4004.ギネス世界記録への疑問



ギネス世界記録への疑問
                   平成23年(2011)5月28日(土)
                  「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治
色んな分野の世界一を認定、掲載しているギネス・ワールド・レコーズという本が
あります。私は予てから、ギネス・ワールド・レコーズなるものに疑問を持つよう
になっています。ギネスブックという言葉の方が、年配の私にはなじみがあります
が、Wikipediaで調べてみると、2002年に改称されていました。次の通りです。

ギネス・ワールド・レコーズ(日本国内名称:ギネス世界記録、英語:Guinness 
World Records、ギネスブック)は、世界一を収集した本。略称ギネス。毎年9月に
発行され、様々な分野の世界一が何かを認定、掲載しています。長く「ギネス(ブ
ック)」の名称で親しまれていたが、2002年度版から「ギネス・ワールド・レコーズ」
(「ギネス世界記録」)に改称されました。

 歴史的には、ギネスブックの発行は、アイルランド のビール会社ギネス醸造所の代表
取締役だったサー・ヒュー・ビーバーが、仲間と狩りに行った時、獲物のうち、世界一
速く飛べる鳥はヨーロッパムナグロ かライチョウか、という議論になり、これになかな
か結論が出なかったためで、ビーバーがもしこういう事柄を集めて載せた本があれば評
判になるのではないかということが切掛けだった由。そしてロンドン の会社に発注され、
1951年にギネスブックの初版が発売されています。まだ60年しか経っていないのですね。

登録するには、ギネス世界記録のウェブサイトから申請し、記録が認められれば、ギネ
スから認定書が届くとのことです。ギネスには毎年6万件以上もの応募が来るため、記
録カテゴリーとして新しく認められるものはわずかなようです。

 ただ、私が新聞、テレビなどで報道されているのを見聞きする限り、ギネスワールド
レコーズの特徴は、より大きい、より多い、より長い、より高い、より深い、より速い
等の記録を認定しているという点です。世界一大きい凧、世界一長い橋、世界一高いビル、
世界一速い列車等などです。私はギネスの世界一を求める傾向が行き過ぎて、エネルギー
消費、物質消費を煽る原点になっているのではないか、GNPのように無駄な消費も冨にカ
ウントされる資本主義に悪い点を象徴しているような気がするようになりました。

変わり種世界記録;ここに掲げる4例は下記ホームページから戴いたものです。
これらを見ておりましても、ゆっくり、小さい、短い、低い、浅い、静かな、効率的
なことは評価の対象外のような感じがしています。

  
世界一大きいゴムバンドの巨大ボール
世界一長いスキー板 1,053人が履いたという
世界一重いリンゴ(日本産)
燃えながら馬に引きづられ、470mを記録

現に行き過ぎの記録登録が過去にあって下記のような制限条項があるようですね。
受け付けられないもの
・申請内容が、挑戦者本人、観客、周囲の人々を大きな危険に晒すもの 
・申請者以外の人が、その記録に挑戦するに値しないと判断されるもの 
実際に最年少の出産記録というものが、過去にあり、今は受け付けられません。理由は
明らかにされていませんが 女児に対する性犯罪 を誘発するからとのこと。また、早
食い の記録も、無謀な早食いで命を落とす事故が多発したため受け付け停止になり、
不眠 の記録も同様。長期間にわたり睡眠をとらないことは健康を損ない命にも関わる
ためとのことです。しかしこういう挑戦を生む素地がギネスにあるのです。 

ギネス世界記録の日本公式サイトにも下記のような記述がありました。
○ギネス世界記録として認められる記録
・	検証でき、定量化でき、測定し得る、他人が破ることができるもの 
・	ギネス・ワールド・レコーズのブランドとして賞賛できるもの 
× ギネス世界記録として認められない記録
・	危険なもの。わいせつなもの。決して破ることができないもの 
・	ギネス・ワールド・レコーズのブランド価値からみて挑戦するに値しないもの

上述のゴムバンドの巨大ボールは後何に使えるのでしょう。長いスキー板は結局ゴミ
になりましょう。世界一重いリンゴは賞味できます。しかし最後の自ら燃えながら馬
に引きずられる距離の記録など、まさに本人を危険にさらすものでしょう。このよう
に、重高長大速などを認定する傾向がある限り、世界を良い方向に導いて行かないと私
には思えるのです。

その思いを持つようになったのは、私も開発・走行試験に関わったJR西日本の500系
新幹線電車が平成9年(1997)3月にデビューして、その年の8月に速さでギネス
ブックに登録された時からです。広島―小倉間192kmを44分で結びその区間平均時速
261.8■が「隣接停車駅間世界最速」として認定され、また「始発駅から終着駅まで
(新大阪〜博多間)の「表定速度242.5km」もギネスブックに認定されました。

そして500系のぞみは新大阪―博多間を2時間17分で結んでいました。今も最短記録
です。このダイヤを作るのは、関係者の大変な尽力があったと思います。私も当時
の500系の運転台に添乗させて戴いた時、運転士が行なうノッチ(自動車のアクセル
に相当)の細やかな操作を見て、感心したものです。

しかし、開発・走行試験に携わったものとして、一番苦労したのは如何に速く走る
かということよりも、如何に静かに走るかということでした。時速300キロで25メー
トル離れた地点において車外騒音が75デシベルと間違いなく当時の世界一静かな高速
列車が実現したのです。そして500系新幹線の消費電力は、一世代前の300系新幹線よ
り15%も低かったのです。

 ギネス・ワールド・レコーズは、申請式ですから、申請者の意思、判断があったの
でしょう。何故JR西日本が世界最高速度記録を申請すると同時に世界一車外騒音が低い
記録も申請しなかったのか、と思ったものです。しかし静かな走行がもとより、ギネス・
ワールド・レコーズの評価対象外なのであろう、と時折、報道されるギネス・ワールド・
レコーズの認定ニュースを見聞して、認識するようになりました。 浪費、環境破壊に
つながるギネス世界記録を追いかける姿勢、スタンスから脱皮し、省エネ・省資源を
実行して、後世によりよい環境、自然に学んだ循環社会を残したいものです。

皆様如何思われますか。

                            以上              

「地球に謙虚に運動」代表


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