3412.垣間見た中国 その3



 垣間見た中国 その3
                    平成21年(2009)9月23日(水)
                    「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治
 去る7月8日(水)から11日(土)に掛けて、北京交通大学の招きで鉄道の高速
化に関する講演を行ない、技術指導する機会を得ました。大陸中国の訪問は初めて
のことですので、興味を持って観察し、その間見聞できたものを纏めてみることに
しました。今回はその第3編(最終)です。街の光景、地下鉄、高速道路、環境問
題などについて書いてみます。

写真35 天津で売出中の高層マンション
街と生活の一端
7月8日北京南駅から天津に到着後、旧市街地に今も残る袁世凱の旧別荘(フラン
ス式)を生かしたレストランでご馳走になりました。その前後雨中街を歩いてい
た時、河畔に売出中の高層マンションを見かけました。今や中国では珍しくない
光景のようですが、高速鉄道で北京と30分で結ばれた天津は特に建設ラッシュの
ようでした。そして昔ながらの市街地も綺麗に整備し残されていました。写真36
に旧イタリア風市街地を示します。

写真36 天津のイタリア風市街地
天津には、日米欧列強が清国とその後の中華民国時代に築いた自治権と治外法権
を有する租界地があり、その一つにイタリア租界があったのです。悪しき植民地
時代の街並みをそのまま継承しているのも興味深いところでした。ポルトガルの
植民地であったマカオの光景を思い出しました。観光政策の一環でしょうか。日
本租界はどうなっているのでしょうか?この旅では確認できませんでした。

食材も気になるところ、北京の宿泊ホテルの近いところに当代という大きな百貨
店があり、その地下スーパーを覗いてみました。日本のスーパーマーケット並み
にきちんと包装された野菜果物が陳列されており、ここは中国かと一瞬思いまし
た。反日空気も強い中でも、日本と日本人関しては清潔、高品質のイメージが定
着しており、高級店では日本的売店が多いとのことです。日本語表示(ひら仮名
がその象徴)も見かけました。写真36と37をご覧ください。値段は一袋7元―20
元などと結構高めでした。

写真37 当代百貨店の地下スーパー 
曽根教授によれば、中には怪しげな日本語表記も見かけるとか。
写真38 同 日本語表示

水
中国の経済発展のアキレス腱の一つは「水」であると伺っています。北京市の水
道は飲めません。宿泊したホテルには飲料用水栓がありましたが、味はあまり良く
ありませんでした。エヴィアン水がおいてありました。何と500■で60元(900円)
です。お金に糸目をつけない人はどうぞ、というところでしょうか。そして高速列
車に乗った時と、唐山(トウザン)の鉄道車両工場を見学したとき、チベット産の
ミネラルウオーターの入った330■ペットボトルを頂きました(写真39)。中国鉄道
部が多大な経費と犠牲を払って建設したチベット鉄道(西蔵鉄道)が運んで来た水
です。「チベットの水が中国を救う」という本が大陸でベストセラーであったこと
がありました。中国がチベットに拘る理由の一つがヒマラヤに発する清浄な水であ
ることを象徴するペットボトルでした。海抜5100■の礦泉水と表記されています。

写真39 チベット産のミネラルウオーター

競争と広告 経済発展の原理
 7月10日、楊副教授一行の皆さんが、私と曽根教授を唐山車両廠へ案内してくれま
した。
 北京から東北東へ、高速道路を経由して1時間の距離です。同車両廠は、中国北車
集団に属する唐山軌道客車有限責任公司の鉄道車両製造工場です。7月9日の技術交
流会にも多数、唐山車両廠のスタッフが参加していました。車中、曽根教授から伺っ
たのは、中国北車集団というグループの存在意義です。中国では鉄道車両メーカーを
大きく二つに分け、北車と南車グループに再編成し、両者間で競争させるようにした
とのことです。南車Gの主力工場は青島にあります。北車Gがドイツ系の高速車両を
作り、南車Gが日本式高速車両を作ることにより、両者は切磋琢磨するように凌ぎ合
っています。1997年から僅か11年間で時速140■の世界から時速350■の実用運転
にこぎつけた背景にはこういう市場主義による競争原理の導入があったのです。

 唐山車両廠では同スタッフによる高速化の取組み(主に空気抵抗減)の話を聞き、
曽根教授から技術的助言があり、私は高速化の経験から、空力騒音の低減する視点で
アドバイスをしました。

 製造中のドイツ式CRH3型の車両を見学しました。写真撮影は禁止でしたが、車体、
台車などを見た印象では、日本製に比べ分厚い部材を使っているなと感じました。
 続いて市場主義の象徴広告です。唐山への車中、高速道路の両サイドに巨大な広告
看板を見かけたのです。私にとっては初めての光景でした。看板の高さは2.5メー
トル、幅は8メートルくらいでしょうか。高さ10メートルほどの鉄塔の上に取付られ
ています。写真40と41をご覧になって下さい。企業名、企業グループ名が表示されて
います。写真41は空の看板ですが、広告エージェントの電話番号が記されています。
書き写すことはできません。写真撮影でやっと記録ができます。

