3459.ドル基軸通貨後の世界



 米国が世界最大の市場から脱落すると、ドルを基軸にする利便性
が大きく失われる。世界は米国に輸出するために、ドルを基軸とす
ることを承認し、かつ原油国は米国に投資することが一番有利な投
資先であったが、その市場より大きな市場が出来ると、その通貨を
持ち、その通貨とペッグすることになる。それは一重に自国経済の
利便性である。この今後の基軸通貨の動向を考えるときに、通貨の
利便性という観点が必要になっている。
               津田より

0.はじめに
 為替交換の主流の通貨は全取引200%とすると86%を占める
のがドルであり、次にユーロ38%、円とポンドが11%である。
断然、ドルの比率が高い。

それでは外為取引市場で大きいのはどこかというと、英国34%、
米国17%、日本6%である。英国は伝統的に中東の資金を預かり
運用している。英国の資金運用は外為の面では大きい。今はほとん
どをドルで運用しているが、今後、中東の王様の意向を忖度して運
用するはずであり、この英国と湾岸諸国の動向がキーになるのだ。

このため、2009年10月6日の英インディペンデント紙の記事、「アラ
ブ湾岸諸国が原油取引での米ドル利用中止に向け、ロシア・中国・
日本・フランスと極秘に協議している」で、金が1オンス1000
ドルを超えるほどの衝撃が走ったのだ。その裏には英国も居ること
は明白であると世界の人は思ったのである。

関係各国はインディペンデント紙の情報を否定しているが、2010年
から湾岸共通通貨を始め、ドルとのペッグ制を止めるとしていた。
しかし、イランとの戦争をイスラエルが行うとこの地域を守れるの
は米国しかいない。もし、ドルとのペッグを止めると米軍を派遣し
ないという脅しを使い、この湾岸共通通貨を延期させている。

しかし、ドル下落を象徴するように、金の価格は現在1オンスが
1100ドル弱にまで値上がりしている。現時点も世界の市場関係
者は否定できないと見ているようだ。

そして、サウジの海外資産が減少していることも湾岸諸国はイラだ
っている。そして、ニューヨーク市場の原油取引であるテキサス州
の原油先物取引WTIが原油取引の標準価格であったが、とうとう、
サウジアラビアは、サウジ原油の取引価格を英国企業アーガス社の
指標を使うことにして、標準価格を決めることにしている。これも
指標のドル離れであり、その内、標準価格がユーロと円で表される
ことになる可能性もある。

これらは、どうも湾岸共通通貨への移行を本格化させている準備で
あろうと思われる。そして、共通通貨でドルからの離脱になる。

なぜ、極秘協議を否定するかというと、ドルが暴落するとサウジな
ど湾岸諸国の海外資産価値が下がり、損をするためである。現時点
、徐々にドル資産からユーロ資産などに移行している。

そして、米国もイスラエルはイランを攻撃するという物語を語る必
要があるために、イランの核問題を大きくしている。イランもその
米国の物語に乗っている。原油価格の高止まりさせるために必要で
あるからだ。サウジはイランや仲介のロシアと協議をしている。

どちらにしても、ドル基軸通貨制度は、近々大きな曲がり角に立つ
ことになる。

1.中国・米国の動向
中国の人民元もドルに事実上リンクしているが、東南アジア諸国か
らのクレームと国内のインフレなどから、為替管理を緩める必要が
ある。中国近傍諸国の通貨は人民元との関係が強い。しかし、人民
元がドルとリンクして下落するために、自国通貨も下落させる必要
がある。

しかし、中国においても貿易に占めるアジア諸国の比重が大きいた
め、安定した関係を東アジア全体で構築する方向であり、中国のよ
うな影響力が大きい国の通貨が安定しないとアジア全体の安定に繋
がらない。国内問題と東アジア諸国との関係から中国は、そろそろ
ドルとのリンクを緩和して切り上げ方向にシフトするはずである。

もう1つが、米国からの事情である。米国がドルを切り下げても、
人民元も切り下がるために中国からの輸入品が増加の傾向にある。
また、失業率が10%になり、今後国内の雇用を創造しないとオバ
マ大統領も窮地に陥る。このため、人民元とのリンクを切る選択を
せざるを得ない状況になる。

米国債はFRBが買い取ることで、長期金利を下げ、ドル下落に持って
いき、輸出を活性化することと輸入品から国内産に需要をシフトし
て、世界全体の貿易の不均衡是正をする必要がある。反対に中国も
外需から内需にシフトして世界の市場になることが必要になってい
る。このため、人民元の切り上げを必要としている。しかし、為替
レートを上げるので、繊維製品や縫製などの軽工業は、より人件費
が安い国にシフトすることになる。中国は構造改革が待ったなしの
状態になる。

