3175.ポスト米国の時代を考察



米国もEUもその経済がおかしくなり、どんどん世界は奈落の底に
落ちているようだ。この世界恐慌から抜け出す道筋を見つける必要
がある。    津田より

0.はじめに
 国別ソブリン債とは国債のことで、そのCDSを見るとその国の
経済状況が分かる。そして、米国に比べてもEU諸国のCDSが、
大きく低下してきている。ロシアのCDSも最低であり、700以
上になっている。これよりひどいのがウクライナで2000以上で
ある。ほとんど破綻の状態であることが分かる。このようにデフォ
ルトに陥る可能性が高い国や地域がCDSで分かる。

このCDSで、日本はダントツに値が低い。安全と認定されている
のだ。このため、安全資産に退避する世界のマネーが円に集まるこ
とで、円高になりやすい。しかし、この安全性があると認定されて
いる日本の国債の格付けは米国債に比べて低いランクである。少し
前はGMの債券よりも低いという格付けであった。

このように米国格付け会社がいかにインチキであるか、CDSの値
を見ると分かるのだ。どのような方法で格付けが決まるのかの説明
もないなど透明性もなかった。しかし、CDSがなかった時はこの
インチキを見抜くことができなかったが、今はある。現時点、CD
Sインデックスを運営する会社の規模が問題であるが、このCDS
を世界的な機構にして、公的にすることである。そうすれば、格付
け会社はいらない。横に逸れた。

しかし、EU以上に中国のCDSやブラジルのCDSも高い。この
ように世界の国債CDSを見ると状況が全般的に悪いことを知るの
である。

この状況から抜け出す手立てが重要になる。今、中国の輸出が止ま
ったことと、広東省政府が計画したダブル転換政策の失敗で、痛い
目に会っている。投資を加速していた地域、コトバを変えると新興
国や東欧・アイルランドなど発展が著しかった国家のCDSは、全
般的に低くなっている。

この地域に投資していた国のCDSも高いことになるが、日本のC
DSは低い。これはあまり新興国にも東欧などにも銀行が投資して
いないと言うことである。非常に海外投資をしていたように日経新
聞などで報道されていたが、欧米に比べて著しく少ないことでそう
なっている。日本の銀行は国内投資をしていたのだ。トヨタなどの
日本企業にである。企業が円をドルに変えて、世界に投資していた
が、日本の銀行はあくまでも、日本企業に貸していたのである。

しかし、欧米の銀行は違う。直接、海外の企業に貸し出していた。
このため、現状は益々、悪くなる。欧米の銀行は実体経済面でも不
良資産を抱えることになる。透明性に問題がある欧州の銀行の損失
拡大はこれからで、EU全体も没落する。サルコジ仏大統領が希望
しても、EUは世界の面倒を見ることができなくなる。EUが米国
後の覇権を取ることは不可能である。

そうすると、残す国としては日本しかなくなる。円の時代、日本の
時代が来るが、その時代が来る前は、一層、暗い時代になりそうで
ある。そして、ポスト米国をどうするのか考える必要が、日本にあ
るということである。

この検討にお付き合いください。

1.EUの現状
 EUの中ではドイツが金庫番であり、フランスが国家主義でEU
内の政治を行うという役割分担があった。このため、ドイツの銀行
は堅実な運用を行っていると、欧米の著名な学者や評論家は見てい
た。このため、勝ち組にドイツは入り、日本の銀行は海外投資をし
ないことで負け組になっている。

その堅実な運用を行っていたドイツの銀行で約36兆円の不良資産
があり、まだ増加する可能性が高いという報道には正直、ビックリ
である。このことから、ドイツのCDSは大幅にUPしている。

アイルランドの首相が日本に来て、アイルランドへの投資を呼びか
けたようであるが、そのアイルランドは現時点、IMF支援が必要
な状態になっている。これはCDSからも明らかである。アイルラ
ンドは日本より1人当りのGDPが高い、発展が著しい国で世界か
ら投資を呼び込んだことで、日本より豊かになっていたと宣伝され
ていた。しかし、金融危機以降、アイスランドと同様に失速した。