写真40 林立する高速道路沿いの広告看板 写真41 広告エージェントの表示
 この種広告の多さは鉄道駅でも展開されていました。写真42の例は天津駅の地下通
路で見かけたものです。両サイドはずらっと企業広告、商品広告で埋まっており、写
真例は高速鉄道の広告を扱うエージェントのものです。
                    写真42天津駅の地下通路の広告例

高値のガソリン
 唐山への途中高速道路のサービスエリアに休憩に立ち寄った際、中国石油のガソ
リンスタンドがありましたので、さっそくガソリン価格を見てみました。

写真43中国石油のガソリンスタンド   写真44 ガソリン価格
1リットル当たり、レギュラーガソリンで5.83元(87.5円)でした。ハイオクで6.37
元(95.5円)。物価レベルが日本よりかなり低く、大学卒の初任給が4〜5,000元であ
るという水準から考えるとかなり高いガソリン価格の設定と言えるでしょう。

地下鉄
 大都市の存在のためには地下鉄は欠かせません。地下鉄の無い大都市は半分病気に
罹っているようなものです。
 今回、楊副教授が北京地下鉄カードをプレゼントしてくれたので、7月10日、11日
と地下鉄三昧に耽りました。全区間は無理でしたが、一応8線区は全て、乗るか見る
ことができました。路線延長199■の8線区の内、4線区は北京オリンピックの前に
整備されており、残る4線区は全て北京オリンピックに合わせ建設されたものです。
大変な勢いで地下鉄整備を進めたものです。今もその勢いが続いているようです。
それら新線区間は全てホームドアーが導入されていました。ところがホームドアー
があっても車掌が運転台に乗務し、ホームの乗降状況を監視していました。安全の
ためか、労務提供のためか、私は後者であろうとの印象を持ちました。

写真45北京地下鉄1号線最新型車両    写真46同1号線で指差確認する車掌
 写真45に北京市街を東西に貫く一番古い1号線(1977年一般供用開始)の最新型電
車を示します。編成長は6両と短く、東京の銀座線、丸の内線同様需要がそう大きく
伸びるとは想定しなかったのでありましょうか。もっともその後に整備された線区も
6両前後で、これは明らかに北京市交通当局が過小需要に基づいたためでしょう。
1000万人を超える大都会で、しかも国電、私鉄に当たる鉄道が無い状況で唯一の軌道
系都市交通機関としては、短い編成で計画してしまったようです。

 仕事ぶりは真面目です。写真46にプラットホームに必ず、下車して列車後方を映す
工業TVを車掌が指差確認していました。日本のJR並みの規律が保たれているとの
印象を持ちました。

リニア空港新線(機場線)
 北京オリンピックに合わせ計画された新線で、第3軌条集電系と1435ミリの標準ゲ
ージを使っていました。ホームもピカピカに磨きあげられ、車両座席にはヘッドカバ
ーが取り付けられ、大衆交通機関とは異なるイメージの地下鉄です。道理で運賃が地
下鉄の12.5倍
写真47リニア空港新線三元駅     写真48リニア空港新線車内
の25元でした。

 リニア空港線は、敢えてリニア―モーターを走らせる地下鉄にしたようです。膨大
な建設費の掛る地下鉄は、トンネル断面積を小さくことにより、工事費を削減するこ
とができます。大阪の鶴見緑地線、東京の都営大江戸線などはその典型例です。回転
モーターでなく平面モーターのリニア―モーターは車両の高さを低くでき、結果トン
ネル断面も小さくすることができるからです。
 ところが工事費のそう高くない中国でリニア―モーター地下鉄導入に踏み切ったの
は、時代の最先端の技術を実用化する政治的目的があったとのことです。

環境問題 
 北京―唐山間の高速道路を走っていまして、郊外にでると道路の両側が殆ど高木で
覆われていることに気が付きました。遠くの景色があまり見えないのです。北京の西
側には砂漠が迫っているという話からは、全然異なる風景でした。中国では中央、地
方政府とも緑化に力を入れているようで、高速道路沿いの幅のある街路樹もその一環
でしょう。毎年黄砂に悩まされるている日本にしても歓迎したい試みです。地球温暖
化防止にも多少は貢献するでしょう。

写真49 高速道路沿いの街路樹      写真50 街路樹の苗木?
ただ、気になりましたのは、高木の種類が極めて限られている点です。ポプラか銀杏
のような樹木のように見えました。日本も戦後、杉、檜を大量植樹して、今それらが
もたらす弊害に悩まされつつありますが、中国も同じ轍を踏んでいるなと思いました。

濁って見える太陽
 北京市内で数日間過しまして気が付いて来ましたのは、晴れているのに霞か靄がかか
っているように見えることでした。

写真51 霞んで見える高層ビル群    写真52  濁って見える太陽
 今回垣間見る中国その1をお送りしたところ、「霞んで見えるのは、大気汚染でしょ
うか」と照会されて来た方がおられました。どうやらその通りのようですね。
 写真51&52 のように高層ビルが霞んで見え、太陽にカメラを向けてもそう眩しく無
いのは、通常なら水蒸気が空気中に多いからです。しかし曽根教授によれば、洗濯物は
室内でも一晩で乾くと言いますし、現実に喉がよく乾くし、中国北部は乾燥性気候の
はずです。となれば、空気中に粉じんなどが多いから、空気が濁っているように見える
のでしょう。

