3440.ドル基軸通貨の問題点



ドル下落はEUもアジアもショウガナイと思うが、問題が浮かび上
がっている。それを検討する。      Fより

09年度米財政赤字は130兆円となり、米国債の発行が急増すると米国
債は世界が買い手であるが、量が増えることで下落(金利上昇)す
ることが予想できるし、それがドル安になっている。

このため、世界の中央銀行が外貨準備に占めるドルの比率を62%
に下落させている。一番ドルを買っている中国がドル資産から金に
外貨準備を切り替えている。その上に、湾岸諸国が原油のドル立て
取引の中止を検討しているとの報道を受け、金が1オンス1060
ドルにもなっている。

バーナンキFRB議長はドルの信認維持には、政府が財政赤字を制
御できるかにかかってくるとし、持続可能性への道筋を伴う財政面
での出口戦略を策定する必要があると述べている。

この主張をサポートするのが、YSさんがお好きなケネス・ロゴフ
ハーバード大学教授たちで、歴史は繰り返すとすれば、今回の大不
況の終焉はまだ訪れていない。過去、世界経済は幾度となく金融危
機に見舞われたが、多くの場合、危機発生の2〜3年後あたりから、
国債の債務不履行の大波に襲われてきたという。

多くの国で金融危機後の3年間で財政赤字が3倍に膨れ上がっていた。
周知のとおり、主要国の多くが今、そのコースを辿っている。債務
が膨らみ、不況が長引き、その後各地で高インフレや金融逼迫が同
時多発した過去と今回だけは絶対に違うと、誰がどうして言い切れ
るだろうか。しかも、出口戦略への移行は、言うは易く行うは難し
い。

このように米国や日本など世界の多くの国で中央銀行の金融緩和や
政府の大量の国債が発行されて、通貨量の増大によるインフレや国
債償還ができない事態になっている。この出口戦略が重要であるが
、現時点で出口戦略はできない。日本はこの20年近く経済低迷の
中にいるために、国債の累積額は、800兆円以上にもなっている。

米国も同様にFRBの金融緩和策と政府の景気刺激策で大量のドル
札が市中に出回り、通貨量が平常の2倍以上に膨れている。

このため、ドルは世界の主要な通貨に対して大幅な下落になってい
るが、ドルにリンクさせている中国の人民元もドルに歩調を合わせ
て下落している。中国は米国とは違い、輸出大国であり、この中国
と輸出競争している国家は多い。たとえば、EU、韓国、タイ、台
湾、ベトナムなどである。しかし、これらの諸国の製品は米国製品
とは競合していない。

そして、中国以外の国の通貨はドルにリンクしていないために、大
幅な対ドルで高くなっている。しかも、中国は人民元安を利用して
輸出攻勢を掛けている。中国の7−9月は実質8.9%成長になり、公
共事業の部分も大きいが、輸出の復活も大きくなっている。

このため、EUは中国からの輸入が急増している。その原因は人民
元安で中国製品の価格が低下していることによる。

人民元安を受けて、韓国、台湾、タイなどはドルの買い介入を繰り
返して、通貨防衛することになる。しかし、この対象はドルではな
くて、あくまでも人民元である。人民元は国際的に流通させていな
いために、介入できないのである。

一方、人民銀行馬副総裁は、米ドル安が人民元安になり、中国への
輸入品のインフレリスクを高めており、人民元の上昇期待にもつな
がると述べた。このように人民元を緩やかに上昇させる政策を再び
実施する可能性が高い。ドルへのリンクが中国でも問題視され始め
ている。

東アジアでの圏内貿易が大きくなっているので、東アジア共同体に
向けたFTAや将来的に人民元と円などのバスケット制にしたAC
Uとのリンクすることとして、当面少なくとも、人民元をドル・リ
ンクから離脱して、ユーロや円とのリンクにしてもらうようにAS
EAN諸国は、ASEAN+3の会議で中国に要求するべきである。

最終的にはACUとユーロ、ドルのバスケット制のSDRにして、
それを基軸通貨的な位置づけにすることが必要である。

ドルの不安定性、特にドル・リンクした通貨とそれ以外の通貨で、
バランスを欠いた状態になる。これは世界経済にも地域経済にとっ
ても大きなマイナス影響を受ける。よって、米国の消費減退により
ドルを中心とした世界経済体制は早く中止した方がよいと見る。