このアイルランドに投資していた企業や銀行の多くは欧州系の銀行
であり、その多くがドイツやフランスの銀行であると見られている。
米国の証券化商品を多く買った他に、実体経済の失速で不良債権が
大幅に増加している。

この影響を受けてドイツはロシアの資源に近づいているようである
。シュレーダ前ドイツ首相があろうことかガスプロムとの合弁会社
の役員に就任した。EU全体は現在、ロシアからのガス停止で危機
的な状況にあり、ロシアの会議をボイコットしている最中である。

ドイツとロシアは、バルト海のパイプラインの完成に期待している。
これが完成するとEUはウクライナからのパイプラインが止められ
ても大丈夫になる。このパイプラインがドイツの生命線なのである。
ドイツはガス開発でもロシアを支援することになる。ドイツ経済は
苦しくなるとロシアに近づくのは昔からの伝統である。
しかし、この行動はEU分裂に繋がる可能性があると見る。ドイツ
という経済大国のないEUは、経済面で魅力が無くなる。

2.ポスト米国の時代はどうなるのか
 米国の没落は前回の「p0018.ドル暴落」で述べたので、それを読
んいただけば分かる。米国は景気回復はあまりうまくいかないので
、雇用確保のために戦争を行い、その戦争相手はアフガンやイラン
、ソマリアなどであろうと述べた。しかし、この戦争に勝てるかと
いうと無理がある。そして、その戦費は米国債であるが大量の米国
債を買う国や投資家はいない。このため、ドルは暴落して、決済通
貨として役立たないことになる。要するに基軸通貨ではなくなると
見ているのだ。

この世界経済は米国を離れて誰が立ち直すのかが問題であり、その
候補者は中国やインドなどの新興国しかない。これも「p0016.大転
換の時代」で述べているので、読んでいただければ分かる。

しかし、この新興国の発展には大量の資金が必要になるが、それを
貸せる国はどこかというと、日本しかいないはず。欧米の銀行は大
量の不良債権を持ち、その除却に邁進するしかないし、新興国投資
で大量の不良債権を抱えて、新興国に貸し出すはずがない。

日本は円資金を新興国に貸し出すことで、新興国の発展を助け、か
つ円市場の拡大になり、円を世界基軸通貨になる素地を作れること
になる。また、日本は円での貸し出しであり、為替での損を受けな
い。

もう1つが、日本からの新技術を使った製品を出すことである。こ
の製品を出すことで、日本が円高になっても強い経済で居られるこ
とになる。この2つができれば、日本は非常に強いことになる。

3.日本の政治の変革
日本の問題は、経済力に比べて、政治力が弱いことである。特に憲
法9条絡みの安全保障に対して、世界への貢献をしない姿勢であり
、この対応する限り、世界は認めない。中国はこの面で貢献する可
能性が高い。こうなると、日本は中国の属国にされかねない。

どうか、日本の政治家も世界に貢献する日本を作るために、改革し
て欲しいものである。日本の問題は、政治家が先を見通さないこと
であるので、どうか、このコラムを参考にして、将来の構図を作っ
て欲しいものである。その上で、日本をどう変えるかを考えて欲し
いものである。

さあ、どうなりますか??

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銀、一段の巨額損失計上へ=雑誌報道
1月18日7時2分配信 時事通信

【フランクフルト17日時事】19日発売の独誌シュピーゲルによると
、ドイツの主要金融機関は今後、一段の巨額損失を計上しそうだ。
米国の住宅関連や学生ローン関連証券の評価損計上を余儀なくされ
ることが背景にある。
 ドイツ連銀や連邦金融監督局が主要20行に対して行った調査によ
れば、これら金融機関は3000億ユーロ(約36兆円)弱の不良資産を
抱えており、うち4分の1が償却の対象となった。しかし残りも現実
離れした評価額で、なおも帳簿上に存在するという。 
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WTO、保護貿易防止へ新制度 金融危機後の保護策を調査 
(nikkei)
 【ジュネーブ=藤田剛】金融危機を機に国際社会で関税引き上げ
など国内産業保護の動きが広がり始めたことをにらみ、世界貿易機
関(WTO)は2月、新たに保護貿易の防止制度を創設する。専門組
織をつくり金融危機後の加盟国・地域の保護策を独自に調査。結果
を開示して是正を求める。保護主義で貿易が縮小すれば世界景気の
さらなる悪化要因となるため、相互監視体制を構築して各政府が安
易な保護策に走らないようけん制する。 

