4510.日米共同フォーラム「エネルギーの未来」2



10月31日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催された
日米共同政策フォーラム「エネルギーの未来:日米の選択肢と協力
の可能性」を聞いた。午後の部をお送りします。

「日米の視点:原子力と電力の将来」というパネルディスカッション
元米国家安全保障エネルギー担当上級部長ロバート・マクナリーの
話で、サイクロン「サンディ」のために訪日できず米国から国際電
話で話をした。

米国の原発は足踏みをしている。LNGが安いことと、地球温暖化の熱
が冷めたこと、世論が原発にマイナス評価であること、規制当局の
動きが見えないことから他のエネルギーに向かっている。日米を安
全性、役割、関係の3つで考えたい。原発の独立規制庁化は良いこ
とである。しかし政治的に原発ゼロは残念である。

ナイ・アーミテージの論文を助けたが、日米の位置づけ、役割、目
標などを論じた。日米は世界的に影響を与えることになる。
日本は原発ゼロで再生エネルギーだけでは一流国にとどまれない。
石油やLNGでは経常赤字になり、国力を消耗することになる。

新興国は石油需要が上がり、中東からそれを得ることになるが、日
本も石油を中東に頼ると、新興国と奪い合いになる。それと、原発
の技術を供給する責任がある。このため、技術を確保しておくこと
が重要だ。安全な原発についても考えて欲しい。核不拡散について
も進めてほしい。このために、1988年日米原子力協定で、六ケ所村
の再処理施設を作った。(Fの独り言:ここもある人の影響を感じる
。)

質問:民主党の原発政策はどうか?
答え:原発ゼロでは人材が失われる。原発技術がなくなることに、
   米国も大きな利害を持っている。このため、日米で担保した
   い。
質問:米国として、原発ゼロになると、同盟国としての負担が増え
   るのか?
答え:米国は困難な問題を抱えている。予算問題で、シーレーンの
   安全を確保できるかどうか疑問が持たれている。日本から、
   これ以上のエネルギー安全保障を求められても無理である。

質問:米国でも原発事故があり、その後再稼働したが、どうしたか?
答え:スリ−マイルアイランド原発事故後、原発を増設できずに石
   炭とガス火力発電で上昇分の需要に対する供給をカバーした。
   原発をゼロにはしていない。維持している。増設を止めただ
   けである。日本も増設を中止するのは良いと思う。原発ゼロ
   はおかしい。科学的な議論をしていない。オプションとして
   安全な原発という議論はして欲しいということである。
   (Fの独り言:ここでも、ある人の意見が反映されているよう
   な気がする。)


次の元IEA長期戦略担当特別補佐官の芳川さんの話
アジアの時代が来ている。アジアのエネルギー需要が急増している。
このため、供給の構造が変化し、中国は次の第12次5ヵ年計画で
エネルギーの確保、再生エネルギー、中国自前での技術開発などの
3本柱を立てている。

ASEAN諸国は、電力網の接続をして、ユニット化する方向である。
1990年には、地球温暖化で低炭素化が重要であったが、現在2010年
では、エネルギー安全保障が重要になっている。

日本は3Eの面積を最大化することと、プライオリティを付けるこ
とである。3Eとは経済、エネルギー、環境のことである。

すべてのリスクを計算することである。そうすると、中東からの石
油輸送や原発の危険性などを考えて、エネルギーのネットワークを
考えることになる。備蓄の各国連携などもその視野に入る。

行政と学界の連携も重要になる。原子力も日本はやるべきで、文化
的にも日本に適合しているし、技術も国際的な信認を得ていること
であり、それをオープン化するべきである。世界最高水準の原子力
を利用するべきである。

元米国原子力規制委員会委員であるブラッドフォードさんの話
原子力の将来は、エネルギーの勢力できまる。スリーマイル事故後
、原発増設に許可を与えなかった。現在米国内には104の原発が
有り、午前のブライソンさんが2基を2013年に廃止する。

原発の費用は、6セント/KWであり、稼働率が老朽化で下がり、15%
UPしている。LNGは5セント/KWであり、原発はコスト的に高いこと
になっている。電力の自由化もブレーキがかかっている。12州が
自由化したが、8州は自由化と規制の真ん中にいる。自由化の競争
で、原発はコストを下げている。新設は4基が許可されたが、後続
がなく、30基の増設はない。LNGのコストが安い。再生エネルギー
は下火である。

21世紀政策研究所研究主幹の澤さんの話
原発の必要条件と十分条件がある。必要条件としては、放射能の理
解が必要であり、低線量放射線の影響について国民に理解してもら
うために、情報を提供する必要がある。また、福島に人が帰れるよ
うにしないと理解できない。このためにも福島の復興が重要である。

メーカは素晴らしい技術を持っているが、電力会社のオペレータに
技術が溜まっているのか疑問。オペレータに責任と技術を与えるこ
とである。緊急時の対応ができないし、組織も体制もできていない。

安全性と競争性を高めて、内向きな技術から外部に情報を説明でき
ることが重要である。国の基準も最高レベルになっていることが必
要である。

もう1つが、バックエンド・ソリューションが必要。使用済燃料の
問題の解決方法や仕組みを作ることである。

十分条件としては、電力の自由化でリストラクチャリングすること
である。自由化すると、不確実な投資はできずに、かつコスト削減
が必要になり、原発を民間企業では持てないことになる。このため
、原発の国有化が必要になると見る。もちろん、原発を継続するた
めにである。

