2924.NATOの苦悩と拡大



NATOが苦悩している。米軍だけでは手が足りないので、欧州諸
国軍隊を投入が失敗。そして...   Fより

米国の軍事力がイラク戦争とそれに続く内乱でイラク駐留軍の規模
13万を維持するために、他地域での活動が出来ない。このため、
中東から東南アジアまでの不安定の弧にNATO軍を投入したいが、
欧州各国も911当初は賛同してアフガニスタンに軍隊を投入した
が、現時点ではどうこの地域を安定させて撤退をするか苦悩してい
る。

フランス主導のEU軍はアフリカに展開している。しかし、空軍が
弱いEU軍はコソボなどヨーロッパが重要視する地域でのPKOに
は不向きである。米軍の助けを借りる必要がある。このため、NA
TO軍の任務になる。EU諸国は両方に軍を送り出しているために
、部隊運用が難しくなっている。

部隊運用を統一するために、親米派のサルコジ仏大統領は、NAT
Oの軍事部門への復帰をするとして、アフガンに1000人増派す
るとしたが、米国主導のNATOから仏米主導のNATOにするこ
とを主張して、米国と揉めている。EU軍とNATO軍を統一する
ことができるか微妙であるが、方向としては統一になるでしょうね。

アフガンの現状として、イラクに展開していたスンニ派ゲリラ達が
、イラン経由でタリバンを助けるためにアフガニスタンに来ている
。イラクでのスンニ派とシーア派の戦闘は沈静化して、イラクでの
内戦はシーア派同士の権力闘争の色合いが大きい。

このため、アフガニスタンはタリバンのNATO軍に対するテロ活
動、反撃が多くなっている。そのため、米軍はNATO諸国に増派
を依頼しているが、EU諸国は色よい返事がない。

アフリカ展開のPKOやコソボ展開など活動範囲が拡大しているた
めに、どの国も限界になっている。NATO軍としては東方拡大で
軍能力を拡大したいが、ロシアがグルシアやウクライナの加盟に反
対している。米国はロシアと中国包囲網を取りたいので、ロシアに
気を使う必要があり、それも出来にくい。
EU諸国の本音はアフガンから早く撤退して、EU影響範囲のコソ
ボやアフリカにより多くのPKO活動を実施したいのである。この
アフリカ地域に中国の影響力が拡大している。

しかし、中東から東アジアの不安定の弧をどう安定化するかが問題
であると米国は主張している。この地域も中国の影響化になって、
中国の資金で北朝鮮がシリアに核施設を提供したために、イスラエ
ル軍はシリアの核施設を空爆している。キーは中国である。

実際、イランの核濃縮などで核の拡散が起こると欧米は心配してい
るし、スンニ派国シリアはイランの同盟国として、レバノンのシー
ア派ビスボラを助けている。ねじれを起こしている。イスラエルを
敵とすることでシリアはイランと同盟している。

これに対して、イスラエルはシリアにゴラン高原を返す和平提案を
している。ビスボラとハマスを助けるシリアを寝返らせれば、大き
くイスラエルに有利になる。中国・イランの影響を遮断できる。
どちらにしても、この地域は不安定である。イランはシーア派の盟
主であり、欧米の言う中東の不安定の中心にいる。このイランに援
助をしているのが中国である。

米国は金融危機と大統領選挙後民主党オバマが大統領になると、今
までのブッシュ政権とは違い、米国もこの中東地域から撤退する可
能性もある。

米国軍事費51兆円と日本の防衛費4兆円の10倍以上を防衛費に
使っているが、現時点米国は予算を国内の金融・景気対策に優先し
て回す必要がある。軍事を公共工事と同じと考えると、日本がバブ
ル崩壊後立ち直ったやり方と同じ方法が米国には必要なのである。
公共工事(軍事費)を縮小して、社会保障費に回したことを米国も
必要としている。このため、米国だけで世界の平和を維持すること
ができない。今後は、世界的な集団安保しかありえないと感じてい
るようだ。

そして、中東石油輸送のシーレーンとして日本もこの地域の安定が
欠かせないものである。このシーレーンは韓国も日本と同様であり、
NATOだけではなくて、日韓も含めて不安定の弧への対応をして
、欧米の負担を軽くしないといけないと欧米は考えて、NATOを
‘世界化’して豪州・韓国・日本などに「グローバルパートナーシ
ップ」を付与して、この不安定の弧に対応することを検討している。

しかし、このシーレーン沿いに中国が軍事基地を拡大し潜水艦を配
備している。不安定の弧全体を中国圏にする計画を持っていると、
欧米戦略家は考えている。中国の軍事戦略を透明化してほしいと欧
米専門家が言うが、中国は一切説明しない。このため、欧米戦略家
は中国の意図を欧米流論理で類推している。