主な原因は石炭暖房と石炭火力発電そして自動車でしょうか。2月には平均マイナス5度
まで冷え込む北京では暖房は欠かせません。庶民の暖房手段は、効率の悪い石炭ストー
ブが多く、また増大する電力需要を賄っているのは、これまた低効率の石炭火力発電所
が中心のようです。旧型の自動車も多いようですね。

 これらが相乗して大気汚染を進めているのでしょう。その1で北京郊外上空からの写
真を曽根教授にお見せしたところ、「ずいぶんとよく写っていますね。私は何度も北京
に来ているがこんなに綺麗に見えたことがありません。太陽も毎日あのように濁って見
えます」との返事でした。相当事態は深刻なようで、呼吸器系の疾患を患っている人が
急増しておいるとか。収入の増大する経済成長の傍らで健康を蝕んでいる人も増加して
いるのです。報道の自由が無く、批判が許されない中国ではかつての日本以上に公害が
進行しているとの印象を持ちました。今回交流した中国の方々もこの事実は否定してい
ません。

楊副教授が、このことに関し、このその3を読んで下記のような返信をくれました。
「オリンピック期間中は、ほぼ毎日東京か東京以上に綺麗な天気でした。そうなったの
は、自動車を半分以上制限したことと、 汚染源になる大型工場の生産活動を一時止める
ことによるものでした。頑張れば、北京も空気の綺麗な都市になれることは、 市民もそ
の事実を学びました」。
 
   以上平成21年(2009)7月8日から11日に掛けて「垣間見た中国」のレポートでした。
お付き合い、有難うございました。

「地球に謙虚に運動」代表
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皆様                             
 環境イベント列車 琵琶湖・淀川環境号のご案内と広告&カンパご依頼
 本件転送歓迎です。
                        平成21年(2009)9月22日(火)
NPO法人 エコネット 近畿副理事長
                     琵琶湖・淀川環境号実行委員長 
                     仲津 英治 

 平素より何かとお世話になっています。多くの方々には再度のご案内、お願いとな
りますが、宜しくお願いいたします。

別添チラシの通り近畿の宝湖である琵琶湖、並びにそれを発し滋賀、京都大阪各府
県への大水脈である淀川を琵琶湖・淀川環境号という列車で辿る旅と、さらに栗東
の栗東芸術文化会館さきらでは滋賀県嘉田知事を始めとする識者による同列車運転
記念セミナーなどの行事を行ないます。さきらでのイベントは前回(09.9.3案内)
とは一部変更になっています。

 琵琶湖・淀川環境号に申し込みされる方は、日本旅行へ申し込んで頂くことになり
ます。

 別添BYK号日旅申込書(090909)をご活用下さい。10月16日(金)締切です。
 列車は大阪から京都さらに琵琶湖を反時計回りに一周、近江今津で湖西線に入り山
科を経て京都・大阪へ戻って参ります。車内道中では参加NPOによる環境活動報告の
他、クイズと商品も多数あります。栗東ではヨシ笛の演奏さらに地元特産品の販売も
行なう予定で、参加者の募集を行なっています。

 今般当日のプログラムを作成しますので、企業または環境団体などの広告を是非掲
載していただきたくご案内致します。400名強の参加者を見込んでおります。
 また個人などで、カンパして頂ければ大歓迎です。お名前を掲載させて頂きますの
で、一口1000円単位でよろしくお願いします。	

                 記
・琵琶湖・淀川環境号運転日時    平成21年(2009)10月24日(土)
 列車予約お申込み照会先 (株)日本旅行大阪北支店 06-6301-9100(9月30日まで)
             (株)日本旅行大阪法人支店 06-6204-1812(10月1日から)
・琵琶湖・淀川環境号プログラム広告募集期間  8月24日〜10月13日(月)
             まで(E-Mail原稿必着)
・プログラム大きさ 白黒 A4版(縦24.5*横18cm)        
・原稿作成     貴社・貴団体で作成してください。
・協賛広告費用   A4 1ページ1万円 A4半ページ5千円
・個人カンパ    1口1,000円(掲載されるお名前、所属先等をお知らせ下さい)
・原稿郵送先  (略称 NPO法人エコネット近畿) econetkinki@minos.ocn.ne.jp

・振込先 りそな銀行南森町支店
(特非)近畿環境市民活動相互支援センター  口座番号0129580
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  預金種目:普通預金  口座番号:7924331

・本件照会先
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〒530-0041大阪市北区天神橋1丁目18-11グランドール南森町102 
(10月1日より〒530-0041大阪市北区天神橋2丁目北1-14 天二ビル4F 4AB)
TEL・FAX: 06-6881-1133
E-mail:  econetkinki@minos.ocn.ne.jp 
URL:         事務局 安見 岳人、 林 邦茂

「地球に謙虚に運動」代表


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