この維持の理由は経済的な理由というより、エネルギー安全保障の
観点からである。市場外の価値に理由を見つけることである。

質問:日米間で協力ができるのか?
答え:ブラッドフォード:研究やプロジェクトなど増えることはあ
っても、減ることはない。企業間での協力も多く、WHー東芝やGEー
日立などがある。今後、再処理なども協力分野である。

質問:アジアでの協力体制は一歩進むことがあるか?
答え:芳川:日米でのエネルギー協力の方向性はあったが、独自に
行っていた。原発以後、米国から協力を持ちかけられた。これは、
日本にとってもメリットがあり、特にシェールガスで大きい。
アジアでの一歩は、政府間だけではなく、産業界や学界などでも行
えないかと思う。APEC、ASEAN、日中韓など今までの組織で取り組み
ができないかと思う。福島の教訓などアジアに出していくことが必
要である。

質問:GNEP(国際原子力エネルギー・パートナーシップ)の仕組み
はどうなっているか?
答え:澤:政治状況がわからない。GNEPと同様な仕組みが必要である。
外向きに歩くことが必要である。


「化石燃料と再生エネルギーの可能性」のパネルディスカッション
議長のパーウェルから原発の代替でのエネルギーを考えるとして、
議論に入った。
まず、日本エネルギー経済研究所の十市さんの話
中東の地政学リスクが高まり、不確実性が増大している。しかし、
日本はカタールからLNGを輸入している。中東から石油の86%と
ガスの27%を輸入している。

2010年と2012年比べると、原発は25.5%から1.8%に減少、石油は
7.3%から17.5%へ増加し、LNGは24.2%から35.2%になり、石炭は
21%から22.3%へ、そして、再生エネルギーは10.7%から11.2%
である。石油か増えたので、日本は貿易赤字になった。

LNGの価格は米国では3ドル/トンであり、日本は18ドル/トンと
6倍も違う。この数値の4倍が石油1バレルと同じになるので、米
国は石油換算で12ドル/バレルという安値で買える事態にある。

このLNGをFTA締結国には輸出できるのであるが、日本はFTAを締結し
ていない。LNGのエネルギー安全保障の観点から、ソースの多様化や
発電の多様化、電力市場の自由化などをする必要に日本はある。

石炭も増加して、世界の30%になっている。この石炭を高効率で発
電できる技術を日本は持っている。これをインド、中国などの新興
国に設置することが重要である。CO2は地下への貯蔵することである。

CSISのパンフリーさんの話
4年間の米国のエネルギー政策は、当初、オバマ大統領は再生エネ
ルギーに力を入れ、800億ドルを投入した。しかし、気象対策の
法律ができずにいた。そこにシェールガス革命が起こり、生産コス
トが劇的に下がり、1000Mの地下でも9ドル以内になった。

このため、シェールガスに乗り換えた。2035年には自給自足できる
ことになった。それにより石油・ガス価格が下がった。このことで
ガスの利用範囲が拡大する。自動車を石油からガスに移行する方向
である。

このため、100基の原発は80基に縮小する。再生エネルギーも
36州が認めている。しかし、2030年でも10%程度である。

電力中央研の朝野さんの話
FITについて、2030年に再生エネルギーが35%にするという計画であ
り、ドイツと同じ制度を導入した。ドイツでは割高の太陽光のため
に導入され過ぎになり、急速な増加になっている。このため、当初
より1/3の価格にしたが、現在、サーチャージが2.52ユーロ(42円)
/KWとなっている。2005年当時は0.5ユーロ(15円)/KWであったので
急速な上昇になっている。

今後、ドイツは毎月見直をするとしているが、この失敗を教訓にす
るべきである。導入量を決めて、それに達したら、止めることであ
る。または、入札して価格を決めることだ。

最後にハーバーグさんの話があったが、ほとんどが今までの話にあ
ったので省略する。

質問:水素、メタンハイデレードについては?
答え:十市:生産コストがまだわからない。1000m以上の深海からの
回収コストが見えていない。現時点ではLNGの3倍から5倍もしてい
る。水素はわからない。

質問:石炭とLNGのロビーストはどうか?
答え:(パンフリー)石炭のロビーストは多いが、LNGは少ない。
(ハーバーグ)しかし、石油のロビーストは多く、この人たちが
LNGに移ってくる。

質問:スマートグリッドの日米協力はできるのか?
答え:(ハーバーグ)米国人は中央制御されるのか好きではない。
このため、スマートグリッドの管理が進んでいない。福島などでは
実験はできると思うが。
答え:(十市)コストダウンがないとメリットがない。蓄電池など
の技術発展がないと無理。(朝野)沖縄やハワイなどで取り組んで
いる。

このフォーラムの感想としては、技術者というより政策担当者が多
く、技術サイドの見解はあまりなかった。技術者的なのは、最初の
ブランソンさんぐらいであり、水素や原子力の技術的な可能性につ
いての見解がないことにビックリした。原発をエネルギー安全保障
という面からしか考察されていないことに物足りなさを覚えた。

米国が民主党の原発ゼロ政策に疑問を持つことは、その通りである
が、何かの提案がほしいと思う。特に最後のセッションは再生エネ
ルギーの限界しかなく、水素など平準化の解決方法の考察がないの
が、ガッカリであった。

コラム目次に戻る
トップページに戻る