(消耗?)を通じ達成することを狙う。 具体的な「OC」での行動 ●具体的に「OC」では3つのD(deny、defend、dominate)を実施する ---deny:第一列島線の内側で、中国の侵入できない排他的海上区域 を、優勢な潜水艦、機雷と限られた数の航空戦力で設定する。侵入 する中国艦艇を沈めることで達成する。 ---defend:積極的に米国を支援する同盟国を守るためすべての軍事 アセットを用いる。海空軍は中国本土から離れたところに動かし、 中国と遠方から戦わせる一方で、米国と同盟国が統合海空防御の一 員としてその領域上で戦えるようにする。 ---dominate:インドネシアの列島線に沿ったチョークポイントで遠 距離海上封鎖を敷き、海空陸そして民間から借りたプラットフォー ムも利用し、海上交通阻止を行う ●以上により、戦争の穏健な帰結を迎える。核兵器がある以上、中 国共産党の崩壊や降伏を目論み追い込むのは危険すぎる。ゆえに戦 争終結のゴールは停戦し戦前の境界線・領土に戻ること。 「OC」の準備と訓練 ●最優先は同盟国の防衛強化。次に遠距離海上封鎖。それから排他 的海上区域の設定。最後に第一列島線の外を支配して対中封鎖を締 め付けるとともに同盟国への貿易の流れを確かにする。 ●特に重要なのが平時の準備。この戦略は透明性が高いので、同盟 国に説明し公開して全てを訓練演習できる。 穏健な戦争終結に向けて ●OCでは、中国共産党に、かつてのインド、ソビエト、ヴェトナム との紛争終結と同様の戦争終結模索を認める。つまり、中国が「敵 に教訓を教えてやった」と宣言することを認める。 ●中国本土の施設等への攻撃を禁じることで、エスカレーションの 可能性を減らし、中国が前述の宣言をしやすいようにお膳立てし、 戦争を終える。 ●「OC」では決定的勝利を求めない。これは核大国相手の決定的勝 利という概念が時代遅れだとの認識に基づいている。 「OC」はASBより優れている ●「OC」はASBより以下の点で優れている。まず、ASBは新技術を用 いるため機密要素が大きく、敵国にも同盟国にも信頼度や透明性が 低い。OCはその点オープンであり実行可能性も高く確証値が高い。 従って抑止効果も高い ●またOCは、オーストラリアを除いた同盟国に駐留基地を必要とせ ず、同盟国への依存を減らせる点で利点が大きい。オーストラリア からマラッカ、スンダ、ロンボクの海峡を封鎖するのを支援する基 地のみが必要だからです ●同盟国等は、自国の海空領域で中国の攻撃から米軍が自身を防衛 ことを容認しさえすればよい(defendの達成)。 ●防御は地上基地からの防空と短距離の機雷と対機雷の能力を含む 海防に大きく依拠するから、米国は平時、潜在的同盟国の同能力を 向上させるため訓練を行う。 ●「OC」では、同盟国等に必要な戦力強化と連携向上を求めるが、 米国が中国を攻撃する際の基地使用や、紛争の際の米側に加わるこ とは求めないだろう ●繰り返しになるが、OCはASBと反対に、外交官や軍人に戦略と作戦 のアプローチを対外的に説明することを許容するので、不確実性を 引き下げることが出来る ●「OC」では中国の早期警戒・指揮管制システムが脅かされること なく、北京が余裕をもって判断できるようにする。逆にASBの求める 攻撃は、中国に不十分な情報に基づいて性急な決定を迫るものです //////////////////////////////////////////////// 「オフショア・コントロール」論を概観してまず思うのは、日本は どうなるんだろうか?・・・との疑問です。 米軍は「一緒に戦ってくれなくても、基地を使用させてくれなくて も構いません。日本は自分で守ってくれ。米軍は遠方から、又は第 一列島線の一部戦力や機雷を中心に作戦するから・・」と言ってい るように聞こえます 防衛研究所の発表が、その辺りに触れていない点が気になります。 はっきり言われたのかもしれません。米国はお金がないから、日本 は自分で頑張ってくれ・・・と。 オバマ大統領チーム(ヘーゲル、ケリーを含む)の姿勢、強制削減 による国防費の減額等々からすれば、「オフショア・コントロール 」論が勢いを得てくる可能性はこれまでよりも高いと考えられます 全部ではないにしろ、その一部を借用しようとの気持ちになるかも しれませんね。