【障害者福祉分野のレジメ】


レジメ内容
はじめに
1.障害者福祉の歴史
2.障害者福祉関連法の概略
3.障害者福祉の計画
4.障害の定義・特徴
5.福祉サービス内容
6.障害児・者の手当・所得保障
7.障害者福祉の機関・関連施策
8.障害者の思想・理論
9.障害者の心身面へのアプローチ
10.障害者の統計
おわりに

はじめに
本来であれば、みなさんが調べてまとめるのが学習になりますが、社会福祉士受対策講座と言うことで、レジメで何をまとめるのかをやや詳しく述べていきたいと思います。なお、

(かっこ)で括っているのは参照するべきテキスト、
【key】は、まとめる目安としての用語
【point】は考えるべき事になっています。

1.障害者福祉の歴史
(障害者福祉)
【key】国際宣言など条約の歴史、国内の歴史(法・施設など)の年表など、人名
【point】
 障害者福祉の歴史と言っても、範囲は多様にありますが、まとめる視点として三障害?知的・身体・精神の各施策の推移を核に、国際的な権利宣言、国際的な取り組みなどを補足していくと思います。まとめられたらよいかと思います。そして、三障害の中から、著名な人物の取り組みをその年代に当てはめていけばよいと思います。

 テキストや補助的なテキスト、ワークブックなどで分かりやすくまとめられているものがあれば、それをそのままコピーして張り付けてもよいかと思います。さらに、各法やサービス内容については、以下のレジメの中で詳しく学習をしていきますので、まずは時系列でざっとまとめてみましょう。
 いずれにしろ、歴史やその背景は細かく調べていけばきりがありせんが、過去問でも歴史を問う問題が必ず出ますので、概略だけでも押さえておく必要があります。まとめる際の一例として、以下に示しておきます。

知的障害

身体障害

精神障害

国際




1946 糸賀一雄:
知的障害児施設「近江学園」

1947 児童福祉法


1960 精神薄弱者福祉法




1949 身体障害者福祉法

1900 精神病者監護法

1919 精神病院法

1950 精神衛生法






1964 ライシャワー事件




1948 世界人権宣言




1959 児童権利宣言

1959 デンマーク・
バンクミケルセン
:ノーマライゼーション



過去問としてはこのような問題が出ています。

第19回障害者福祉論問題94
 1982年の国連総会で決議された「障害者に関する世界行動計画」における「リハビリテーション」の定義について、次の語句で適切なものを選びなさい。
「リハビリテーションとは、損傷を負った人に対して、身体的、精神的、かつまた(A)に最も適した機能水準の達成を可能にすることにより、各個人が自らの(B)手段を提供していくことを目指し、かつ(C)プロセスを意味する。」
 この他、障害者運動の歴史を問うもの、国際的な動向を問うものなどがあります。最近は、制度の年代の並べ替えなどの問題は出ていませんが、時系列的に覚えていくことは基本として大切かと思います。

 最近の動向として、新しい施策や法律に関しては、各種のテキストで詳しく言及されておりますので、それらをもとに学習を進めてください。ここでは、テキストでもあまり触れられない国際的な動向として、2006年12月13日に国連総会本会議において採択された「障害者権利条約」(以下、権利条約)について簡単に説明します。
 権利条約は、2007年3月30日から各国の署名・批准が開始され、署名90カ国、批准1カ国となっていますが、日本政府は、まだ署名を行っていません。権利条約が発効されるのは、批准国が20カ国以上ですが、署名は、批准する意向があることを示したものです。
 権利条約は、全50条で構成され、生活全般における広範な領域について規定されています。その中でも、「差別」の規定、「合理的配慮」の実施、「国内モニタリング」の実施が謳われています。これまでの障害者に関する人権宣言や権利宣言を踏まえたもので、ノーマライゼーションやエンパワメント、バリアフリーと言った考え方を取り入れたものとなっております。
 例えば、差別の規定は、「あらゆる区別、排除、制限であり…中略…あわせて、差別には合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む」の特に下線部にはノーマライゼーションの思想などが深く関わっています。
 合理的配慮とは、障害がある人がない人と同じような生活を享受する権利?例えば、レストランにスロープなどを整備して車椅子で利用することができること。また、一方で小さい個人経営のレストランが個人の負担でバリアフリーを行うことは難しく、なんらかの施策などで促されることが大切であることを謳っています。ここにバリアフリーの施策化も合理的配慮として謳われています。
 あるいは、障害者に関する世界行動計画?国連・障害者の10年の成果から、モニタリングの重要性が謳われたと考えられます。
 いずれにしろ、今後世界の動向を見ていく場合、この権利条約は国内にとっても重要となってきますので、注目していくとよいと思います。