さあ、どうなりますか??
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財政の出口戦略、米経済・ドルの信認維持に非常に重要=FRB議長

[サンタバーバラ(米カリフォルニア州) 19日 ロイター]米
連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は19日、ドルや国内
経済の動向は政府が財政赤字を制御できるかにかかってくるとの見
方を示した。
議長はサンフランシスコ地区連銀主催の会議で講演した後、質疑応
答で「持続可能性への道筋を伴う財政面での出口戦略を策定する必
要があることを当局者は認識している」と述べた。

「われわれの経済や通貨への信認を維持する上でこれは極めて重要
だ。ワシントンでも非常によく理解されている」と付け加えた。
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米財政赤字、130兆円 09年度、景気対策で歳出増
 【ワシントン=御調昌邦】米政府は16日、2009会計年度(08年10
月〜09年9月)の財政赤字が1兆4171億ドル(約130兆円)になった
と発表した。赤字幅は前年度の約3.1倍に膨らみ、年間で初めて1兆
ドルの大台を突破した。国内総生産(GDP)比でみると10%に達
し、第2次世界大戦が終わった1945年以降で最大となった。大規模
な景気対策の実施に加え、米景気の低迷を受け歳入が落ち込んだこ
とが背景だ。
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金価格が高騰、「原油取引決済のドル離れ」報道によるドル安の影
響か
2009年10月07日 12:23 発信地:ロンドン/英国

【10月7日 AFP】湾岸諸国が原油のドル立て取引の中止を検討してい
るとの報道を受け、ドルが下落している中、金価格が高騰している。

 6日のニューヨーク・マーカンタイル取引所では、1オンス=1045
ドルをつけたほか、この数時間前に取引を開始しているロンドン市
場でも1オンス=1043.78ドルをつけ、2008年3月に記録した過去最高
値を更新した。

 英バークレイズ・キャピタル(Barclays Capital)の貴金属市場
アナリスト、スキ・クーパー(Suki Cooper)氏は、ドル安の背景に
は、原油価格を、金を含めたドル以外の通貨バスケットで決済する
案が秘密裏に検討されているとの報道があると指摘する。

 英インディペンデント(Independent)紙は6日、アラブ諸国が中
国やロシア、日本、フランスとともに、原油取引のドル建て決済を
止めることを極秘に検討し始めたと報じ、基軸通貨としてのドルの
将来に対して疑問を投げかけた。

 同紙の中東特派員、ロバート・フィスク(Robert Fisk)氏は、
ドルの代わりに決済に用いられるのは、「円や元、ユーロ、金価格
、湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council、GCC)の新統一通貨を
含めた通貨バスケット」としている。

 なお、この報道をめぐっては、クウェートやカタール政府が否定
するコメントを発表しているほか、その他の国々も否定していると
いう。(c)AFP
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中国、実質8.9%成長に 公共投資が支え 
 【北京=高橋哲史】中国国家統計局は22日、7〜9月期の国内総
生産(GDP)が実質で前年同期に比べて8.9%増えたと発表した。
4〜6月期の7.9%から伸び率が拡大した。四半期ベースの成長率が
前期を上回ったのは2期連続。大規模な公共投資を柱とする4兆元
(約53兆円)の景気刺激策や金融緩和の効果で、中国経済は回復傾
向が鮮明になりつつある。 

 1〜9月の成長率は前年同期比で7.7%だった。中国政府が掲げる
2009年通年で8%成長を実現する目標の達成が視野に入ってきた。 

 中国のGDPは世界的な金融・経済危機の影響で08年秋から急減
速。今年1〜3月期には四半期ベースの統計をさかのぼれる1992年
以降で最も低い6.1%まで落ち込んだが、その後は次第に回復傾向が
鮮明になってきた。 (11:01)
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ドル安は中国のインフレリスクを高める=人民銀行副総裁(ロイター)

北京 20日 ロイター]中国人民銀行の馬徳倫・副総裁は20日
、米ドル安が中国のインフレリスクを高めており、人民元の上昇期
待にもつながると述べた。河南省で開かれた金融に関する会合で語
った。同副総裁の講演原稿がウェブサイトに掲載され、明らかにな
った。
副総裁は「米ドル相場が下落するという環境では、資本流入が加速
する可能性があり、その結果、国内の過剰流動性圧力が高まり、イ
ンフレリスクが上昇する」と指摘した。また「中国の輸出が安定し
始めるなか、貿易黒字は高水準にとどまる」と語った。