中国からパキスタン、アフガン、イラン、シリア、スーダン、ソマ
リア、コンゴ、ナミビアと着実に勢力を拡大している。日米が激突
したのは太平洋の覇権を掛けたことで大戦争になった。これと同じ
構図が出来始めている。

中国の軍事・経済拡大ラインと欧米日諸国が維持している経済ライ
ンがクロスしている。覇権は米国から確実に欧米日豪など民主主義
国家群と中国など独裁国家群が争うシナリオを世界の戦略家は想定
し始めている。ロシアは民主主義国型の選挙はしているために、米
国はロシアを味方にしようとしている。だんだん、世界最終戦争ハ
ルマゲドンの形が明らかに、なってきている。

さあ、どうなりますか??
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米国:アフガンに7000人増派を検討 米紙報道
 【ワシントン及川正也】米紙ニューヨーク・タイムズは3日、複
数のブッシュ政権高官の話として、米国防総省がアフガニスタンに
最大7000人の米兵を増派する検討を始めたと報じた。派遣時期
は来年という。増派されればアフガニスタン駐留米軍は約4万人と
なり、01年10月のアフガン攻撃以来、最大規模となる。

 ブッシュ政権は北大西洋条約機構(NATO)諸国に増派を要請
してきたが、大規模派兵の協力は得られておらず、米軍増派は再び
台頭している旧支配勢力タリバン掃討作戦に向けNATO軍を補完
する狙いがある。

 同紙などによると、アフガン東部や南部ではタリバンによる攻撃
が激化。これに対応するため約1万人の追加兵力が必要という。ブ
ッシュ政権は国際治安支援部隊(ISAF)を主導するNATOに
追加派兵を要請したが、フランスが700人の増派を準備するほか
は部隊の増強や南部地域への移動などに積極的に応じていない。

 国防総省はすでに海兵隊3200人を増派し、ゲーツ国防長官は
米軍の一段の増派の可能性に言及していた。

毎日新聞 2008年5月4日 19時45分
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2008/04/29-11:06 アフガン駐留NATO軍、重大な兵員・物資不足
=英報告書 
【ロンドン29日AFP=時事】29日付の英紙デーリー・テレグ
ラフは、アフガニスタンに駐留する北大西洋条約機構(NATO)
軍部隊が兵員、物資の重大な不足に直面しているとの秘密報告を英
外務省が加盟各国に伝えたと報じた。

 3ページから成る報告書は、歩兵3個大隊のほか、ヘリコプター
、航空機、アフガン政府軍の訓練チームが不足していると指摘。さ
らに、米軍海兵隊2300人が11月にアフガン南部から撤収した
場合の治安維持への懸念を表明している。
 ISAFは約4万7000人がアフガンに展開、うち英軍は
7800人を派遣している。
 英米カナダは、NATO各国に対し、アフガンへの兵員、物資供
給面での一層の貢献を求めている。 〔AFP=時事〕 
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アフガンに長期関与 NATO、「戦略計画」を採択
2008年4月4日(金)16:25 産経
 
 【ブカレスト=黒沢潤】ルーマニアの首都ブカレストで開かれて
いる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は3日、アフガニスタ
ンの治安維持活動に関する「戦略計画」を採択し、長期的に関与す
る姿勢を打ち出した。長期計画の明文化は初めてで、NATOは今
後、本腰を入れてイスラム原理主義勢力タリバンなどの掃討に全力
を挙げる。

 計画では、NATOが主導する国際治安支援部隊(ISAF)が
アフガン国軍に対し、必要な訓練や物資を与えて、2010年まで
に約8万人規模のアフガン軍へと育て上げる。また、アフガンに派
遣している39カ国がそれぞれ持つ軍事権限をできるだけ抑えて、
現地のISAF司令官に柔軟な「最大限」の権限を与えるようにす
る。

 アフガンでは現在、ISAFの4万7000人が治安維持活動に
当たっているが、タリバンの攻勢により、兵力不足が顕著となって
いる。こうしたなか、フランスやポーランド、ルーマニアが相次い
で増派を表明したことで、米軍はタリバンとの激戦が続く南部に兵
力を投入することが可能となった。

 ただ依然として、ドイツやイタリア、スペイン、トルコなどが増
派を拒んでおり、米軍が必要とする6000〜1万人の増員は不可
能とみられる。
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NATO、アフガン支援へ増派・タリバンに対抗
4/3
 【ブカレスト=下田敏】北大西洋条約機構(NATO)加盟国は
3日に首脳会議を開き、急速に治安が悪化するアフガニスタンの部隊
増強を決めた。戦闘地域であるアフガン東部に仏が約1000人を増派
。米国とカナダが南部の治安維持を強化する。首脳会議には国連の
潘基文事務総長らが出席、治安維持と並んで国連主導による復興支
援を加速することを確認する。