過去問では第19回障害者福祉論問題95から
 国連の「障害者の権利条約」に関する特別委員会の検討では、障害者団体などがNGOとして、意見表明の機会が与えられた。○か×か

 など出題されております。これは、やや込み入った内容ですが、いずれにしろ成立のいきさつや内容について把握しておくことは、私の予想では必要なことだと思います。

2.障害者福祉関連法の概略
(障害者福祉法+エトセトラ)
【key】
障害者基本法、障害三法(知的・身体・精神保健福祉)、支援費制度、障害者自立支援法、発達障害支援法、特別支援教育法などなど
【point】
 基礎を学ぶ上で、全ての法令の何が書かれているかを調べることはほとんど不可能であると思います。なので、まずは法がどのような位置にあるのかを整理した上で、法の概略を覚えましょう。その後に、法の改正によって何が変わったのかを簡単にまとめましょう。そして、過去問を解いていく最中に、その法の何が問われているのか、そして必要な知識とは何かを埋めていけばよいと思います。
 その中でも特に障害者基本法は、成立過程から改正を経ての内容をある程度把握しましょう。また、改正のポイントの前後などもおさえておきましょう。
 昨年はほとんどありませんでしたが、今年度は、障害者自立支援法の出題もあるかと思います。テキストなどでしっかり押さえておきましょう。とはいえ、ここで気をつけて欲しいのは、確かに自立支援法は大切な制度ですが、そればっかりを一所懸命覚えようとするのはあまり得策ではありません。年金や対人援助のスキルに関しては他の教科での出題も見込まれますが、自立支援法は、障害者福祉論と応用として援助技術の事例の中で出る程度かと思います。障害者福祉論10題でいくつ出るのか…。まずは、自立支援法とそれに関した施策運用を勉強しつつも、力まず包括的に勉強することをおすすめします。
 その他の発達障害者支援法や特別支援教育法は簡単に。とはいえ、発達支援センターの設立では、社会福祉士の役割が明記されています。確認をしておきましょう。

 ところで、関連法は、障害者福祉の関連法は「社会福祉」分野だけではなく、「教育保障」、「雇用保障」、「所得保障」、「医療保障」、「その他」の分野と多岐に渡ります。実は、「社会福祉」の分野だけではなく、過去問においても、ハートビル法からの出題や交通バリアフリー法からの出題がなされています。後のレジメでも出てきますが、実は、障害者施策と障害者福祉は同じ意味で使われることが多いのですが、障害者施策の方が大きな意味合いで捉える必要があります。障害者施策とは、雇用施策、障害児教育、年金制度、文化・スポーツ施策などを含めているからです。
 そこまで手を伸ばすと試験勉強の幅が広がってきて手に負えなくなるかも知れませんが、いずれにしろ、以下に挙げる表の中から下線部の法令については目配せをして学習をすることをおすすめします。

