3669.消費税増税外圧を鵜呑みする菅内閣の稚拙



■■消費税増税外圧を鵜呑みする菅内閣の稚拙?
    先ず3%成長の4年持続を達成せよ?

◆菅首相の「変節」◆菅首相は、7日に「早期に結論を得ることを
めざして、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開
始します。」とした参院選向けの民主党マニフェストを発表すると
ともに、記者会見で「税率については自民党が提案している10%
という数字を一つの参考にさせていただきたい」と述べ消費税増税
に向け舵を切った。 

財務相に就任当初の正月には、「逆立ちしても鼻血も出ないという
ほど、完全に無駄をなくしたと言えるところまできた時に(増税の)
議論を行って」と述べていたのと比べれば180度の変更、変節と
いえる。

事業仕分けで当初思っていたような無駄の削減が達成できていない
ことに加え、大馬鹿だと公言していた財務官僚に国会答弁で経済の
基礎知識を知らず右往左往したのを助けられ屈服したこと等がこの
変節の原因であろう。

また、8月期限で具体化させなければならない普天間米海兵隊基地
の辺野古移設から世論の目を逸らさせるつもりであったり、小沢前
幹事長の仕掛けるであろう政界再編の機先を制して自民党との大連
立の芽を作っておくこと等の計算もあるのかもしれない。 

だが、一番の原因はギリシャを発端とした各国財政危機問題と関連
付けられ、日本の巨額財政赤字が26日からカナダ・トロントで開
かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)で、槍
玉に挙がることを恐れたようだ。初の国際会議で、華々しいデビュ
ーが出来ないことに首相の高いプライドが許さなかったのだろう。

 既に国際通貨基金(IMF)が5月、「日本政府は2011年度に
財政再建を開始し、消費税を徐々に引き上げる必要がある」との声
明を発表したほか、フィナンシャル・タイムス等の海外メディアか
らは、日本が消費税率を早急に上げるべしといった論調が目立ち始
めている。日本の巨額債務が、望ましいことではないのはその通り
であるが、日本には日本の事情がある。 

◆増税前にすべきこと◆先ず、日本の経済構造は依然脆弱である。
名目3%の経済成長を達成し4年間は持続させて見せて、リーマン
ショックからの今年度の立ち直り効果等だけでない、しっかりした
経済構造を確立しそれを証明する必要がある。

18日に閣議決定された『新成長戦略?「元気な日本」復活のシナリ
オ?』は、医療・介護分野に重点が置かれ過ぎるきらいはあり、時系
列の優先順位が示されず戦略性が弱いが、アイデアのインデックス
としては悪くない。

これを戦略性に基づいた指導力で実行して行けば、3%成長の4年
間継続は、決して不可能な数字ではない。 次に、事業仕分けは未だ
本格的に総額200兆円といわれる特別会計に切り込んでいない。
また、国会議員定数削減と国家公務員賃金削減も手付かずである。

これらは、地方自治の原則はあるが、何らかの仕組みによって実質
的に地方にも広げて実施すべきであろう。例えば米国では、基礎自
治体の議員は定員も少なくボランティアに近い報酬である。日本の
公務員賃金は地方を含め32兆円と言われる。

欧米と比べると、公務員の賃金水準は高く逆に公務員数は少ないと
言われる。例えば、公務員賃金を3割減とし逆に員数を1割増やす
ことも考えられる。

特別会計も年金会計を含んだり、公務員に自衛隊や警察官を含んだ
りとかの事情は当然考慮しなければならないが、「仕分け」をした
上で削減を進める必要がある。 

加えて、国と地方を合わせて1000兆円に届くといわれる債務の
一方、少なくとも数百兆円の資産があるといわれている。これを処
分しての債務との相殺も進めるべきだ。 

◆主体性なくば国滅ぶ◆民主党マニフェストでは、「強い経済、強
い財政、強い社会保障、好循環のニッポン」と謳われているが、そ
の実行順序が明示されていない。観察するに、菅首相は経済ブレー
ンと言われる大阪大学教授小野善康・内閣参与の理論に影響され、
「増税しても適切な分野に財政支出すれば経済成長する」と繰り返
し述べているように恐らくは増税から始めるつもりでいる。

