3926.加圧水型原子炉では事故はないか?



原子力発電の原子炉には2つの方法がある。東京電力の福島第1・
2原発や東北電力、中部電力、北陸電力、四国電力が採用している
沸騰水型原子炉と北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力各社
が採用している加圧水型原子炉である。

沸騰水型原子炉は、原子炉で熱せられた水で直接にタービン発電機
を回し、加圧水型原子炉では原子炉で熱せられる一次冷却系とその
水で熱せられる二次冷却系という分離された水の循環が2つある。

このため、沸騰水型原子炉では加圧水型原子炉に比べ、二つの冷却
系間における熱交換ロスがないので経済性では優位であるが、安全
性の面では、大きな問題を抱えている。

加圧水型原子炉では一次冷却材漏洩減少時や喪失時には非常用炉心
冷却装置(ECCS、緊急炉心冷却装置)を作動させる。

外部からの即時制御は制御棒によって行われる。ほとんどの加圧水
型原子炉では、制御棒が上部から圧力容器を貫いて炉心へ挿入され
る設計が採られており、また制御棒の駆動機構が故障するなどの非
常時には駆動機構から制御棒を切り離して自由落下によって制御棒
が炉心に挿入出来るようにもなっている。

加圧された一次冷却材水は熱せられても液体の状態であることで再
循環が容易であることと循環系が炉内に閉じているため破損しにく
いが、沸騰水型原子炉は一次冷却水が漏れ出す心配があり、かつ水
が蒸発しやすいために、非常用炉心冷却装置が働いても、冷却水が
失われる可能性が高い。

今回の福島第1原発もこの一次冷却水が蒸発して、燃料棒が水から
でたことで、高熱になり、炉心溶解になったのである。

このように冷却系の事故が起こりにくいことで安全性が高いので、
加圧水型原子炉は、原子力潜水艦、原子力空母などの小型プラント
で用いられている。

世界の大勢も事故が少ない加圧水型原子炉になってきている。日本
でも原子力事故はほとんどが沸騰水型原子炉で出ている。

一番、今後問題なのが浜岡原発であり、沸騰水型原子炉であり、東
海地震の津波がまともに来る静岡県の御前岬の近くにあるが、6M
の津波しか想定していない。今回と同じM9の大地震後の10M以
上の津波には対応できずに、地下にある2次系の発電機がやられる
ことは確実で、今回と同じ事故が起こることになる。

女川原発も、危機的状況であったことが徐々に分かってきた。この
女川原は15Mの津波に対応しているが、20M以上の津波が襲い
、2次系発電機が冠水して、機能しなかったようである。しかし、
冷却系は正常に働いているようである。なぜかは発表がないために
分からない。

どちらにしても、日本の原子力発電行政は破綻したことになる。原
子力事故を想定した国家体制ができていないために、事故後の対応
が後手後手に回ったことで、事故の規模が拡大している。最初から
廃炉を決めて万全の策を講じることが重要であったのだ。米国は空
母などに備え付けている冷却材を提供すると申し出たのに、それを
断っている。これは重大は判断ミスである。

また、責任の所在が国なのか東電なのかも分からない状態になり、
かつ原子力保安院の職員が原子力の専門家ではなくて、何も知らな
いことに唖然とした。

原子力の安全に国は専門家を入れた体制を取っているものと国民は
安心していたが、この思いが裏切られた。米国も日本政府に業を煮
やして、要員450人の専門家を日本に派遣して、日本政府に代わ
って、指揮を取る勢いである。それと現場指揮には、米軍と共同戦
線を取る陸上自衛隊中央即応集団が当たることになった。

残念だけれども、日本政府より米軍の専門家を信頼するということ
になる。国辱かもしれないが、米占領軍に来てほしいものである。

この要員450人の専門家に情報を提供する無人機グローバル・ホ
ークを常時、福島原発に飛ばして情報を集めている。それにより、
米国政府や米報道機関は対応し始めている。日本には無人ヘリがあ
るが、その活動を検討していないようだ。情報も格差が大きいこと
が分かる。

民主党政権、菅首相ともに判断能力や決断力がないことで失格であ
る。
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原発事故直後、日本政府が米の支援申し入れ断る

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡り、米政府が原子炉冷
却に関する技術的な支援を申し入れたのに対し、日本政府が断って
いたことを民主党幹部が17日明らかにした。

 この幹部によると、米政府の支援の打診は、11日に東日本巨大
地震が発生し、福島第一原発の被害が判明した直後に行われた。米
側の支援申し入れは、原子炉の廃炉を前提にしたものだったため、
日本政府や東京電力は冷却機能の回復は可能で、「米側の提案は時
期尚早」などとして、提案を受け入れなかったとみられる。

 政府・与党内では、この段階で菅首相が米側の提案採用に踏み切
っていれば、原発で爆発が発生し、高濃度の放射性物質が周辺に漏
れるといった、現在の深刻な事態を回避できたとの指摘も出ている。

 福島第一原発の事故については、クリントン米国務長官が11日
(米国時間)にホワイトハウスで開かれた会合で「日本の技術水準
は高いが、冷却材が不足している。在日米空軍を使って冷却材を空
輸した」と発言し、その後、国務省が否定した経緯がある。

(2011年3月18日08時12分 読売新聞)
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原発事故対応に450人派遣準備要請 米太平洋軍司令官
2011年3月18日20時29分

 【ワシントン=望月洋嗣】米太平洋軍のウィラード司令官は17
日電話会見し、福島第一原子力発電所の事故で事態収拾のめどが立
たないことを受け、放射能汚染に対処できる要員450人に対し、
日本への派遣に備えるよう求めたと明らかにした。米軍はすでに9
人の専門家を日本に派遣しているが、状況次第で支援を拡大する方
針を示した。 

 同司令官は東日本大震災について、地震、津波、原発事故の三つ
が重なった特異性を指摘。原発事故をめぐる情報の混乱について「
こうした複雑な事態では、正確な情報を整然と流し続けることは困
難だ」と述べた。また、自衛隊と連携しての災害支援では「言葉の
壁」が課題だとの認識も示した。

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