1年物のドル/人民元のノン・デリバラブル・フォワード(NDF
)は20日、1年2カ月ぶり低水準をつけ、今後1年に人民元が
4.55%上昇するとの観測を織り込む水準となった。

「ドル安は人民元の上昇観測を高め、国際的な資本フローを再び中
国に向かわせる。これら全ては金融政策にとり大きな課題となる」
との見方を示した。
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中国、出口戦略の一環で人民元の緩やかな上昇容認へ=エコノミス
ト(ロイター)

[北京 19日 ロイター]中国政府直属のシンクタンク、国務院
発展研究センターのエコノミストは、中国が出口戦略の一環として
、人民元を緩やかに上昇させる政策を再び実施する可能性が高いと
の見方を示した。
中国当局は、2005年7月に人民元を対ドルで2.1%切り上げ
てから、2008年半ばまで、人民元の上昇を容認しており、その
間人民元はドルに対して20%上昇した。

ただ、2008年半ばに金融危機が発生してからは、国内輸出業者
を支援するため、人民元の対米ドル相場を6.83元近辺で維持さ
せている。
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東アジア広域FTAのGDP押し上げ効果、専門家が研究報告

 【フアヒン(タイ中部)=岩本陽一】東アジア首脳会議(サミッ
ト)を構成する16カ国などの要請で東アジア広域自由貿易協定(F
TA)を研究してきた民間専門家グループによる報告書の原案が22
日、明らかになった。域内国内総生産(GDP)の押し上げ効果は
東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)13カ国が1%
強、インドなども加えた16カ国は2%強と試算。経済効果は16カ国
が上回るものの関係国が増えると調整が難航するため、13カ国で交
渉を始めるべきだとの意見も根強い。枠組み確定にはなお時間がか
かりそうだ。

 研究報告は各国政府の要請で民間専門家が作成。早稲田大学大学
院の浦田秀次郎教授ら約50人が参加した。24日のASEANプラス
3首脳会議、25日の東アジアサミットに提出される。広域FTA構
想は今年8月に政府間協議に格上げする方針が決まり、焦点は交渉
の枠組みに移っている。(07:00) 
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既に秒読みが始まった「次の危機」(英ファイナンシャル・タイムズ)

【ダウ平均の1万ドル台回復を待つまでもなく、世界の株式市場は
バブルの様相を呈していた】〔AFPBB News〕

我々は何も、ダウ工業株30種平均株価の1万ドル台回復まで待つ必要
などなかった。世界の株式市場が再びバブル化していることは、少し
前から明らかだったのだから。

 表面的には、今の状況は2003年や2004年に似ている。低い名目金
利や物価の落ち着きも手伝って、住宅、信用、コモディティー(商
品)、株式市場でバブルが膨らみ始めたあの頃だ。

 ただ、当時と今とでは大きく異なる点が1つある。今回のバブルは
早々に弾ける、という点だ。

 足元の相場がバブルだと、どうして分かるのだろうか。筆者は、
株式市場が割高かどうかを判定する指標として、「景気循環調整後
株価収益率(CAPE)」と「Qレシオ」を愛用している。

 CAPEは、エール大学で経済学とファイナンスを教えているロバー
ト・シラー教授が考案した指標で、物価変動を調整した後のPER(株
価収益率)の10年移動平均値である。株式時価総額を純資産で除し
て得るQレシオは、経済学者のジェームズ・トービン氏が提唱した概
念で、アンドリュー・スミザーズ氏がQレシオに関するデータを収集
している*1。

 CAPEとQレシオは全く別のものを測る指標だ。だが、市場の値づけ
が相対的に高すぎる(あるいは低すぎる)のではないかという問い
には、大抵同じ答えを出す。

【9月半ば時点で、米国株は35〜40%割高だった】

 例えば今年9月半ばには、どちらの指標も米国の株式市場が35〜40
%割高だと示唆していた。株価はその後、企業利益の移動平均をは
るかに上回るペースで上昇しているから、現在がどういう状況であ
るかは誰にでも計算できるだろう。

 バブルが再来した理由はただ1つ、名目金利が極めて低いことにあ
る。人々はこの金利の低さに促され、あらゆる種類のリスク資産に
資金を投じているのだ。住宅価格でさえ、再び上昇し始めている。