 保護主義的な措置で被害を受けた国が提訴した場合に限られてい
た実態調査や是正要求を、自発的に進められるようにする点が新制
度の特徴。保護主義的な政策の拡大を未然に防ぐのが狙いだ。WT
Oは足元の危機に対応して求心力向上を図り、停滞が続く多角的通
商交渉(ドーハ・ラウンド)の再開にも道をつけたい考えだ。 
(07:00)
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アラブ諸国、金融危機で225兆円損失 クウェート外相
(nikkei)
 【カイロ=松尾博文】クウェートのムハンマド外相は16日、「ア
ラブ諸国は金融危機により過去4カ月間で2兆5000億ドル(約225兆円
)の損失を被った」と述べた。クウェートなど湾岸産油国はここ数
年、潤沢な原油収入を元手に積極的に海外投資を拡大してきた。
こうした資産価値が4割目減りし、株価下落だけで保有株式に6000億
ドルの損失が発生したという。16日の記者会見で述べた。

 湾岸産油国で計画されている開発事業の60%が、金融危機による
信用収縮などの影響で延期か中止に追い込まれている。中東情報誌
MEEDによると、湾岸6カ国では総額2兆ドル以上の開発プロジェ
クトが進んでいる。(11:31) 
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米SEC次期委員長「CDS規制必要」 
(nikkei)
 【ワシントン=大隅隆】米上院銀行委員会は15日、シャピロ次期
証券取引委員会(SEC)委員長などの指名承認に向けた公聴会を
開いた。シャピロ氏は「システム全体にとって重要な商品と金融機
関には規制が必要」と指摘。規制強化に慎重だったブッシュ政権か
らの方針転換を示した。

 シャピロ氏は商品先物取引委員会(CFTC)元委員長。金融危
機に至った一因について「市場(の進歩)に規制体制が後れをとっ
たのが一因」と指摘。企業の倒産リスクを取引するクレジット・デ
フォルト・スワップ(CDS)監視やヘッジファンドの登録制導入
などの規制強化を明言した。ナスダック元会長による詐欺事件に
ついては「SECが他の規制機関と連携する」重要性を強調した。
 (18:38) 
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「金融危機から最初に回復」 中国・温家宝首相が目標 
(nikkei)
 中国の温家宝首相は9日から11日にかけて輸出産業が集積する江
蘇省を視察し「中国の目標は今回の金融危機から(世界で)最も早
く回復することだ」と語った。今後発表になる昨年12月の経済指標
について「予想よりやや良かった」との認識を示し、景気回復の兆
しがすでに出始めていることを強調した。

 12日付の政府系英字紙チャイナ・デイリーなどが伝えた。温首相
は「一部の企業の販売は増え、在庫は減り、電力使用量は拡大し始
めている」と指摘。中国の経済指標は金融危機の影響で11月に軒並
み悪化したが、一連の景気刺激策の効果がこれから表れることもあ
り、過度に悲観的になる必要はないとの考えを強調した。

 温首相は3月5日に開幕する全国人民代表大会(国会に相当)の
前に、追加の景気刺激策を打ち出す考えも明らかにした。自動車の
販売促進策などが含まれるという。(北京=高橋哲史) (19:42) 
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国債、日米欧で400兆円規模に 財政収支悪化で急増 
(nikkei)
 【ワシントン=米山雄介、パリ=野見山祐史】国が資金調達のた
めに売り出す国債の発行額が世界で急増している。不況で税収が減
る一方、金融安定化や景気対策で歳出が増え、財政収支が悪化して
いるためだ。日米欧の2009年度の国債発行総額は400兆円規模に達す
る公算が大きい。金融不安を背景に投資家は信用度の高い国債の購
入を増やす傾向にあるが、安定消化が難しくなれば長期金利が上昇
し、景気回復を妨げるおそれがある。 

