システム理論

 18世紀に自然科学から発展した理論であり、機械システム論とサイバネティックスシステム論に別れている。社会福祉援助技術においては、サイバネティックスシステム論を導入したもので、この理論は、生活体が環境に対応する際に、神経系が通信と制御情報の伝達とフィードバック機構により再び環境に働きかける制御機構を持っているという理論のことである。つまり、生活体(人間)が環境を受容し、制御し、働きかける機能があるということである。この理論を社会福祉に結び付けた初期の代表的な人物は、T.パーソンズである。彼の著書「社会的構造」「社会システム論」において、「構造−機能分析」という観点から、社会システムには境界維持に向かう傾向と、均衡を維持する傾向がありその必要条件として4つの機構パラダイムを呈示する。
 4つの機構パラダイムとは、1・適応2・目標達成3・統合4・潜在性である。これを更に発展させ、社会福祉の技術理論まで導入したのは、A.ピンカス,A.ミナハンである。彼らの著書「ソーシャルワーク実践における4つのシステム」のなかで、

 これまでは、サービスの利用者としか考えられない傾向にあったクライエントが、変革に影響を及ぼすアクションシステムの構成員として考えられる点に変化の可能性を1つの方向や対象に固定しないシステム理論の特徴が見られる。つまり、1〜4を全体と考え、相互の交流の中で福祉援助がなされて行くというものである。
 意義としては、社会福祉とは人間システムと環境システムの接触面への介入であり、介入は望ましい目標達成のための活動である以上、その目標達成の望ましさの決定には価値の主体的選択がなされなければならないとする。
 このように、「個人」とか「社会」というものは、不可分に統合されて機能している。社会福祉援助技術では、個人であるクライエントを、「状況内存在としての人」としてとらえられている。

生活モデルと生態学的理論

 人間生態学とは、自然科学から派生、発達した学問で、人間の生活と環境との関係に焦点をあてて考察する学問である。ここでの生活とは、継続した時間の流れを指し、その中で人間と環境との動的な相互作用の実態をとらえる。この理論を社会福祉に導入した代表的な人物は、C.ジャーメインとA.ギターマンで、これを基本理念として「生活モデル」の社会福祉援助技術を体系化した。彼らは、「人と環境との交互作用」に焦点を当て、個人と環境の間で交わる継続的な相互交換の中で、それを通じて絶えず相互に影響し合うことを呈示する。「生活モデル」において、人と環境の交互作用の下位概念として、「相互交換」の外に「適応」「ストレス」[対処」がある。
 生活モデルにおいても人間の成長と発達に関心を持つがそれらは人と環境の交互作用の結果として生じるものとしてとらえる。また、「環境」は物理的環境と社会的環境の2つに分けられ、2つは相互交流を続け、時間と空間の変化を通して文化を形成するとしている。「時間」は、生活時間からライフサイクルという広がりを持ち、「空間」は、物理的・心理的構成物があって住宅問題やプライバシー問題など社会福祉援助技術における生活理解の幅を広げている。社会福祉援助が必要な状況とは、「生活モデル」に沿って考えるならば個人や家族を取り巻く環境面の接触面における不適切な交互作用が問題を引き起こすとなる。援助の目標は、個人や家族の環境への対応力を高めるとともに環境側に位置する家族などの不適切な対応を修正するように働きかけることである。「生活モデル」の過程は時間的流れに沿いながら、初期、進行、終結段階に分けられている。
 このように、対象とする生活体の個別の生活をより実証的かつ具体的にとらえようとしているが、実践に適用する具体的方法論は準備されていない。だが、システム論も生活モデル論も社会福祉の従来の医学モデルからの変革をもたらし、様々なモデルが生まれることになる。この視点の拡大に伴い、伝統的な個人システム理論の武器であった精神分析の概念に加えて、個人・社会の両システムを統合的に理解するための概念が必要であるが、個人の社会的行動や社会のシステムを把握するための「役割」概念がその要求を満たすのではないだろうか。

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