3816.米国が率先して保護主義へ



米国は財務省の為替報告書を出す時期にきている。その検討。
            Fより

米国は、金融緩和という中国の人民元切り上げをしない対抗処置を
G20で世界から批判されてできなくなり、残すは対中制裁で、為
替操作国認定をして、相殺関税を全中国製品に掛けることになりそ
うである。

ソウルで開かれた今回の20カ国・地域(G20)首脳会議は、米国に
とって最悪な会議であった。米国の大統領と財務長官が世界の経済
サミットで総スカンを食い、過去にこのような例を思いつかない。

原因は米国の経済不振を諸外国のせいにしたことである。米国の問
題は、ドイツ、中国、ブラジルの輸出と、為替介入政策によるもの
であり、米国の解決策はといえば、ドル安になるくらい連邦準備理
事会(FRB)にドルを刷らせ、諸外国から需要を横取りすることで米
国が成長できるようにするというものだ。

これでは誰も米国の味方はできない。このため、1対19ということに
なり、米国はこの会議での目標を1つも達成できなかった。自国利
益最優先の米国の言うことを世界は聞かなくなった。このため、新
興国の投資資金導入規制や為替介入処置を認めてしまった。米国の
覇権力が著しく衰退したことが見て取れる。

危機を感じたバーナンキFRB議長は、欧州にとび、世界経済の回
復には米経済がより堅調になる必要があると述べ、FRBが実施し
ている追加国債買い入れに対する批判に反論した。また、中国の為
替介入政策を暗に批判した。

しかし、EUと中国が連携して、ドル基軸通貨制度を批判して新し
い基軸通貨制度を志向し始めた。ドル基軸通貨制度が崩壊すると基
軸通貨によって大きなメリットを受けている米国は、ワールドダラ
ーの巻き戻しという大暴落が待っている。米国の必要量の10倍以
上のドルが世界に出回っているし、米国債を持っている世界の中央
銀行は米国債を売り始めることになる。

サマーズ米国家経済会議(NEC)委員長は、米中関係は「先行き
、米国にとっての中心的な課題」になるだろうとし、「急速に変わ
りつつある世界のシステムにおいて、急速に変わりつつある国は、
必ずしも好ましいとは言えない歴史を作り出すことを長い歴史は示
している。歴史の舞台が中国に移ることに、世界がいかに調整を施
すか」が21世紀初めの歴史になるだろう、と語った。

中国人民銀行(中央銀行)の副総裁を務め、現在は国際通貨基金
(IMF)の特別顧問を務める朱民氏は、最近の傾向から判断すれ
ば、今後6年で新興国市場と発展途上国が世界のGDPの60%を占め
るようになるとし、「今とは異なる世界になる」と述べた。

また、―余永定・元中国人民銀行通貨政策委員も「私自身は人民元
をもっと切り上げる必要があると考えている。その幅は経済情勢に
もよるので、具体的な数値目標は言い難いが、年2〜3%のような
低い数字ではないことは確かだ。中国は切り上げる速度をもっと上
げたほうが良い」 

 「中国人民銀行は人民元を安く抑えるために、人民元を売ってド
ルを買う市場介入を続けている。その結果、外貨準備は増えるいっ
ぽうで、その多くは米国の国債だ。中国から米国へ資金を貸し付け
ているようなものだ。米国が金融緩和をして米ドルが値下がりした
ら、中国の外貨準備の価値も目減りしてしまった。中国政府は市場
介入の手をもっと緩めるべきだ。そうすれば人民元は値上がりする
だろうが、急激な変化でなければ中国企業も対応できる。貿易黒字
は人民元の切り上げだけでは減らないが、一定の効果はある」と語
る。しかし、既存利権を持つ地方政治家と中国商務省を中心に為替
水準の引き上げに猛烈に反対している。

八方ふさがりを打開するべく、米議会諮問機関の米中経済安保見直
し委員会は、年次報告書で、中国の人民元が6月の弾力化後も「本
質的にドルに対し過小評価されたままだ」で、対中赤字が「米経済
の深刻な重し」となっていると中国を為替操作国に認定するよう政
府に働き掛けるべきだと議会に提言した。

米財務省は10月、中国の為替操作国認定が焦点だった外国為替に
関する半期報告書の公表を延期。だがその後も具体的成果がなく、
今回の年次報告書は、政府が人民元や貿易不均衡の取り組みに「失
敗した」と批判。議会が政府に対中強硬姿勢を迫る材料となりそう
だ。

米中間選挙の結果で、上院も対中制裁法案を可決する可能性が高い。
というように米国は中国を為替操作国認定をして、相殺関税導入に
行くことになる。もし、率先して米国が保護主義を取ると、世界の
多くの国が保護主義を取り、新ブロック経済になる。

