盗賊都市

『盗賊都市』
(リビングストン,社会思想社)
【入手容易】

都市型のゲームブックとしては、『城塞都市カーレ』の双璧をなす名作でした。
冒険の筋書きは、シルバートンという都市が、サンバー・ボーン(リッチ)に狙われている。それを倒すためには、ポート・ブラックサンドに棲んでいるという大魔術師ニコデマスに魔法のアイテムを使って、倒してほしいと、シルバートンの市長に探索の依頼をされるのが始まりです。
しかし、あまりにもポート・ブラックサンドという都市が強烈な印象があり、しかも、都市の支配者、アズール卿の馬車で走り去るシーンや噂などが強烈で、サンバー・ボーンやシルバートンなどが影が薄くなっていて、なんのために冒険をしているのか分からなくなっています。(;-_-X;)。
それだけ、盗賊都市の中で棲んでいる人たちが、個性があり、生き生きと描かれています。ゴブリンが野球をしていたり、凶悪な吸血女が自然に生きていたり、その片隅で、鍵屋が地道に仕事をしていたり、海賊もいて、柄の悪そうな酒場のおやじや、浮浪者などもいる。こんな都市、ファンタジーの世界ではありそうだナァという感じが良く出ています。
なかでも、通りを出ると大きな広場に出て、そこには屋台がびっしりとあり、物売りや芸人がそれぞれ仕事に励んでいる。広場の中央にはさらし台があり、人々の喧噪の上に、トランペットが鳴り響くと人々は一斉に、さらし者に腐った卵やトマトを縛り付けて投げているシーンで、あんたも投げなといわれて、部外者と思われたくないので君は投げた。その隙に、老婆に金貨一枚くすねられていた。という場面がなど、盗賊都市の雰囲気が良く出ている記述が多く見られています。
『盗賊都市』は、社会思想社から出た5冊目のゲームブックで、それまで前作の『火吹山の魔法使い』
、『バルサスの要塞』、『運命の森』のように、ファンタジーを基調にしながら盗賊都市といういかがわしい感じをだし、シティアドベンチャーとして、モンスターを生活者として扱っているという視点で(前作は、敵対者としてモンスターがいたが)書いていて、読んでいる方でも、目新しい感じを与えました。

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