4376.日本人って何者?(『銃、病原菌、鉄』の評論)



 日本人って何者?
From:得丸
-1-
*やっぱり欧米人は日中韓を誤解している*, 2012/4/1

『銃、病原菌、鉄』は、朝日新聞が「この十年間の最も優れた書籍」としてプッ
シュしている。また「東大、京大、北大、広大の教師が新入生にオススメする
100冊」の1位にもなっているそうだ。
しかしこの本は真実の中によけいな嘘を混ぜており、その嘘が本全体の信憑性を
失墜させている。 残念です。

「日韓併合により日本は朝鮮の文化を根絶し、ハングルを教えず日本語を強要し
た。」
「日本人が効率のよいアルファベットやカナ文字でなく、書くのがたいへんな漢
字を優先して使うのも、漢字の社会的ステータスが高いからである」
「中国文化の威光は、日本や朝鮮半島では依然として大きく、日本は、日本語の
話し言葉を表すには問題がある中国発祥の文字の使用をいまだにやめよ うとし
ていない」
…??

「日本と韓国、北朝鮮は兄弟のようなものなのだから お互い仲良くすべき」な
どと欧米人に言われても、もう白けるだけ。
人気や権威にごまかされないよ!


-2-
人類史としてはそれなりに納得で、面白かった。
大雑把に言う東洋と西洋の歴史比較(東西だけではないが)も面白く、なるほ
ど!と頷く事も多かったが、こと、日本に関する記述が頓珍漢で、本の内容を
、頭から鵜呑みにして信じる気にはなれず、話半分で読みました。
でもそれなりに面白かったです。


-3-
すでに単行本のレビューのほうで他の方から指摘されていますが、
原書(英文)の2005年度版からは本書に掲載されていない章が追加されてい
ます。

その追加された章は、日本について書かれたものであり、その章の題名は
「日本人とは何者なのか?」です。
そして、驚くべきことにその章には以下のような内容が書かれています。

・日本政府は現在においても在日コリアンの帰化をさせないようにしている。

・日韓併合により日本は朝鮮の文化を根絶し、ハングルを教えず日本語を強要した。

・16世紀の秀吉の話を持ち出し、鼻塚(耳塚)にまつわる日本の残虐性を
 細かく強調したうえで、韓国人と北朝鮮人が日本人を憎むのもむりがないとし
ている。
 しかし、対馬の日本人に対する虐殺行為とその残虐性については目を向けない。

・百済と新羅を別の国として区別せず、いずれも朝鮮人の国であるかのように
 記述している。

・李氏朝鮮による500年以上に渡り日韓併合まで行われてきた自国民への
 略奪、圧政、虐殺、重税、飢餓、ハングル文字使用を禁止、等々
 そうした朝鮮人自身による悪政、それによる人口の激減、国の絶望的な荒廃。
 それらには一切触れず、一方的に日本の残虐性と加害者性を証拠無に強調して
いる。

・悪の枢軸国であり、今現在も圧政を敷き自国民を苦しめ、殺し、
 日本人を拉致し、核兵器開発を行い、国際社会を恫喝し、犯罪を繰り返す
 独裁国家である北朝鮮には一切触れず批判もしない。

・北朝鮮により拉致され、いまだ戻ってくることもできずにいる被害者がいて、
 他人の遺骨を送りつけられ、それがお前の娘の骨だと言い放たれた被害者がいて、
 そうした国の残虐性には目も向けない。

そして、そのうえで著者は日本と韓国、北朝鮮は兄弟のようなものなのだから
お互い仲良くすべきだと書いているのです。

著者は北朝鮮の将軍様にでも魅入られてしまったのでしょうか?
それとも誰かに吹き込まれたんでしょうか?

さらに、著者は日本神話についての信憑性をまじめに指摘しています。
しかし、神話は世界のどの国にも存在し、どの国の神話もみな一様に
ファンタジックであり、そもそも神話とはそういうものです。
それなのに、ある国の神話について、その歴史的信憑性に注目することに
何の意味があるのでしょうか。なぜ日本の神話を批判しようと
思ったんでしょうか。意味がわかりません。

大変素晴らしい本だと思っていただけに、このいい加減で嘘雑じりの
悪質な章の追加により、本書の存在意義に傷がついてしまいました。
ほんとに残念です。
著者にいったい何があったんでしょうか?


-4- *翻訳されていない一節*, 2011/9/7
*
*原著には、訳書には記載されていない、一節がある。(私の手元にあるのは、
2005年版。)

その章題は、ズバリ「日本人って何者?」。

世界の中での日本の特殊性から一説したためたのだろうが、その内容は驚愕である。

天 皇家の祖先が朝鮮人であったり、昭和天皇が人間宣言をしたのが終戦前で
あったり、朝鮮人がアイヌ人を駆逐した結果が今の日本であったり、在日朝鮮
人が帰化 しないのは彼らの意思ではなく日本政府が国籍を与えないからであっ
たり。こういった珍説が、あたかも事実であるかのように主張されている。学会
に は、極端 な主張を補強する異説も存在するだろう。(それでも天皇人間宣言
が1946年1月1日に発布された事実は揺るがないが。)しかし、その分野の
専門 家でもな い以上、珍説は、あくまで珍説として紹介すべきである。

日本人のルーツについては、ウィキペディアの「日本人」に関する記述の方が、
よっぽどフェアである。鳥類学者が十分な知識もなく、日本の歴史を語 るから
こういうボロが出る。所詮、餅は餅屋。

PS
−1−
この著者の日本に関する記述だけがおかしいのか、もしかしたら日本以外のところ
もおかしいのだけど、背景となる知識がないから読んでもおかしいと感じないだけ
なのか。

−2−
著者の記述を誤り訂正をしながら読むことができるか。誤った記述を、誤り訂正を
せずによむことは、危険なだけで、百害あって一利なしではないか。


PS2
私はこの本が絶対にダメだといっているわけではありません

ただ、欧米が発展したことをそもそもの議論の出発点にするところは気になります。
単に乱暴で、ヒトをヒトと思わない誤った宗教に染まっていただけだと思うからです。

いろいろな誤りを訂正しつつ読むのなら、悪くはないですが、駆け足でやるのは大変で
はないでしょうか。


この本は、分子生物学や最新の科学の成果を取り入れて、巧みに
読者の概念を歪める類の本だと思います。

「単に環境によ」って、「欧米が発展した」と思わせるところも
危険な思想の刷り込みではないかと思うのです。

欧米の行なったことは、基本的には略奪であり、発展したのは、
存在しない神様を探しているうちに、天文学や分子生物学や量子
力学のような目に見えない科学をみつけたところにあるのでは。

でも、それらの科学も、誕生すると同時に、宗教の力で歪められ
て、腑抜けの科学におとしめられていると思います。


これだけの広い話題を提供している本は他になかなか見つかり
ませんので、これをテキストにするというのもありえますが、それ
ぞれの分野できちんと基本文献を読み込んでから読書しないと、
本書の毒に打ち克てないと思うのです。



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