3234.小沢党首と官僚の闘争



小沢民主党党首の秘書が逮捕された。このことで政局はどうなるか
関心を呼んでいる。しかし、基本は自民党と民主党の政策が国民に
支持されるかどうかである。自民党麻生首相の政策は残念ながら、
支持されていない。今までの実績は、10月のリーマン・ブラザー
ス破綻時に与謝野大臣が言った「ハチに刺された程度」という認識
が間違えであったことによる。      津田より

0.はじめに
 小沢党首の秘書が逮捕されて、報道機関調査の支持率がどう変わ
るか注目したが、自民党へ支持が大きく移ることはなかった。漆間
巌官房副長官の談話は大きな意味を持っている。

検察は、この対応で公平性を担保するために、二階大臣をも調査す
ることになり、かつ献金リストを見ると森元首相の名前もあり、ど
うも、このリストに載らない自民党議員への献金もあった可能性が
指摘されている。

事件全体について言うと、何かの意図を感じる。このままにすると
民主党が過半数を占めて、民主党単独政権になり、小沢党首が目指
している官僚をはずした政策立案や政治任命の省幹部が大量に出来
て、官僚の持っている既存の権限が大幅に制限されることになる。

このような政治を官僚は認めないという意思を表現したように感じ
る。麻生内閣が行う比較的軽い行政改革でも人事院は反対している
が、この改革の数十倍も強烈な改革を小沢さんは提案している。

これは本当に日本の国家権力を持っている官僚が怒り、本当の意味
での権力闘争になるなと見ていたが、本当にそのような方向になっ
た。

日本の本当の権力者が明確になったようにも思う。それは官僚であ
る。それを隠せないことが官僚の敗北でもあるが、それとの熾烈な
戦いを政治家小沢民主党党首は仕掛けたのである。

どうか、引き続き、お付き合いのほどお願いします。

1.国家権力はどこに
 日本の国家権力は基本的に国民ではなくて、官僚にある。官僚が
反対した法案はできない。議員立法という道はあるが、日本の議員
に他の法制度との整合性を取った法を作る能力はない。官僚が強い
のは、法律の整合性を律儀に追い求めることで、官僚の身分を保証
されていることである。この保証なしには仕事が出来ない。

国民の大きな方向性を勘案して、その上に政治家の意見を聞き、か
つ大学の先生を使い、法案を作るが、その基本は自己の権限を増や
すことである。高度成長期には予算が増大したことで、全官僚の権
限が増えたが、特に経済官僚が権限を増やしてきた。

また、社会福祉が大きな政策課題になると、厚生省が権限を増やし
ている。しかし、低成長期になり、税収が増えないことになり、省
間での予算削減が話題になり、省や課が予算削減を抵抗したことで
、一律カットという手法が取られて、国民は社会福祉、年金医療に
予算を振り分けてほしいと思っても、旧建設省は予算を減らすこと
はなかった。一般的な国民の意見が通らないということは、権力は
国民にはないことが分かる。それでは、国家権力は誰の手にあるの
か。

官僚が省や課ごとに分散で持っていると見える。このため、この官
僚を束ねるのが内閣の役割になっているが、そうには見えない。
現時点は内閣より省の方が強いように見えている。それがちぐはぐ
な景気対策になっている。全省庁の案をホッチキスで止めた景気対
策案ができている。総合的に省間を跨いだ政策は出ていない。麻生
さんを支持したB層や庶民を勘案した政策もない。

残念ながら、日本には集中した権力が存在しないように見える。

2.小沢構想について
この現状に対して、小沢さんの政府構想はスケールが大きい。
約100名の政治家、民間人を各省に送り込むという。各省の局長
以上を政治任命にすると見える。これは日本の今までの官僚中心の
権力機構を破壊することになる。

米国の政治任命制度を日本に持ち込むということである。この制度
を持ち込むと、今まで各省は機密にしていた事項を全て見せること
になり、かつ局長以上になるためには政治家になる必要があるとな
る。これは日本の現在の官僚機構を崩壊すると見る。米国と同じよ
うに官僚に優秀な成り手がいなくなり、政策はシンクタンクなどが
立案する米国の政治制度に近い組織体系になる。

確実に官僚から政治家に国家権力が移ることになる。回転ドアとい
う制度を持ち込むことになる。その一部を麻生内閣が取り入れたら
、人事院は大きな反対をしたが、これは官僚機構の仕組みに手を入
れさせないという意思でもある。

それ以上の機構改革を小沢さんは提案しているから、これは官僚と
小沢さんの対決になる。そして、検察がとうとう出てきた。小沢さ
んには統治機構の執行権限がない。普通は職務権限がないので汚職
ということが言えないが、そこを無理しても小沢構想を潰すために
、官僚は出てきた。

3.今後の政局は
 しかし、これは立件が難しい。どこかで民主党の支持率を下げて
、自民党も民主党も過半数を取れない状況にして、連立政権に持っ
て行く。こうすれば、小沢構想は当分日の目を見ないことになる。

最初にも言ったが、漆間巌官房副長官の談話は大きな意味を持って
いる。民主党潰しを仕掛けたが、職務権限を持つ自民党の森元首相
や二階さんの方が立件しやすい。しかし、自民党には行かないとい
う発言をして、検察が自民党にも公平性のために捜査をするという
筋書きが、最初からあったように感じる。

狙いは民主党単独政権の阻止である。これは今の時点ではうまくい
ったようであるが、麻生首相は全然知らされていないことで、まだ
総選挙をしないという。民主党の復活が起こると検察の動きは元の
木阿弥に戻る可能性があるのだが。

さあ、どうなりますか??

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