しかし、世界市場から見ると正常になり、徐々に中国からベトナム
、タイ、バングラディッシュ、インドネシアなどに繊維産業などが
シフトしていくことになる。世界の労働市場の平準化が加速するこ
とになる。東アジア全体の経済成長が加速することになる。収入が
増えた次の新興国の人たちがAV機器や自動車を買い始めて、その
ため、インフラなどの建設が必要になる。大きな市場ができる。

2010年には、中国から東アジア全体の経済成長で、日本もその
成長の余波による安定した経済になることを期待したい。

3.ドル後の世界
 ユーロ、ドル、アジア通貨、湾岸共通通貨などの並列した状態が
10年から30年程度続いた後、世界経済での一番大きな市場の通
貨が基軸通貨になると見る。

その時代、一番大きな市場は東アジアになっているので、当然のこ
ととして、東アジアの通貨が基軸通貨になっているはずである。

しかし、このためには日本と中国、ASEAN諸国が一体とした経
済が確立していて、アジア共通通貨ができていることが必要になる
が、そのようなことになるためには、多くの問題を抱える。

そして、世界が中国や東アジアの民主化に注目するようになる。安
定した経済は民主化した国ではないと、突然の異変があるために危
ないと見ていることによる。日本も民主化していない中国と連盟を
組めない。

4.中国の民主化、少数民族の解放
このように中国の民主化が必要であり、ミャンマーやブルネイなど
の独裁国家も民主化している必要がある。この民主化は経済発展で
可能になるが、中国の民主化には少なくても20年以上の時間と少
数民族問題が横たわる。この解決には日本が朝鮮や台湾を手放した
ことで経済発展した事実が重要になると見ている。

どういうことかというと、植民地経営は金が必要であり、その金を
国内産業に回した方が得であるという意識が必要である。この意識
が中国で起こるかどうか非常に不安な状態である。逆に言えば、中
国にその意識を植え付けるために、ウイグルなどがイスラム教の支
援を受けて、どのくらい抵抗できるかという問題にもなる。

テロ対策に金が掛かるより、少数民族を独立させた方が得と言う状
態にすることが必要なのかもしれない。このためにも米国は、アフ
ガン戦争を早期に終結して、イスラム勢力と合同で中国ウイグル対
応にCIAやMI6を向けるべきだと見ている。この活動により、
中国の民主化は早まると見ている。

その民主化と少数民族問題が解決した時点で、ミャンマーやブルネ
イなどの独裁国も民主化せざるを得ないことになる。中国の支援が
なくなると、孤立しては生きられないことによる。

5.さいごに
 東アジアの経済発展は、日本が米国からの貿易摩擦解消として工
場を台湾に移転したことから始まっている。そして、東アジアの経
済発展で、日本の役割は大きく変化してきた。その時代時代で日本
の産業は大きな変化という構造変化を受けてきている。

このため、日本はいつも前時代の産業が苦しいことになる。その人
の移動を時代時代で行う必要があり、また政治も変化する必要があ
る。このように変化する時代の流れを読むことが必要である。

このコラムでは次の時代を読んできた。

さあ、次の時代はどうなりますか??
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10月の米失業率10.2%に悪化 26年半ぶり高水準、雇用19万人減 
 【ワシントン=御調昌邦】米労働省が6日発表した10月の雇用統
計(季節調整済み)によると、失業率(軍人を除く)は10.2%とな
った。前月に比べて0.4ポイント上昇し、1983年4月以来26年半ぶり
の水準となった。非農業部門の雇用者数は19万人減少した。前月の
改定値(21万9000人減)より減少幅が小さくなったものの、失業者
の増加は依然として止まっていない。10月の失業率は市場予測の平
均(9.9%)よりも大幅に悪かった。失業者数は1570万人に達し、失
業期間も長期化する傾向にある。

 雇用者数の減少幅も予測(17万5000人)より大きかった。2007年
12月からの雇用者数の減少は22カ月連続で、この間に730万人の雇用
を失った。業種別にみると、建設業で雇用者数が6万2000人減少し
たのが目立った。このほか製造業や小売業でもマイナスが続いた。
一方、教育・医療分野では雇用者が増加した。 (01:52) 
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米、雇用増へ追加対策 大統領検討、輸出促進や法人減税
 【ワシントン=御調昌邦】オバマ米大統領は6日、ホワイトハウ
スで声明を読み上げ、製造業の輸出促進や法人税減税などを柱とす
る追加対策の検討に着手したことを明らかにした。同日発表の10月
の雇用統計で失業率が10%の大台を突破したことについて「今後も
経済的な試練に直面することを示している」と指摘。米経済は最悪
期を脱したものの、雇用情勢の改善の遅れが景気腰折れや支持率低
下を招きかねないと判断して雇用対策に全力を挙げる方針を固めた。