医療保障

健康保険法

国民健康保険法

発達障害者支援法

老人保健法

理学療法士及び作業療法士法

原子爆弾被爆者医療法

特定疾患治療研究事業

公害健康被害補償法

社会福祉


社会福祉法

障害者基本法

障害者自立支援法

身体障害者福祉法

知的障害者福祉法

精神保健福祉法

児童福祉法

老人福祉法

介護保険法

社会福祉士及び介護福祉士法

教育保障

教育基本法

学校教育法

社会教育法

盲・聾・養護学校就学奨励法

特別支援教育法

雇用保障

障害者雇用促進法

職業安定法

職業能力開発促進法

雇用対策法

所得保障

国民年金法

厚生年金保険法

各種共済組合法

生活保護法

児童扶養手当法

特別児童扶養手当法

生活福祉資金貸付制度

労働者災害補償保険法

心身障害者扶養共済制度

その他

所得税法

身体障害者旅客運賃割引規則

日本放送協会放送受診料免除基準

公職選挙法

ハートビル法

福祉用具研究開発普及促進法

交通バリアフリー法

労働安全衛生法

高齢者、障害者などの移動などの
円滑化の促進に対する法律

 では、どのくらいまとめたらいいのかですが、過去問での学習で内容を埋めていくことを念頭に簡単にまとめる程度でよいかと思います。その一例として、
■発達障害者支援法
 2005年4月施行:@発達障害者の定義と法的な位置づけの確立、A乳幼児期から成人期までの地域における一貫した支援の促進、B専門家の確保と関係者の緊密な連携の確保、C子育てに対する国民の不安の軽減
 発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広範性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義
 このように理念、特徴、定義を簡単にまとめます。この他、改正されたものであれば、改正のポイントを書き添えるとよいかと思います。

過去問においては、たくさんありますので、2題ほど?
第19回障害者福祉論
 平成17年の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正の内容について正しいものに○、誤っているものに×をつけなさい 第18回障害者福祉論 問題94
「交通バリアフリー法」に関する記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけなさい。  繰り返しになりますが、過去問で出た内容を丁寧に解説を含みながら、一つ一つの法律で求められる知識のレベルを上げていくことが求められます。

3.障害者福祉の計画
(障害者福祉+地域福祉)
【key】
国、都道府県、市町村の役割、違いについて
【point】
 それぞれには微妙に役割や名称に違いがあります。また、障害者自立支援法によってかなりの変更がありました。それも含めて置きましょう
 若干の補足をしますと、これまで障害者基本法に基づき、それぞれの自治体において障害者計画の策定が進められてきました。市町村では2007年度に策定義務化なることから急ピッチで進められてきました。しかし、障害者自立支援法に施行に伴い、新に「障害福祉計画」が市町村と都道府県で策定されることが義務化されると共に、厚生労働大臣は「基本指針」を策定することが義務化されております。この国、都道府県、市町村の関係、その内容の違い、障害者福祉計画策定のスケジュールについては、簡単にテキストや図表を参照にまとめていただきたいと思います。もし、よくまとまっているものがあればコピーでもかまわないと思います。
 ここで押さえておくべきは、昨今では、こうした福祉計画策定にあたっては、住民の意見、障害者?当事者の意見を十分に反映するものでなければいけないと言うことです。そのため計画づくりにおいて、策定委員会での議論だけではなく、障害者実態調査、他自治体の状況調査、関係団体へのヒヤリングなど活発になされることが期待されています。
 その一例として、障害者基本法の2004年の改正によって、内閣府に設置された「中央障害者施策推進協議会」の第1回の会議で、30人の委員のうち障害者当事者12名、家族会3名と全体の半数が参画しております。
 当事者などが参画する流れは、市町村の計画が義務化されたことから、より強まっていくと考えます。
 さらに障害者自立支援によって、地域福祉への移行が重点化されております。その意味でも、地域福祉?社会福祉協議会との連携なども視野に入れておくとよいかと思います。
 
 直接的な過去問はここ3年ではありませんが、第17回障害者福祉論 問題94から
平成16年6月に改正された「障害者基本法」の次の空欄を埋めなさい。
第1条 この法律は障害者の□□□のための施策に関し、基本的理念を定め及び国、地方公共団体の責務を明らかにすると共に、障害者の□□□のための施策の基本となる事項を定めることなどにより、障害者の□□□のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もっと障害者の福祉を推進することを目的とする。(□□□は同一の言葉が入る)
この□□□には、
4.障害の定義・特徴
(障害者福祉+心理学+医学一般)
【key】
身体障害、知的障害、精神障害の各症状について
【point】
 各法の定義や各障害手帳の定義?程度について簡単にまとめましょう。とはいえ、昨今では発達障害や精神障害の分野で、障害の特徴を扱う問題も他の分野でありますので、その辺もある程度押さえていく必要があるかと思います。こうした障害の定義や特徴を扱っているテキストで、図表やまとまったものがあれば、コピーしてノートに張り付けてもよいかと思います。