 08年度と比べた増発額は100兆円を超える見通しで、これは日本の
国家予算(09年度予算案の一般会計で約89兆円)を大きく上回る。
 (07:00)
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英国民、7割がユーロ導入に反対 英BBC世論調査
(nikkei)
 【ロンドン=吉田ありさ】「英国民の71%は欧州統一通貨ユーロ
の導入に反対」――英ポンドの急落にもかかわらず、英国民が自国
通貨に強いこだわりを持ち続けていることが英BBCの世論調査で
明らかになった。金融危機で景気が急失速した英国は過去1年間に英
ポンドが対ユーロで3割近く下落した。それでも「ユーロを導入した
ほうがよい」と考えを変えた人は少なく、ユーロ導入に賛成したの
は23%にとどまった。調査は昨年12月19―21日に実施した。
(02:02) 
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米雇用、戦後最悪の減少 08年258万人減に 12月失業率は7.2%
(nikkei)
 【ワシントン=大隅隆】米労働省が9日発表した2008年12月の雇用
統計(季節調整済み)によると、同月の失業率は7.2%と前月から
0.4ポイント上昇し、約16年ぶりの高水準だった。同月の非農業部門
の雇用者数は前月に比べ52万4000人減り、11月(58万4000人)に続
く大幅減。08年は年間ベースで258万9000人減で、第二次大戦が終わ
った1945年(275万人減)に次ぐ大幅な減少だった。金融危機で深刻
化した実体経済の落ち込みで、雇用の収縮も戦後最悪の情勢になっ
てきた。

 08年の雇用者数減の4分の3(約190万人)が9月以降の4カ月間に集
中した。リーマン・ブラザーズの破綻を機にした金融危機が、貸し
渋りなどの形で企業や家計の経済活動に波及。レイオフ(一時解雇
)に踏み切る企業が急増したためだ。ただ、労働人口に占める雇用
者数減の比率は、29年の大恐慌時や45年の終戦時ほど悪化していな
いと見られる。(01:44) 
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中国、貿易取引で元の決済解禁へ 輸出を後押し 
(nikkei)
 【北京=高橋哲史】中国政府は東南アジア諸国連合(ASEAN
)など近隣国・地域との貿易取引について、人民元建てでの決済を
一部解禁する方針だ。世界経済の急減速で苦境に立つ国内輸出企業
の為替リスクを減らし、輸出を後押しするのが狙い。中国本土以外
での決済を認めていない人民元の国際化に向けた一歩となる動きで
、将来的な「元経済圏」の構築を視野に入れているとの見方もある。 

 元建て決済を一部解禁する方針は、温家宝首相が主宰した昨年
12月24日の国務院(政府)常務会議で決まった。まず(1)香港、マカ
オと、上海を含む長江デルタ地帯、広東省の間(2)ASEANと雲南
省、広西チワン族自治区の間――の貿易取引について元決済を試験
的に認める。状況をみて対象地域を拡大する可能性がある。 
(16:00)
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米欧銀融資、一段と厳格に 企業の調達難に拍車も
(nikkei)
 【ロンドン=石井一乗】米欧の銀行が企業への融資基準を厳しく
している。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)
が昨年の第4四半期に実施した調べによると厳格化は一段と進んだ。
主要な中央銀行は金融危機や景気悪化をにらみ金融を緩和している
が、民間銀行はなお融資に慎重な姿勢を強めている。事業会社の資
金繰りはさらに悪化する恐れがあり、2009年は企業の淘汰や再編が
さらに加速するとみられる。

 FRB、ECBがそれぞれ国内・域内の銀行を対象に企業への融
資姿勢を調べた四半期ごとの調査によると、基準を厳しくした銀行
の割合から緩くした銀行の割合を引いた最新の数値は米国で84(大
・中規模企業)、欧州で65。第3四半期の結果と比べ米国で26ポイン
ト、欧州で22ポイント上昇し、ともに大幅に厳しくなった。(07:00) 

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