 住宅市場が割高か割安かを判断するには、家賃に対する住宅価格
比率や所得に対する住宅価格比率などの指標が頼りになるが、米国
の住宅価格は今回の危機下で、両指標の長期平均から見て適正と言
える水準には一度として下落していない。

 ただ、5年前と違うのは、中央銀行が物価の安定と金融システムの
安定という2つの目標を背負っていることである。既に何度も指摘さ
れているように、この2つの目標はすぐに相反する危険性を孕んでい
る。
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米国の大物経済学者が警鐘!
「世界経済危機の第二波が近づいている」  
ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授に聞く
http://diamond.jp/series/dol_report/10022/
DOL特別レポート  2009年10月22日

金融危機後の経済運営に苦慮する欧米の政策担当者の間で今、ある
本が注目を集めている。800年に及ぶ経済危機の歴史と教訓を探った
「THIS TIME IS DIFFERENT:Eight Centuries of Financial Folly」
(プリンストン大学刊)がそれだ。
著者は、国際通貨基金(IMF)元チーフエコノミストのケネス・
ロゴフ・ハーバード大学教授とカーマン・ラインハート・メリーラ
ンド大学教授。
メインタイトルを直訳すれば、「今回は違う」だが、実際の主張は
真逆だ。世界は、言うなれば「今回は違うシンドローム」に囚われ
、同じ過ちを繰り返してきたという。その診断が正しければ、今回
も危機の第二波が近づいている。
ソブリンデフォルト、すなわち政府債務の不履行の津波だ。欧米の
経済政策論議に大きな影響力を持つロゴフ教授に、世界経済そして
日本経済の行く末を聞いた
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン副編集長、麻生祐司)。

 率直に言って、世界経済の先行きを楽観するのは、間違いだ。

 歴史は繰り返すとすれば、今回の大不況の終焉はまだ訪れていな
い。過去、世界経済は幾度となく金融危機に見舞われたが、多くの
場合、危機発生の2〜3年後あたりから、ソブリンデフォルト(政府
債務不履行)の大波に襲われてきた。

 1930年代の大恐慌の後には、1950年代初めまで世界各地で対外債
務、対内債務のデフォルトがずるずると続いた。
カーマン(ラインハート・メリーランド大学教授)と私の共同研究
では、この間、実に世界の半分近くの国が政府債務の不履行もしく
はリスケジューリング(債務返済繰り延べ)に追い込まれたことが
分かっている。
1980年代初頭のコモディティ相場の崩落もその後、ラテンアメリカ
諸国を中心とするデフォルトの増加につながった。古くは、ナポレ
オン戦争後の19世紀初頭の混乱期にも、多くの国がデフォルトして
いる。

 カーマンとは、欧州、北米・南米、アジア、アフリカ、オセアニ
アの66カ国の数世紀に及ぶデータを精査したが、多くの国で金融危
機後の3年間で財政赤字が3倍に膨れ上がっていた。周知のとおり、
主要国の多くが今、そのコースを辿っている。
債務が膨らみ、不況が長引き、その後各地で高インフレや金融逼迫
が同時多発した過去と今回だけは絶対に違うと、誰がどうして言い
切れるだろうか。

―しかし、たとえば第二次大戦につながった大恐慌時に比べれば、
世界経済のガバナンス体制は遥かに進化しているのではないか。主
要新興国を含めたG20への対話拡大はその一例であるように思わ
れる。財政・金融政策面での緊急対策を解除する、いわゆる出口戦
略への移行タイミングを主要国が見誤らなければ、第二の危機は避
けられるのではないか。

 誰もが「今回は違う」と願いたい。だが、目の前の現実は、生易
しくない。
たとえば、米国の最近の債務残高増加ペースは過去に比べて、2倍の
ペースで突き進んでいる(今年9月までの2009年会計年度の財政赤字
は、前年度比3倍超の1兆4171億ドルという史上最悪の水準にまで膨
れ上がった)。
また、大規模な財政出動をしていない国も、不況に伴う歳入落ち込
みが原因で財政赤字が膨らんでいる。

 しかも、出口戦略への移行は、言うは易く行うは難しい。
過去のデータを調べて分かったことだが、失業率や一人当たり所得
が危機前の水準に戻るまでには、2年どころか、4年の歳月が必要だ
。多くの国で失業率は少なくとも今後6〜9カ月は上がり続ける可能
性が高い。さらなる景気対策を迫られる国も多く出てくることだろう。

