4295.パブロフの条件反射=ローレンツの本能



坂田明はもののあはれの化身である
、、、、パブロフの実験結果は間違っているか?
From: tokumaru

各位、浅山様、

> 
> 得丸様の先日のグリュウ細胞の分析、しばし感じています。
> 免疫を司るその細胞が神経の伝達の役割もと頑張って
> いるお話。

グリア細胞ですね。これはマクロファージが、大脳皮質に移動して
マイクログリアになって記憶を保持する話です。

あと、脳脊髄液中の、Bリンパ球の働きも重要ではないでしょうか。

> そして「若者の実験の分析のやり方、
> 遣れば良いのだの言うものではないのだ」と言う貴方の言、

これは若者に限りません。実験の結果の意味づけは非常に重要です
ね。

パブロフの「大脳半球の働きについて」(岩波文庫)は、ここ2年
、何度も読みましたが、読むたびにパブロフの実験結果の読み誤り
に新たに気づき、非常に面白い発見をしています。

第7章の分化抑制という実験ですが、はじめあるひとつの刺激で餌
が出るという条件付けをします。

たとえば、メトロノームの100回/分を聞かせて毎回餌を出すと、メ
トロノーム100回/分を聞くだけで涎が出るようになります。

続いて、似た刺激、たとえばメトロノームの96回/分を聞かせて餌が
出ない状況を作ります。

そして、これらの刺激と状況を1セットにして、100回/分のメトロ
ノーム、餌、96回/分のメトロノーム、餌なし、という状況を繰り返
すのです。

すると、するとです、私も2年間で何回も詠みましたが、実は今回
はじめてこれに気づいたのですが、、、、
100回/分のときはもちろん涎がいつもちゃんと出るのですが、
(1) 最初、96回/分を聞くと、涎が100回/分のときの半分くらい出ま
    す。
(2) 続いて、96回/分を聞くと、涎が100回/分のときとまったく同じ
    だけ出ます。
(3) それから、96回/分を聞くと、涎が全然出なくなります。

こうして最終的に分化抑制が固定されるのです。

どうしてこうなるのか、パブロフは説明していません。

(1) ⇒ (2) ⇒ (3)というふうに、涎の量が半分⇒100%⇒ゼロと
 なるのはなぜか。

これを説明できるのが、免疫細胞の体細胞超変異です。

脳脊髄液中に最初は、100回/分に対応するBリンパ球しか存在して
いない。そこで、おやっ変だなと思ったときに、涎は半分でます。

そして新たな記号に対応するべく、Bリンパ球の細胞分裂の指示が
出ます。

この新しいBリンパ球が生まれて、しばらくは、96回用に作られた
細胞ですが、受容体は100回/分と同じ構造になっているので、100%
の涎が出ます。

その成熟の最終段階で、新しい記号(96回/分)に最適な形の記号に作
りかわります。

これが体細胞超変異です。利根川進博士はこれでノーベル賞をもら
われました。

この私の読み取りが正しいかどうか、まだ証明されていません。な
ぜなら今まで誰一人としてパブロフの実験結果の読み取りが間違っ
ているのではないかということを論じていないからです。

私に言わせれば、本を丁寧に読めば、パブロフが間違っている、誤
魔化していることは、一目瞭然なのですが、、、

言語情報をきちんと解読・処理するだけで、じつに面白いダイナミ
ックな研究ができるのではないかと思うのです。

ついでですが、太田述正のツイッターでBBCが廃墟になったデトロイ
トの写真をアップしていることが紹介されていました。
ご参考まで。

デトロイト車社会の未来なり

デトルイット明日のトヨタの姿なり

http://www.bbc.co.uk/news/in-pictures-17095523

とくまる
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鈴木先生の『鳥類の音声活動 記号論的考察』による再結合
From: tokumaru@

皆様

鈴木先生の『鳥類の音声活動ー記号論的考察』による再結合 *****

フランスの分子生物学者であるフランソワ・ジャコブは、「創造と
は再結合」であるといった。(To create is to recombine.)

鈴木先生の「鳥類の音声活動」は、昨年11月の研究会でその存在
を知って以来、何度か読ませていただき、何度かそれについて原稿
を書いてきた。研究会の会誌3号にも書いたし、電子情報通信学会
の最近の発表(2月インターネット・アーキテクチャ研究会)や予稿(
3月情報論的機械学習研究会、コンピュテーション研究会)でも、必
ず鈴木論文と、そこで引用されているコンラート・ローレンツやニ
コ・ティンバーゲンについて言及している。

この論文によって、記号とは、反射や条件反射をひき起こす引き金
となるパターン記憶であるということがわかった。パブロフの条件
反射実験と、ローレンツやティンバーゲンの本能(反射)は同じ現
象だったのだ。

パブロフが、反射と本能は同じだといったのは、どちらも生得的な
パターン記憶で起きる現象だということだ。ローレンツや鈴木先生
は、それを「生得的解発機構(Innate Releasing Mechanism)」と呼
んでいる。これらは同じ現象だったのだ。


昨日、さらに新たな発見をした。

鈴木論文で紹介されているティンバーゲンの第1図と第2図だけど
、これって、人間ももっているものだ。

剣豪の小説などで、「相手を見るな」、「伏目がちにして、相手の
気配を感じたら動け」などというのは、じつは脊髄にパターンが入
ったときに、体を捌いて、相手を斬るためではないだろうか。

大脳皮質の視覚野や聴覚野に感覚刺激が届く前に、脊髄の上行性網
様体賦活系でパターン記憶を反射として処理するから、一瞬早く体
が動いて、先手をとって相手を斬れるのだ。


言葉は、アンドレ・マルチネがいみじくもいったように、パブロフ
の犬の実験に出てくる鈴やメトロノームの音刺激である。だからこ
そ、禅は言葉を使って考えてはいけないという。また、現代芸術は
、作品と呼ばずに、「モノ(objet、オブジェ)」と呼ぶ。言葉の反射
を止めることが、非常に大切であるということを、禅や現代芸術は
いっている。

岩波文庫から出ているパブロフの実験結果を読むと、犬がどのよう
にして記号を覚えるかも出ている。長くなるので、これ以上は書か
ないが、ぜひとも、パブロフの本「大脳半球の働きについて」を丁
寧に読んでみて下さい。非常に面白い結果が出ています。


鈴木先生の論文は、すべての現象、ローレンツ、ティンバーゲン、
パブロフ、そしてイエルネの免疫システムのネットワーク理論や免
疫文法論を再結合してくれた。

ぜひとも皆さん、「鳥類の音声活動」を何度も読んでみて下さい。
そして天才が書いた論文というものが、いかに埋もれるものかとい
うことを実感してください。

得丸公明



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