 サルコジ仏大統領は同日の首脳会議で「アフガン東部への増派で
仏の軍事力を強化する」と語った。パキスタンとの国境地帯を含ん
だ東部はタリバンの攻勢が激しい地域で、現在は米軍が治安の維持
にあたる。仏の増派で米国はアフガン南部に部隊を振り向ける。
(07:03) 
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NATOが‘世界化’推進…韓国・日本などに「グローバルパート
ナーシップ」付与(2007)

NATO(北大西洋条約機構)が欧州を抜け出し、オーストラリア
や韓国などアジア国家と連携する‘世界化’を推進している。 

  フィナンシャルタイムズ(FT)紙は3日、NATOがアジア・
北ヨーロッパ国家との戦略関係強化を通した影響力拡大を模索して
いる、と報じた。 

  同紙によると、NATOは米国の主導でオーストラリア・ニュー
ジーランド・韓国・日本・フィンランド・スウェーデンなどに「グ
ローバルパートナー」の地位を付与し、定例フォーラムを開く案も
推進している。 

  こうした計画は米国とデホープスヘッフェルNATO事務総長が
主導している。 領域拡大を通じて、脅威を受けているNATOの政
治・軍事的地位を強化するためだ。 

  NATO報道官は「アフガニスタン戦争のような状況に対処する
ためにも、NATOと価値を共有して効果的な軍事力を保有する国
家ができるだけ多く必要となる」と明らかにした。 

  米国は今年11月にラトビアの首都リガで開かれるNATO首脳
会議で、「グローバルパートナーシップ」計画の追認を受けるとい
う立場だ。しかし同紙は「この計画は08年になってこそ実現可能
」と予想した。
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<フランス>NATO復帰遅れ、来年に 背景に米との確執
4月24日18時42分配信 毎日新聞


 【パリ福井聡】サルコジ仏大統領が表明している北大西洋条約機
構(NATO)軍事機構への完全復帰が遅れている。当初は今月初

めの首脳会議で復帰するのが目標だったが、来年にずれ込む情勢だ
。背景には、欧州の防衛で主導権を取りたい仏と、NATOを主導
する米国との確執があるとみられる。

 サルコジ大統領は昨年、「近く欧州防衛で強力な主導権を取り、
フランスがNATOに完全復帰するようにする」と発言。モラン国
防相も「08年3月の国防白書で詳細を明示する」と表明した。

 しかし、国防白書の発行は延期され続け、大統領も「08年末の
決定」を表明、実際には来春のNATO首脳会議で正式復帰となる
見通しが強い。

 仏は米国に頼らない独自路線を求め、ドゴール政権時代の66年
にNATO軍事機構から脱退し、核戦力強化を進めた。その後、
95年に軍事委員会などに部分復帰した。

 サルコジ大統領はシラク前政権と異なる親米路線を打ち出し、
NATO完全復帰を表明した。しかし、具体的交渉が始まるとシラ
ク時代と同様、米仏主導権争いが再発した。

 米紙によると、サルコジ大統領は、完全復帰の条件として、
▽独立した欧州防衛能力▽NATO内での仏の主導的地位を要求し
ている。さらに仏側は「欧州連合(EU)軍をNATOから独立さ
せ仏軍が主導する」構想を抱き、米側は「両軍併立はあり得ず、
あくまでNATO主導」と主張し、対立しているとされる。仏側に
は完全復帰を機に仏製兵器・軍需物資の調達増を図ろうとする経済
的意図も見え隠れする。

 ◇元仏空軍将軍「来春には決着」

 【パリ福井聡】仏のNATO完全復帰問題の背景について仏国際
関係戦略研究所のジャン・バンサン・ブリセ調査部長(元仏空軍将
軍)に聞いた。

 欧州防衛について(だれが主導権を握るか)の論議は、戦後、繰
り返し続いている。ブリュッセルには3キロほど隔ててEU軍と
NATO軍の二つの事務所があり、双方の関係は案件ごとに違い、
指揮系統も別々でこんがらがっていることから「欧州のスパゲティ
」と呼ばれているほどだ。

 もし、仏軍が完全復帰した場合、仏軍がイラクに大量破壊兵器が
なかったと見抜くなど、情報収集(インテリジェンス)能力が高い
ことから、仏軍がNATO内の欧州連合軍で主導権を強めるだろう
。さらに、仏製武器・資材の調達が進む可能性もある。このため
NATOを主導する米軍は、復帰を前向きには受けとめていない。

 しかし、フランスは段階的に復帰を進めており、大統領が決めた
完全復帰を止めることはできないだろう。時間と交渉の問題で、来
春には決まるだろう。  
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不安定の弧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