―先進国のデフォルトも心配すべきだというのか。

 もちろん、最初に懸念すべきは新興国だが、大国も長期的には心
配だ。5年〜10年先には、ドイツや米国、英国の債務問題は間違いな
くさらに深刻化している。

 そもそも、これらの大国も、通貨価値の引き下げなどを通じて、
事実上のデフォルトに追い込まれた過去を持つ。
たとえば、米国は1933年に、ドルの価値を金1オンス当たり21ドルか
ら同35ドルに引き下げた。1970年代にも高インフレによって債務負
担を圧縮している。
政府はデフォルトではないというだろうが、一方的に通貨価値を下
げることは、債権者からみれば、債務の不履行に等しい。

 ちなみに、日本も過去に何度かデフォルトしている。著書でそう
言及したところ、ある日本政府高官から「日本はデフォルトしてい
ない」と訂正を求められたが、データを示したら納得してくれた(
たとえば、1946年、預貯金はいったん封鎖され、封鎖預金からの払
い戻しは新円で、限度は世帯員1人について100円とされた)。

 デフォルトというと、対外債務ばかりを想像しがちだが、対内債
務のこの種のデフォルトまで含めて考えれば、大国の債務不履行は
あり得ないとは断言できない。

―ところで、先ほど、債務危機が今後懸念される国に日本を含めな
かったが、OECDによれば、日本政府の粗債務残高は2010年に
GDP比で200%、純債務でも同100%にまで悪化する見通しだ。
1400兆円の個人金融資産があるとはいえ、少子高齢化が急速に進ん
でいることを考えると、財政の持続可能性に関してとても楽観でき
る状況にはない。

 言及しなかっただけで、長期的に見れば、もちろん、欧米諸国同
様に債務危機に陥る可能性はある。少子高齢化や人口減少の速度を
考えれば、この水準の債務をいつまでも抱えていられるものではな
い。

 この点については、日本政府に対して二つのアドバイスをしたい。

 ひとつは、国債の満期構成を長期化させることだ。繰り返すが、
危機は来る。短期金利が実質ゼロだからといって、短期でつなぐ誘
惑に負けてはならない。たとえ高くついたり、一時的に財政赤字の
拡大を招いたとしても、満期構成の長期化は危機の第二波に対する
安い保険となる。

 第二に、2%程度のインフレを目指すべきだ。債権者に下落した通
貨価値での返済を押しつけるインフレは、債務問題のフェアな解決
法とは言えないが、債務負担を軽減させる有効な手段であることは
明らかだ。

―債務負担圧縮の視点はさておき、成長戦略の面ではアドバイスは
ないか。

 まず、日本経済がなぜ今のような停滞に陥ったのか、もう一度き
ちんと考えるところから始めるべきだろう。金融危機のせいにする
のは簡単だが、それは間違いだ。

 私は、大きな原因のひとつは、中国の成長をうまく生かせなかっ
た点にあると思う。それどころか、中国の台頭で、世界経済におけ
る日本のグラビティ(引力)が下がってしまった。要するに、新た
に中国を中心に加えて回りだした世界経済において、日本は敗者と
なってしまっているのである。

 むろん、人口減少問題を解決すること。これは何にもまして喫緊
の課題だ。
アウトサイダーの私が言うのもなんだが、女性が子供を産みたくな
るような、そして移民が受け入れられ、定住したくなるような社会
づくりを急がなければならない。政府はそのために何をすべきかも
っと想像力を働かせるべきだし、国民も、たとえば移民問題につい
て、どこまでが許容でき、どこからが無理なのか、もっと突っ込ん
で議論すべきだろう。
ただ、同時に、中国の経済成長からもっとポジティブなベネフィッ
トが得られるように、とにかく知恵を働かせなければならない。

 アジア通貨統合に向けて中国と共同でイニシアティブを取るのも
一計だろう。
独仏が第二次大戦後の欧州経済統合に向けた取り組みから得た成果
は計り知れないほど大きい。
日中が同じことを目指せるならば、政治的にも大きな前進となるし
、両国の経済関係は劇的に深化する。グローバルインバランス解消
にも貢献しうる。

 日本に限ったことではないが、低所得者層に金をバラまくだけで
はない、こうした発想をアクションに結びつけて初めて、「今回は
違う」という主張にも説得力が宿るのではないか。

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