3337.ドイツにおける鉄道復権の歩み その2



ドイツにおける鉄道復権の歩み その2
                   平成21年(2009)7月5日(土)
                  「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治

 去る4月13日ベルリンを後にした、我々は列車でハレを経由してライプチッヒに
向かいました。ハレと乗り継ぎ駅のドレスデン、そしてプラハの路面電車などを簡
単に紹介させて下さい。ベルリンーハレ間の車窓からの眺めは、早春の芽吹きの頃、
なだらかな丘陵の畑、牧草地そして森の繰り返しです。時折風力発電用の風車群が
目に飛び込んで来ます。列車速度は時速130キロくらい、乗り心地は良かったの
ですが、車両が古く、トイレの穴から何と線路が見えました。

塩の町 ハレ
 ハレを訪ねたのは最近知り合ったDAADの日本人給費留学生が滞在していたからです。
ハレはかつて旧東ドイツの都市で、第二次大戦の戦渦もなく、岩塩の産地として栄え
た中世からの街並みをほぼ、現代に伝える町でした。人口23万人で、女房と娘は静
かな街の佇まいが気に入り、住んでみたいな、と一言。観光客の少ない点も良いので
しょうか。

 ハレ中央駅に降り立ち、出迎えてくれた留学生の案内で、街中へ出かけました。乗
り物はもちろん路面電車です。彼は車を持っていないようで、大学―下宿間始めもっ
ぱら、路面電車かバスあるいは自転車で移動しているとのことでした。
写真1ハレの街を走る路面電車

 市街地図を見ますと、縦横に路面電車の線路が描かれており、中世風の石畳の道を
結構な頻度で3両編成の電車が行き交っておりました。路面電車と路線バスを運営する
HAVAG(ハレ交通(株))のホームページを見ますと、メートルゲージで延長83.3キロ
ある15路線のトラムネットワーク網があり、電車は223両を有しているとのこと。
乳母車、車椅子も乗れる低床車が多いですね。乗り場にはTramと表記されています。
ハレ交通(株)の路線網図

写真2ハレ路面電車内

 乗客も多いようで、3回乗車しましていずれもほぼ座席は埋まっているようでした。
事実ハレ交通(株)のホームページによれば、旅客数は年間5,800万人とのこと、中々
のものです。年配の乗客も多く、車が運転できなくなった高齢者も十分生活できる街
であると実感しました。2007年の収入は同ホームページによれば、年間47.2百万ユーロ
で、原価回収率は66%でありました。差額は公的補助でありましょうか。客単価は
0.81ユーロ=109円となります。(2009.7.4現在1EU=\134)

ドレスデン
 ハレからドレスデンへはドイツ鉄道の列車で移動しました。速度も結構速く、レール
の継ぎ目は殆どなく乗り心地も快適でした。東西ドイツ統一後ドイツ鉄道に一本化して
から、相当の改良工事が行なわれたと想像します。
 ドレスデンは第二次世界大戦末期に英米軍機により、徹底的に破壊された街ですが、
駅前を見る限り、見事に復旧していました。ライプチッヒからプラハへ列車移動すると
きに乗換のため、ドレスデン中央駅で降り立ち、駅付近を見て回っただけですので、
街中の様子は分かりません。
 写真も撮影したのですが、PC転送に失敗し、該当ホームページからのものにします。

 ドレスデン中央駅は、他の大駅と同じく頭端駅だったようで、大きなドームの下には
行き止まりの線路が4線あったでしょうか、写真3に示すように両側のドームが高架通
し線のものです。まだ工事中でした。欧州の駅は多くは、上野駅のように頭端駅が主流
でありましたが、列車の折り返しのために多数の線路を必要とし、効率が悪いので通し
線方式に切り替えている真っ最中のようですね。
写真3ドレスデン中央駅と駅前広場

 駅前には写真3のように大きな広場があり、二つの停留所に路面電車とバスが乗り入
れていました。人口が50万人で地下鉄を有しないドレスデンは、公共交通機関の中心
は路面電車と路線バスのようです。駅前のドレスデン交通事業(株)の案内書で地図と
ガイドブックを戴くと、ここもS-バーンの他、エルベ川を渡河するフェリーも組み込
んだゾーン別共通運賃制度を導入していました。黄色の路面電車が印象的です。

DVB=ドレスデン交通事業(株)の路線網

写真4 ドレスデン路面電車ネットワーク
写真5 ドレスデンの8両編成の路面電車(ドレスデン交通事業(株)のHPより)
 写真4は、案内図の写しで見にくいかも知れませんが、都心部の赤い線が路面電車で、
青いバス路線が補完的にあることが判ります。距離指標からみて数百m毎に停留所があ
りますね。

 路面電車の軌道が広いと感じましたが、同社のホームページによれば、1,450ミリも
あり、新幹線より少し広いゲージです。2007年現在、路線数は12線で営業キロは
204.4キロ、車両数は358両もあります。路線バス28路線295.7キロなど
を含め、年間144百万人の旅客を運んでいるとのことです。収入は83.4百万ユーロ
で原価カバー率は73%とありました。あとは公的補助が入っているのでしょうか。旅客
単価は0.58ユーロ≒78円となります。8両編成の新車投入など意欲的な印象を受けました。
 終夜運転も実施しているようですね。これには疑問がありますが。

プラハ
 4月15日ハンブルク発ウィーン行きの国際列車にドレスデンから途中乗車し、チェコの
首都プラハに向かいました。エルベ河の峡谷をゆっくりと上り、早緑を味わいながら、
国境での旅券審査もなく、新しい欧州を感じた列車の旅でした。
 プラハは欧州で一番中世の雰囲気を残している街で、モーツァルトを扱った「アマデ
ウス」という映画のロケ地に使われたそうですね。彼の活躍したウィーンは最早、当時
の風景を残していないとか。

 郊外の駅から都心へは路面電車で向かいました。ヴルタバ河(ドイツ名モルダウ河)
の右岸のホテルに着くと、対岸を走る路面電車が目に入りました。早緑と花が咲き乱れ
る中、一枚の絵ですね。次々と色とりどりの路面電車が行き交います。チェコ製がメイ
ンですが、中には旧ソ連製そしてロシア製の電車もありました。

 人口122万の大都市であるプラハは地下鉄経営が成り立つようで、3路線もありま
す。観光対象は徒歩で見物可能な殆ど中世の街並みが残る中心部でしたので、地下鉄に
は乗りませんでしたが、バスも加え、プラハも街中では、徒歩、自転車、路面電車、
地下鉄などの公共交通機関だけで生活できる町だなと実感しました。
写真6 プラハの路面電車(プラハ市交通局HP)
 
 今回でドレスデン同様大掛かりな路面電車路線網を持つライプチッヒ市の事もお伝
えたいと思いましたが、量が多すぎるようです。次回最終回とします。 お楽しみに 

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仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表
 


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