3535.金融規制強化で米国・世界はどうなるか?



オバマ大統領が表明した新たな金融規制案は、1999年に成立した普
通銀行が投資銀行を兼務できるグラム・リーチ・プライリー法から
、再度、普通銀行が投資銀行を兼務できない大恐慌後の1933年に成
立したグラス・スティーガル法の精神に戻ることになる。

この政策を推進するボルガー元FRB議長は、グリーンスパン前議長の
運営を苦々しく見ていたし、サマーズ・ガイドナーの金融機関に迎
合した政策にも辟易していた。反対にガイドナー財務長官とサマー
ズNEC議長はボルカー氏をホワイトハウスから排除しようとしてい
た。          津田より

0.はじめに
米国経済の10−12月期は、前期に比べ年率換算で5.7%増加した。
2四半期連続のプラスで、03年7〜9月期以来、約6年ぶりの高成
長であり、本来なら株価は大幅上昇になるはずである。

しかし、オバマ米大統領が銀行が「大きすぎてつぶせない」状態と
なるのを防ぐため、金融規制を強化する姿勢を打ち出したことで、
29日のNY株は前日比53ドル13セント安の1万0067ドル33セントで取
引を終え、月間の下落率は3.46%と、ダウ平均が直近の安値圏にあ
った09年2月(11.72%)以来の株価になっている。

民主党エドワード・ケネディ上院議員が亡くなった後のマサチュー
セッツ州の補欠選挙で共和党に負けて、2010年11月の中間選挙に向
けて、オバマ大統領は国民迎合と思われる政策を形振り構わず、取
り始めたようである。

まず、中低所得者層の支援策を拡充すると発表し、大統領は「政府
は雇用創出に取り組んでいるが、今回の施策は中間層の負担軽減を
盛り込んだ」と説明した。

また、米政府は国防費などを除いた歳出の伸びを2011会計年度から
3年間凍結する方針を表明するとともに、教育や温暖化対策に関連
した技術開発などには今後も予算を重点配分する考えを示した。

財政支出ができないことで、中国とは違い、機動的な景気刺激策を
打てなくなる。3月には住宅ローン減税などの終了が確定した。ここ
でも今後の世界経済を牽引するのは米国ではなく、中国など新興国
であることが確定した。

オバマ大統領の一般教書演説でも外交の重要度が下がり、演説の3
分の2以上が国内経済であった。中間層の負担軽減と雇用の確保が
できないと11月の中間選挙で負けるために必死である。
この面では目標が同じである鳩山政権の政策と似てきている。

今回の金融規制強化は失業率が10%台に上昇する一方で、大手金
融機関の多くが息を吹き返し巨額のボーナスを支給していることに
有権者は憤慨しているが、その対応である。この発表前にも金融業
への10年で8兆円課税の提案があり、オバマ政権としては金融業と
対決していると言う姿勢が必要なのであろう。

しかし、米金融界は反対する姿勢を鮮明にしている。業界団体の金
融サービスフォーラムは「規制案は金融危機の原因を見誤っている
。(規制対象の)自己資金投資が危機を招いたのではない」との声
明を発表した。過剰な規制が収益力低下を招くとの危機感が強まっ
ている。

1.金融業の縮小
米国は現在GDPの50%程度を金融業と派生業務で生み出し、地道に働
く製造業は海外にシフトさせている。基軸通貨であるドルは実力以
上の価値を持つために、米国の労働コストは諸外国の労働コストに
比べて高くなっている。

最低賃金も7.25ドル(約665円)と日本と大体同レベルであるが、新
興国に比べて高く、工場は安い人件費を求めて中国やアジアにシフ
トした。この状況も現在の日本である。

しかし、日本は工場を残そうと努力しているが、米国は製造業から
金融・IT産業にシフトさせようと米国政府も努力して、空洞化を止
めなかったというより奨励した。現在、このため、製造業が少なく
なっている。金融業やIT企業の従業員数は非常に少なく、かつ世界
から集めているために、米国民の就業機会は少ない。