このため、TPPに加盟していないと、米国やAPEC諸国への貿
易ができなくなる。日本はTPPに加盟することで、企業を防衛す
るしかないと見る。しかし、与党政治家でさえTPP加盟に反対し
ている。

TPP加盟するために農業改革をするべきである。国際的な情勢を
踏まえた戦略を作り、それを見据えた政治をしてほしいものである。
TPP加盟を政争の具にしている現状を見ると、日本沈没になる危
険がある。

さあ、どうなりますか??
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2011年世界経済成長は減速へ、米回復出遅れ=OECD
2010年 11月 19日 00:41 JST

 [パリ 18日 ロイター] 経済協力開発機構(OECD)は
18日、最新の経済見通し(エコノミック・アウトルック)を発表
し、米経済の回復が予想より遅く、新興国の成長が緩やかになって
いることから、世界的な経済成長は減速しているとの見方を示した。
 OECDは年2回公表する経済見通しの中で、通貨をめぐる世界
的な緊張の高まり、欧州債務危機の恐れなど複数の要因を挙げ、見
通しがさらに下方修正される可能性があるとした。

 OECDは世界全体の成長率について、2011年は10年の
4.6%から4.2%に減速し、12年には4.6%に回復すると
予測した。

 前回5月の見通しは10年が4.6%、11年が4.5%。12
年については示さなかった。

 OECDの主席エコノミスト、ピエール・カルロ・パドアン氏は
ロイターとのインタビューで「回復は続いているが、ペースはやや
減速している」と語った。

 OECDは米国の成長率を下方修正。2010年は2.7%、
11年は2.2%、12年は3.1%とした。

 前回5月の見通しは2010年と11年ともに3.2%だった。
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米FRB議長が追加緩和批判に反論、中国為替政策を暗に批判
2010年 11月 20日 04:31 JST

 [フランクフルト/ワシントン 19日 ロイター] バーナン
キ米連邦準備理事会(FRB)議長は19日、フランクフルトで行
った講演で、世界経済の回復には米経済がより堅調になる必要があ
ると述べ、FRBが実施している追加国債買い入れに対する批判に
反論した。また、中国の為替政策を暗に批判した。
 同議長は欧州中央銀行(ECB)が主催した会議での講演で「ド
ル相場を下支えし、世界経済の回復を後押しする力強いファンダメ
ンタルズ(経済の基礎的条件)を実現するための最善の方法は、物
価が安定した状態で米経済を再び強く成長させることにつながる政
策を行うことだ」と述べた。

 FRBが3日に決定した6000億ドルの追加国債買い入れに対
して、米国はドル相場を押し下げることで米国の輸出を優位にしよ
うとしているとの批判が各国から相次いでいる。ドイツのショイブ
レ財務相はFRBの追加緩和策は「理解しがたい」と発言。米国内
からも、インフレを招き、資産バブルの形成につながる恐れがある
との批判が出ている。
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米機関、中国の為替操作国認定を レアアースも懸念
 【ワシントン共同】米議会諮問機関の米中経済安保見直し委員会
は17日発表した年次報告書で、中国の人民元が6月の弾力化後も
「本質的にドルに対し過小評価されたままだ」とし、中国を為替操
作国に認定するよう政府に働き掛けるべきだと議会に提言した。

 また中国から日本へのレアアース(希土類)の輸出が滞っている
問題も取り上げ、世界経済に及ぶ影響に「懸念が生じた」と指摘し
た。

 米政府は10月、中国の為替操作国認定が焦点だった外国為替に
関する半期報告書の公表を延期。だがその後も具体的成果がなく、
今回の年次報告書は、政府が人民元や貿易不均衡の取り組みに「失
敗した」と批判。議会が政府に対中強硬姿勢を迫る材料となりそう
だ。

 報告書は人民元が弾力化後、10月時点で「2・3%しか上昇し
ていない」と指摘。中国は輸出志向型の経済を維持し人民元の再評
価に積極的でなく、対中赤字が「米経済の深刻な重し」となってい
ると分析した。

2010/11/18 09:47 【共同通信
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中国が米国の中心的課題に=サマーズ米NEC委員長
2010年 11月 16日 16:36 JST 
WSJ
 【ワシントン】サマーズ米国家経済会議(NEC)委員長は15日
、米中関係は「先行き、米国にとっての中心的な課題」になるだろ
う、と述べた。 

 サマーズ氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が主
催する最高経営責任者(CEO)カウンシルで「急速に変わりつつ
ある世界のシステムにおいて、急速に変わりつつある国は、必ずし
も好ましいとは言えない歴史を作り出すことを長い歴史は示してい
る」とし、「互いの英知や付き合い方が何よりも重要になる」と述
べた。 