小野理論は誤りとは言い切れないが、現実的にはお金に色が付いて
いる訳ではないから、予算編成の過程で増税分の用途は財政赤字へ
の補填と混じり合い結局はトータルで緊縮財政になってしまうだろ
う。 

世界各国で、増税で経済成長した事例は少なくとも現代史の中には
ない。増税優先で進んだ場合、かつての「橋龍不況」を持ち出すま
でもなく足腰の脆弱な日本経済はほぼ確実に大不況に陥る。

 欧米からの増税圧力について、特に米国は自国の巨額赤字をファイ
ナンスするために日本に増税させた分で米国債を買わせようとして
いるという見方もある。多分これは当たっているのだろうが、日本
経済を潰しては元も子もなくなるのだから、悪意を持っての増税圧
力とまでとは言えない。

しかし、IMFも含め増税で日本経済が上手く行くと正確にシミュ
レートして忠告して来ている訳ではなく、その結果日本経済が破綻
しても責任を取る立場にない。要は、当然のことながら日本政府が
これらの「圧力」を咀嚼して、主体的な経済国家戦略を立てるべき
である。

 菅首相には、上述のように増税外圧や小野理論の鵜呑み、財務官僚
への急接近や「10%税率」を借用し、当の自民党から「おんぶお
化け」と言われたように少なくとも財政政策には主体性が全く感じ
られない。主体性がなければ、如何なる国も滅びの淵にある。

 筆者は、この紙面で菅首相および今回の消費税増税計画の実質的な
責任者である玄葉光一郎特命相兼民主党政調会長に、3%成長の4
年持続を、消費税増税のための最低条件として公約することを要求
する。 
                     以上

佐藤 鴻全
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消費税と所得税の増税で税収力回復し財政再建を−税調専門家委報告

 6月22日(ブルームバーグ):政府税制調査会(会長・野田佳彦
財務相)の専門家委員会(委員長・神野直彦東大名誉教授)は22日
午前、中間報告を税調に提出した。日本の財政悪化を回避するため
「税収力の回復」は急務とし、消費税引き上げと所得税の累進性の
見直しを「車の両輪」に税収の大幅増につながる抜本改革を進める
ことを求めている。同報告は今後の税制改革議論のベースとなる。

  報告では「現在の財政状況を放置すれば、欧州の一部で生じて
いるような市場を通じた国債の信認低下や金利の急激な状況を招き
、財政がさらに悪化する」とし、「相当程度の増収に結び付く」税
制の抜本的な改革が必要だと指摘。 

  消費税については、社会保障制度を支える安定的な財源確保を
前提に「高齢者の急増、勤労世代の減少という将来の見通しを踏ま
えると、勤労世代に偏って負担を求めるのは困難」とし、「社会で
広く分かち合う重要な税目」と位置づけ、現行5%の税率引き上げ
は不可避との認識を明確にした。引き上げの幅と時期は明記してな
い。 

  一方で、所得税については「累進構造を回復させる改革を行っ
て、税制の再配分機能を取り戻す必要がある」と明記し、現在40%
の所得税の最高税率引き上げも念頭に見直しの必要性を示唆。また
、再配分機能を発揮させる方策として、低所得者への給付付き税額
控除を活用すべきとの意見もあった。 

  その上で、「消費税を重視する方向で国民により幅広く負担を
求める必要がある一方、再配分の観点から累進性のある所得税に一
定の役割を担わせる必要がある」とし、消費税と所得税を2本の柱
に増収を図るべきだとの考えを示した。 

  法人税率引き下げについては「税制を国際競争力の観点からさ
らに議論すべきとの意見と、税負担と国際競争力とを安易に結び付
けて議論すべきでないとの意見が両論あった」と述べるにとどめ、
「税率引き下げを行う場合、課税ベースの拡大と併せて実施すべき
」としている。 


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