ボルガー・ルールは、現在の何でもできる金融業での儲けはリスク
を取り危険であるために、預貯金中心の普通銀行だけ政府保証して
リスクを取る投資銀行を分離することと、金融機関が大きすぎて潰
せない状態を避けるために、大きくしないことである。

このボルガー・ルールではリスクを取れないために金融業では儲け
られないことになり、米国のGDPを何で生み出すのかという疑問が
起こることになる。

日本の銀行は、預金と買出の金利差が利益になるが、その数千倍の
利益を米投資銀行は出している。この利益を少数の銀行員で分けて
いるために、貧富の差が拡大している。

金融業を縮小するなら、米国再生には製造業の復活しかないが、環
境エネルギー政策でも、積極的な政策が打てない。原子力発電所建
設でも日本企業に発注することになるし、高速鉄道でもフランス・
ドイツ・日本への発注となる。工場を国内に建てることという条件
はつくと思うが、部品類は日本からの取り寄せになる。アセンブリ
工程だけになる。

トヨタ自動車のリコールで分かったことは、米部品メーカの品質管
理はずさんであり、日本車を高品質にするには、米現地調達を見直
す必要があるということだ。米国でのもの作りは難しい。

2.米国再生はどうするのか?
ということで、米国の再生はドルを下落させて、新興国並みの水準
で製造業を再生させるしかない。この政策を取ることは、イコール
世界基軸通貨を止めると宣言して、中国やアラブ諸国が行うペッグ
制や為替操作をやめさせることである。

ドル下落は、しかし、世界的な通貨切り下げ競争になる可能性もあ
り、次の基軸通貨ができないと難しい。地域基軸通貨を定めて、そ
の複数通貨で決済することになるようだ。

どちらにしても、世界は混乱の渦の中に放り込まれることになる。
だんだん、世界も日本も時代の変わり目になり、大変革の時代にな
ってきたようである。

さあ、どうなりますか??
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1月のNY株、7カ月ぶり下落 3.4%安、金融規制案など重荷
 【ニューヨーク=山下茂行】1月最後の取引となった29日のニュ
ーヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均は前日比53ドル13セント
安の1万0067ドル33セントで取引を終えた。月間の下落率は3.46%
と、ダウ平均が直近の安値圏にあった09年2月(11.72%)以来の大
きさを記録した。中国など新興国の金融引き締め姿勢やオバマ米政
権による新たな金融規制案、ギリシャの財政問題など株価にとって
不安材料が相次ぎ浮上したことが響いた。
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米、実質5.7%成長 10〜12月年率、通年ではマイナス2.4% 
 【ワシントン=御調昌邦】米商務省が29日発表した2009年10〜12
月期の米実質国内総生産(GDP)速報値(季節調整済み)は、前
期に比べ年率換算で5.7%増加した。2四半期連続のプラスで、03年
7〜9月期以来、約6年ぶりの高成長。市場予測の平均(4.7%増程
度)も上回った。在庫投資だけで全体の成長率を3.39ポイント引き
上げた影響が大きい。個人消費や設備投資も増加したが、米経済は
依然として持続力に不透明感が残る。
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米政権「外交」後回し オバマ大統領が一般教書演説
 【ワシントン=弟子丸幸子】オバマ大統領の27日の一般教書演説
は、経済政策に比べると外交政策への言及が乏しく、内向きの印象
を否めなかった。11月に中間選挙を控えるなか、雇用情勢の悪化な
どを受けて大統領の支持率は低下しており、外交の重要度が下がり
始めたことをうかがわせた。テロ対策や核軍縮に関する発言は従来
方針の繰り返しにとどまり、核開発に意欲を見せるイランや北朝鮮
への批判も新味に欠ける内容だった。