 さらに「最も重要で、米国の国力を図る上で世界が注目するもの
が1つある。国内経済を再生させる政策で成功を収めることだ」と付
け加えた。 

 サマーズ氏はまた、拡大しつつある中国の政治・経済力は、世界
が直面する中心的な課題になっている、と述べた。同氏は年末に
NEC委員長を退任する。 

 サマーズ氏は「歴史の舞台が中国に移ることに、世界がいかに調
整を施すか」が21世紀初めの歴史になるだろう、と語った。 

 中国人民銀行(中央銀行)の副総裁を務め、現在は国際通貨基金
(IMF)の特別顧問を務める朱民氏は、同カウンシルで、世界の
国内総生産(GDP)に中国や高成長を続ける新興国が占める割合
が大きくなる一方、先進国は引き続き、高水準の債務と低成長に直
面しているとし、米中両国間の緊張を浮き彫りにした。 

 朱氏は、最近の傾向から判断すれば、今後6年で新興国市場と発展
途上国が世界のGDPの60%を占めるようになるとし、「今とは異
なる世界になる」と述べた。 
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【社説】ソウルG20で赤っ恥
米、世界の経済サミットで総スカン
2010年 11月 14日 9:03 JST 
WSJ
 これほど、米国の大統領と財務長官が世界の経済サミットで総ス
カンを食った例がかつてあっただろうか。ソウルで開かれた今回の
20カ国・地域(G20)首脳会議のような例は一つも思い浮かばない。
オバマ大統領は、主要な目標を一つも達成できずに終わる一方、米
国の政策のつまずきと経済成長の遅れを各国首脳からたたかれる羽
目になった。 

 この不面目の根本原因は、政治面と知性面にある。オバマ大統領
とガイトナー財務長官は、強い立場から世界を引っ張るどころか、
ソウルにやって来て米国の経済不振を諸外国のせいにした。両氏の
見方では、米国の問題は、ドイツ、中国、ブラジルの輸出、為替政
策によるものであり、米国の解決策はといえば、ドル安になるくら
い連邦準備理事会(FRB)にドルを刷らせ、諸外国から需要を横取り
することで米国が成長できるようにするというものだ。 

 しかし、米国のこの繰り言に誰が耳を貸すだろう。ドイツは2009
年に、米国の大規模財政出動による景気刺激に足並みをそろえるよ
う求めたガイトナー財務長官の助言をはねつけて以降、急成長して
いる。中国もやはり、米国の3代の政権による為替改革要求をはねつ
けて、順調に成長している。英国や、フランスですら、一層の財政
引き締めに取り組んでいる。財政と通貨の両方の蛇口を大きく開き
っぱなしにする決意を固めているのはオバマ政権だけだ。その一方
で、国内の経済不振を諸外国のせいにしている。 
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人民元の将来像は―余永定・元中国人民銀行通貨政策委員
2010年11月14日0時4分

 中国が人民元を市場の実勢より安く据え置いて貿易黒字を稼いで
いることに、世界から批判が集まる。中国は人民元の将来像をどう
描いているのか。中国人民銀行(中央銀行)で通貨政策委員を務め
た余永定・中国社会科学院世界経済政治研究所教授に話をきいた。

 ――人民元の対ドル相場は今年、3%しか上昇していません。
2005年7月の改革以降でみても、18%の値上がりです。 

 「私自身は人民元をもっと切り上げる必要があると考えている。
その幅は経済情勢にもよるので、具体的な数値目標は言い難いが、
年2〜3%のような低い数字ではないことは確かだ。中国は切り上
げる速度をもっと上げたほうが良い」 

 「中国人民銀行は人民元を安く抑えるために、人民元を売ってド
ルを買う市場介入を続けている。その結果、外貨準備は増えるいっ
ぽうで、その多くは米国の国債だ。中国から米国へ資金を貸し付け
ているようなものだ。米国が金融緩和をして米ドルが値下がりした
ら、中国の外貨準備の価値も目減りしてしまった。中国政府は市場
介入の手をもっと緩めるべきだ。そうすれば人民元は値上がりする
だろうが、急激な変化でなければ中国企業も対応できる。貿易黒字
は人民元の切り上げだけでは減らないが、一定の効果はある」 

――中国政府は今年6月、金融危機から2年ほど据え置いていた人
民元相場の柔軟性を高める方針を打ち出しました。 

 「中国政府も人民元の為替相場を市場の動向に基づいてもっと柔
軟に動かすべきだし、貿易黒字はため込めばよいものではないとも
分かっている。それが自国のためだし、国際経済のためにもなる、
と。だから、改革は必ず進める。時間の問題だ。自主的に、じわじ
わと、制御可能な範囲でやる、と言っている」 

 「外部からの圧力をうけると、中国政府はやるべきことをやりに
くくなる。主導的に政策を調整しようとしているときに米国が表立
って圧力をかけると、逆にやりにくいのだ」 


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