不安定の弧(ふあんていのこ:arc of instability)とはアフリカやバ
ルカン半島から中東を通って、東南アジア、朝鮮半島に至る、帯状
の紛争多発地域のこと。戦争や民族紛争の火種を抱え、テロリスト
の温床となっている。中には米軍基地の少ない地域が多い。

概要
今日におけるアメリカの世界戦略は豊かな油田のあるアフリカ北部
を「チャンスの弧」(arc of opportunity)と位置づけ、治安と経済
が安定している欧州を「安定の弧」(arc of stability)としてそれ
ぞれをアメリカの世界戦略基盤としてとらえるとともに、「不安定
の弧」(arc of instability)を明示し、米軍による関与の強化を主
張している。 2001年、アメリカにおいて4年に1度行われる米国防
見直し(QDR:Quadrennial Defense Review)ではアメリカは不安定の
弧について次のような見解が示された。

大規模な軍事衝突が起こりやすい 
力を伸ばす大国と衰退する大国が混在する 
豊富な資源をもつ軍事的な競争相手が出現する可能性がある 
アメリカの基地や中継施設の密度が他の地域とくらべ低い地帯 

アメリカの見解
アメリカはこの国防見直しにおいて、世界に展開している米軍のト
ランスフォーメーションを進めている。 とりわけ、不安定の弧戦略
に対しては極東における在日・在韓米軍の編成を改め、極東におけ
る兵力を中東までのチョークポイントである南アジアにシフトする
とともに、中東或いは石油資源の獲得の上で重要なアフリカ地域へ
の重点化を進めている。 ちなみに、この不安定の弧戦略とはもと
もと、地政学ではイギリスの地理学者 マッキンダーが同地域のこ
とを「危機の弧」(arc of crisis)と定義しており、このアメリカの
戦略は地政学的観点に由来しているものと思われる。マッキンダー
は海洋国家の対ユーラシア戦略をまとめたハートランド論を唱えた
学者であり、マハン同様、アメリカの地政学に大いに影響を与えた
人物である。この不安定の弧地帯はアメリカの同盟国日本にとって
も経済活動における重要な通商ルートであるシーレーンがあり、日
本にとっては貿易を中心とした船舶の航行上の安全、及び少資源国
で海洋国家である日本のエネルギー補給上においても重要地域であ
る。この点において日米両国は不安定の弧地域の安定化において利
害関係を共有する関係にあるといえる。こうしたことから、アメリ
カ政界の保守派やネオコンとよばれる新保守派層の中には日本の自
衛隊による自主防衛力強化と不安定の弧地帯での周辺事態において
米軍の後方支援の役割を果たすよう求める声が強い。

他国の見解
こうしたアメリカの世界戦略に対して、インドの首相マンモハン・
シンは不安定の弧を繁栄の弧(arc of advantage)と定義し、安定か
つ発展的なアジア形成に向けたアジアの共同体建設を提起している。

また、2006年11月、日本の外務大臣 麻生太郎は自国の外交政策と
して極東から、中央アジア、中東、欧州を含む広範な地域を自由と
繁栄の弧ととらえ、ユーラシアの外周で民主主義の定着を推進する
国家に対して、民主的なガバナンスの定着に必要な支援をしていく
ことを打ち出している。
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金融市場にとっての不安定の弧(2006/4/24nikkei) 

梶原誠デスク 
 中東からカスピ海を通って朝鮮半島に至る緩やかなカーブ。この
帯を国際政治では「不安定の弧」と呼びます。軍事・政治的な緊張
が多い地域が並ぶからです。米同時テロ以降、ブッシュ政権にとっ
ては目が離せない地域になりました。 

 金融市場の焦点でもあります。インド・パキスタンの核実験で世
界の投資家はリスクを取れなくなり、1998年のロシア金融危機を誘
発。それが米超大型ヘッジファンドLTCMが破綻する引き金にな
りました。2003年のイラク戦争も投資家心理を冷やし、世界の株式
市場の足を長い間引っ張りました。 

 ここ数年の焦点は弧の両端です。つまり中国と中東。共通点は貿
易黒字です。中国はモノの、中東は石油の輸出で莫大な外貨を稼ぎ
、そのお金は世界中の金融市場に向かっています。米国では財政赤
字、経常赤字の「双子の赤字」を抱えているのに債券市場が安定し
、その結果、金利が抑えられて消費を刺激しています。これは弧の
両端からあふれ出たマネーが米国債に向かっているのが一因です。
もし両地域が政治的な緊張に巻き込まれてマネーが来なくなったら
……。 
(Fのコメント)
そして、今SWF(政府系ファンド)として米国の金融崩壊を助け
る存在でもある。


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