 「3分の2は経済です」。演説に先立ちホワイトハウス高官はこ
う予告していた。実際、一般教書演説における外交・安全保障分野
への言及は全体の2割以下。就任直後から約15ポイント低下した支
持率の回復に照準を定めるオバマ政権は、外交政策を得点源とみな
さなかったようだ。(06:58) 
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米政権、教育や温暖化には重点 歳出増凍結を表明
 【ワシントン=御調昌邦】米政府は26日、国防費などを除いた歳
出の伸びを2011会計年度(10年10月〜11年9月)から3年間凍結す
る方針を正式に表明するとともに、教育や温暖化対策に関連した技
術開発などには今後も予算を重点配分する考えを示した。米行政管
理予算局(OMB)高官が同日、電話会見で明らかにした。米政府
は歳出を一律に抑制せず、重要度に応じて予算配分のメリハリを付
ける方針だ。
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米、子育て減税など拡充 オバマ大統領、中低所得層の支援策発表 
 【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領とバイデン副大統領は25
日、中低所得者層の支援策を拡充すると発表した。(1)年収11万5000
ドル(約1000万円)以下の子育て世帯への減税拡充(2)幼児の保育支
援へ新たに16億ドルを投入(3)退職に備えた貯蓄積み立て優遇制度の
導入――などが柱。27日に発表する一般教書に盛り込む。

 支持率低下に直面するオバマ政権の政策テコ入れの一環とみられ
る。大統領は「政府は雇用創出に取り組んでいるが、今回の施策は
中間層の負担軽減を盛り込んだ」と説明するコメントを発表したが
、対策にかかる財源や全体の規模などは明らかにしていない。
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米金融界、新規制案に反発 収益力低下を懸念
 【ニューヨーク=財満大介、ワシントン=御調昌邦】オバマ米大
統領が21日表明した新たな金融規制案について、米金融界が反対す
る姿勢を鮮明にしている。業界団体の金融サービスフォーラムは「
規制案は金融危機の原因を見誤っている。(規制対象の)自己資金
投資が危機を招いたのではない」との声明を発表。むしろ金融シス
テムへの影響が小さい形で破綻処理する枠組みを整えるべきだと訴
えた。過剰な規制が収益力低下を招くとの危機感が強まっている。

