4016.海部八郎の評伝



海部八郎の評伝が出版されました

皆様、

仲俊二郎著「我れ百倍働けど悔いなし 昭和を駆け抜けた伝説の商
社マン 海部八郎」(栄光出版社2011年、1680円)という
本が最近出版され ました。

ある同期入社社員(ワリと早い時期にNICを退職して現在海外在
住)からさっそく感想をいただきました。

「先日同期メールで貴兄が上記本をご紹介されたので、アマゾンか
ら早速取り寄せて読んでみました。何カ所か誤植や間違いもあり少
々雑な印象は受けましたが、小説自立ての話で中々面白く読めまし
た。小生、日商岩井時代はそれなりに楽しんだと思っていたのです
が、この本を読んで、あと10年位早く入社していたら、もっともっ
と面白い 経験出来たかもしれないと思いました。」

なかなかよく書けている本です。日商岩井にいた僕にとっては涙な
しには読めない本でした。海部八郎に興味がなくても、商社や日本
経済に興味があるかたは、ぜひとも読むことをお薦めします。

海部さんの人柄がとてもよく描かれていて、好印象を持ちました。
海部さんが日商を大きくすることにかけた思いが伝わってきました
。日商だけでなく、戦後の日本の造船、鉄鋼、自動車という輸出産
業が、ひとえに海部さんの力で大きくなったというのが著者の論調
です。

僕は1993年にお目にかかる機会があったのですが、その際に、
自慢気に「商売なんて簡単やで。お客さんが喜ぶことだけすればえ
えんやから」とおっしゃっておられましたが、その言葉どおりの誠
実・正直・まっすぐな商売のやり方も紹介されていました。

一方で、辻、植田という二人の社長が、海部さんを追い落とすこと
だけに熱心であったことは残念でした。筆者も何度も経営者にある
まじきという表現で批判していますが、この二人が海部さんと島田
さんの足を引っ張り攻撃 するところは、読んでいてとてもつらかっ
た。頁をめくるのがいやになるくらい心が痛かったです。

「海部八郎が失脚したあとの日商岩井の顛末を語るのは、あまりに
わびしく、悲しい。なぜならばことごとく転落の軌跡を辿ったから
である」という言葉がエピローグにあります。

得丸公明
==============================
得丸さん
 
是非読んでみたい本と思います。いい意味でも悪い意味でも日本経
済を引っ張ってきた豪腕の人物であったと聞いています。
小説「不毛地帯」では伊藤忠の瀬島隆三の対抗馬として悪役で描か
れていました。人間像はよくわかりませんが、日本の船舶・航空機
業界では、海部氏は有名な怪物で業界の成長を牽引してくれた人物
であったと思います。私は、海部軍団とは直接の取引の機会はなか
ったのですが、90年前後の頃、中近東のプラント商談で取引して
いた同僚が海部軍団は、商戦に勝ついろんな知恵をどんどん出して
くれる。日商の中でも一目置かれた存在で、特別人事があった凄い
軍団だと語っていたのを覚えています。本当の商社マンであったと
思います。

知り合いの商社マンOBが、”最近の商社マンは、コンプライアンス
ばかりを語ってリスクを負った商戦をしなくなった。みんなチェッ
クする側に回ってしまって守りの姿勢ばかりで、本当に営業をやる
商社マンは少なくなった”とこぼしていました。
最近の海外の商戦では、韓国や中国の積極的なビジネスマンに大型
プロジェクトを取られ負け続きの日本企業の現状をみると、企業に
とってはこういう人が救世主になるのだと思います。
震災後日本にとって自己保身ばかりの小粒な政治家が多い中、強力
なリーダーを期待するひとが多いのではないでしょうか?
 
小川
==============================
小川さん

創業者である高畑誠一は、入社当時から海部八郎に目をかけており
、帝王学を学ばせ、会社の未来を託しました。そして、海部はそれ
にこたえました。

本の中で書いてあったのですが、海部八郎が45か46歳のときに
、社長にするかどうかを迷ったということです。

そんなことしたら、他の社員の反発があるからと、やめて、いつで
も切れる材木出身の辻を社長に抜擢したのですが、それが会社の命
取りになったというのが著者の考えのようです。

そのとき、奇数(3か5)人の占い師でも立てて、会社と海部の未
来を占っていたらどうなっていただろうかと思います。

少なくとも、会社がつぶれることはなかったでしょう。

得丸


コラム目次に戻る
トップページに戻る