 米労働省が同日発表した10月の失業率は10.2%と、26年半ぶりの
水準まで悪化。米政府はこれまでの景気対策で「100万の雇用を創出
・維持した」と主張するが、失業者の増加に追いついていないのが
実情だ。追加策は政府の財政負担増につながりかねず、中国との貿
易摩擦が取りざたされる中での輸出促進策は海外から批判を受ける
懸念があることも踏まえたうえで決断したとみられる。(12:26) 
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サウジがWTI(米国向け原油価格基準)の使用中止
更新2009年10月29日 10:56米国東部時間

 エネルギー相場の査定を手掛ける英アーガス・メディア(本社ロ
ンドン)は28日、サウジアラビア国営のサウジアラムコが、米国向
けの原油販売価格を決める基準として米国産標準油種(WTI)を使う
のを止め、来年1月からアーガス社の指標に切り替えると発表した。

 アラムコは1994年以来、WTIを基準価格として使っているが、投
機資金の影響で乱高下するなど、実際の原油需給を反映していない
として、サウジ政府や顧客である米大手石油会社に不満が強まって
いた。世界で最も有力な原油価格とされるWTIの影響力が低下しそう
だ。

 WTIはテキサス州を中心に生産される原油から算出。アーガス社は
生産増が見込まれるメキシコ湾岸の原油から指標を出しており「ア
ラムコの動きはアーガスの原油価格の査定方法が正しいことを示す
ものだ」としている。(共同)
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アラブ諸国、原油取引での通貨バスケット建て移行を協議=英紙
10月6日11時57分配信 ロイター

 [シドニー 6日 ロイター] 英インディペンデント紙(電子
版)は6日、アラブ湾岸諸国が原油取引での米ドル利用を中止し、
通貨バスケット建て取引移行に向け、ロシア・中国・日本・フラン
スなどと極秘に協議していると報じた。
 ロバート・フィスク中東特派員によるこの記事を受け、ドル相場
は軟化した。
 同紙がアラブ諸国の関係筋および香港にいる中国の銀行関係者の
情報として伝えたところによると、通貨バスケットは、円・人民元
・ユーロ・金のほか、サウジアラビア、アブダビ、クウェート、カ
タールなど湾岸協力会議(GCC)関係国が計画している統一通貨
などで構成される。
 記事は「ロシア、中国、日本、ブラジルの財務相と中央銀行総裁
らがすでにスキームについて極秘の協議を行っており、原油取引は
今後、ドル建てにならないことを意味する」と指摘。また、この協
議にはフランスも関与しているとされる。
 同紙によると、米当局はこの協議が行われたことを認識している
が詳細を把握しておらず、「この国際的な陰謀には対処する」姿勢
を示しているという。
 ドル建ての原油取引を止めるとの観測はここ数年、度々浮上して
いるが、専門家の間では直ちにそうなる可能性は低いとの見方が有
力だ。
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サウジ:石油決済通貨はドル、変更協議していない−報道否定
(Update1

10月6日(ブルームバーグ):サウジアラビア通貨庁(SAMA、
中央銀行に相当)のジャーセル長官は6日、同国は他の産油国とも
中国などの大手消費国とも、石油取引の決済通貨をドルから変更す
ることについて協議していないと述べ、英紙インディペンデントの
報道を否定した。 

 同長官はトルコのイスタンブールで記者団に語った。インディペ
ンデント紙は同日、湾岸産油国が中国とブラジルを含む消費国と、
石油取引の決済通貨としてドルの役割を徐々に低下させることにつ
いて秘密裏の協議を持ったと報じていた。 

 ジャーセル長官はこの報道について、「全く正しくない」とし、
サウジアラビアと諸外国との間にそのような協議は「全くなかった
」と述べた。 

 同長官の発言を受けてドルは下げ幅を縮め、ロンドン時間午前7
時52分(日本時間午後3時52分)現在、対ユーロで1ユーロ=1.4713
ドル。インディペンデントの報道を受けて一時は1.4749ドルまで弱
含んでいた。ニューヨーク5日は1.4648ドル。対円では1ドル=89
円34銭(前日は89円53銭)。一時は88円86銭まで下げていた。 

 インディペンデント紙は湾岸諸国の複数の当局者および中国のバ
ンカーの話として、ロシアと中国、日本、ブラジル政府の閣僚と中
銀当局者が、2018年までに導入予定の決済通貨変更計画に向けて会
合を持ったと報じていた。 

 日本の藤井裕久財務相は6日、東京での記者会見で報道について
尋ねられ、何も承知していないと述べた。 

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