 大手投資銀行ゴールドマン・サックスのデビッド・ビニア最高財
務責任者(CFO)は21日、規制案について「金融機関がグローバ
ル化した世界では実行不可能だ」と強調。金融自由化からの路線転
換をけん制した。規制案が実現すれば金融機関は融資などを手がけ
る商業銀行部門と、証券引き受けや資産運用を行う投資銀行部門の
分離を迫られる可能性がある。ヘッジファンドや未公開株を手がけ
るファンドなどを抱える大手金融機関が事業の売却を迫られる事態
も予想される。(12:28) 
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米大統領が金融機関の新規制案を発表、金融機関に打撃
1月22日10時14分配信 ロイタ
 [ワシントン 21日 ロイター] オバマ米大統領は21日、
銀行が「大きすぎてつぶせない」状態となるのを防ぐため、金融規
制を強化する姿勢を打ち出した。
 発表された規制案は、銀行のトレーディングや拡大路線を制限す
る内容。
 マサチューセッツ州での上院補欠選挙での敗北を受け、オバマ政
権の米経済へのよりポピュリスト的なアプローチに沿っている。
 以下は新規制発表の政治的背景と、議会審議の展望。
 *失業率が10%台に上昇する一方で、大手金融機関の多くが息
を吹き返し巨額のボーナスを支給していることに有権者は憤慨。大
統領はこの怒りに対処しようとしている。
 *大統領は1週間前にも金融機関に対する金融危機責任料を提案。
 *大統領と民主党は、マサチューセッツ州での上院補欠選挙での
敗北が11月の中間選挙に悪影響を及ぼすことを懸念。ホワイトハ
ウスは昨年は医療保険改革に重点をおいていたが、経済問題にも真
剣に取り組んでいることを印象付けたい考え。
 *政権は過去数週間ウォール街への友好スタンスが目立ったが、
一部の支持者は金融業界とのもたれあいを批判。ガイトナー財務長
官とサマーズ米国家経済会議(NEC)委員長はウォール街の利益
を尊重しすぎるとの声もあり、今回の提案は政権をこうした批判か
ら遠ざけることに寄与する。
 *今回の発表にはボルカー経済再生諮問会議議長が同席。ボルカ
ー氏は2008年の大統領選挙ではオバマ氏の最重要アドバイザー
だったが、最近は友人に疎外感をもらしていた。
 *ボルカー氏は政権が6月に発表した広範囲の金融規制改革より
強力な規制を主張。特に、新たに統合された金融機関の多くが「大
きすぎてつぶせない」状態になりつつあることに懸念を表明してい
た。
 *今回の発表はボルカー氏が影響力を取り戻しつつあることを示
唆。大統領は、銀行によるヘッジファンドへの投資禁止やトレーデ
ィングの制限を「ボルカールール」と表現。
 *今回の提案は議会が検討している広範な改革案の一部とされる
見込み。下院は法案を可決し、上院では現在検討中。
 *大統領にとっては、共和党からの反ビジネスとの批判がリスク
となる。銀行が新提案阻止に向け強力なロビー活動を展開すること
は間違いない。発表を受け、21日に大手銀行の株価は軒並み下落
、米株市場全体とドルを押し下げた。
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米政権、金融機関と距離 金融新規制案 
 【ワシントン=大隅隆】オバマ大統領が21日発表した新たな金融
規制案は、金融機関経営の焦点となる事業分野や規模を抑制する枠
組みだ。オバマ政権は大手金融機関を対象とする金融危機責任税の
導入を発表したばかり。国民の批判が根強い金融機関と距離を置く
ことで求心力の再浮揚を図ろうとする思惑もにじんでいる。

 21日午後に会見した大統領経済諮問委員会(CEA)のグールズ
ビー委員は「倒産させられないほど金融機関が巨大化している問題
に対処するのが最大の狙いだ」と語った。公的資金の注入など納税
者による支援を見越して、大手金融機関が過剰なリスクを取ってま
で収益を拡大しようとする現状を是正するのが狙いとの考えだ。
 (17:41) 
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米上院補選で民主敗北 オバマ政権の医療保険改革、難航必至 
 【ワシントン=大石格】米オバマ政権下で初の上院選となるマサ
チューセッツ州の補欠選挙が19日、投開票された。医療保険改革を
進めた場合の財政支出の増大を批判した共和党候補のスコット・ブ
ラウン州議会議員(50)が無党派層などの支持を集め、初当選した。
民主党は上院で長時間演説による議事妨害を阻止でき、安定多数と
される60議席を割り込む。 

 医療保険改革の法案の審議など今後の議会運営は難航が必至だ。
オバマ政権は20日の発足1年を前に苦境に追い込まれた。 

 補選は昨年8月にエドワード・ケネディ上院議員が亡くなったの
に伴うもの。民主党は1997年以来、上下両院の全議席を独占してき
た同州での敗北に衝撃を受けている。昨年11月の2知事選でも敗北
しており、今年11月の中間選挙に向け、態勢立て直しが課題となる。
 (12:06)
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米、外資含む大手金融に特別税 10年で8兆円課金
 米ホワイトハウスは14日、金融システム安定に投じた公的資金の
損失を穴埋めするため、大手金融機関から特別税を徴収する方針を
明らかにした。資産規模にあわせ、外資系を含む約50の大手金融機
関に向こう10年で約900億ドル(約8兆2000億円)を課金する。業績
が急回復した大手金融機関は経営幹部に多額の賞与を支払う予定で
、納税者の不満を和らげるには金融界の負担増が不可避と判断した。

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