 障害自立支援での給付の対象者についての定義では、「障害者」とは@身体障害者福祉法第4条の規定、A知的障害者福祉法のうち18歳以上、B精神保健福祉法第5条の規定(知的障害はのぞく)18歳以上の者です。
 障害児とは、児童福祉法第4条第2項の規定及び精神障害者のうち18歳未満の者を指します。なお、保護者とは児童福祉法6条に規定されています。
 また「障害程度区分」とは、障害者福祉サービスの必要性を明らかにするためその障害者などの心身の状態を総合的に示すものとして、厚生労働省令で定める区分を指します。
 障害の分類に関しては、国際疾病分類(ICD)や国際障害分類(ICDIDH→のちのICFこのことは後に述べます)、精神障害などの記述分類(DSM)がありますが、広範に渡っているため、そこまで手を伸ばすのは学習の幅が広がって大変なので、まずは法の定義で、例えば視覚障害とは何か、どのような範囲や程度があるのかなどを簡単につかむ程度でよいかと思います。
 ただ、先にも書きましたが、発達障害と精神障害?躁鬱、統合失調症、思春期精神障害などは別個に特徴をまとめられたらよいかと思います。最近は、引きこもり等が社会問題となっていまして、対人恐怖症や思春期におきがちな症状などがクローズアップされております。さらに、中には学校になじめない児童には学習障害や注意欠陥多動性症候群などを抱えている子どもがいることが明らかになっています。
また、働き盛りに起きる自殺の背景には、うつ病があるとか、路上生活者の中にはアルコール依存・中毒者が多いとかも取り上げられています。こうした社会背景とリンクする形で、目配せをしていくことが大切かと思います。

過去問として、第18回心理学から
自閉症に関する記述で適切なものに○、適切ではないものに×をつけなさい 第19回医学一般から
統合失調症に関する記述で適切なものに○、適切でないものに×をつけなさい  いずれにしろ、他の科目でも出題傾向のある分野ですので、過去問を解いていく中でこの項目の中に盛り込んでいくと自然と幅広く学習がなされていくと思います。
5.福祉サービス内容
(障害者福祉)
【key】
在宅、施設、地域福祉
【point】
 障害者の手帳、等級によって支給されるサービスが違います。また、児童と成人も分けて考えましょう。このサービスの違いは、援助技術の事例問題や障害者福祉論の問題でも出やすい内容ですので、一通りは勉強することが大切です。とはいえ、繰り返しになりますが、分かりやすくまとめられている図表があれば、コピーして張り付けておくだけでもよいと思います。
 福祉サービスは、言うまでもなく法的根拠を伴うものです。上のレジメの方でまとまた各種の関連法と密接にリンクするのですが、関連法でまとめたのは、あくまでも概略と規定です。過去問で勉強していけば分かるのですが、法律規定と福祉サービスの適用範囲の問題の質は若干違います。

例えば、第18回障害者福祉論の過去問で、同一の設問の中で、  この組み合わせは適切かどうか。
 
 簡単に言うと、在宅福祉サービス、施設福祉サービス、地域福祉サービスに絞って、どのようなメニューがあるのか、何が受けることができるのかの内容の概略を作り上げていきます。その上で、過去問で問われた内容などを補足していく中で知識を深めていくと言うことです。
 ところで障害者自立支援法によって、このサービス体系がかなり変わってしまいました。これは分かりやすい表や一覧、あるいは旧制度との比較などしたものがよくテキストなどで掲載されているので参照下さい。ただ言えることは、従来のサービスでは、例えば、各施設の機能によって、受け入れる障害や社会環境や条件、サービス内容が規定されていました。そのため、障害種別毎に分立した33種類の既存施設・事業体系がありました。しかし、自立支援では、6つの「日中活動事業」と二つの「居住支援事業」に再編されています。そのため、各種別の施設は、このメニューからの組み合わせで表現されることになります。
 いずれにしろ、後で述べる障害者福祉の機関・関連施策と密接に関わる福祉サービスの内容はしっかりと覚える必要があると思います。

6.障害児・者の手当・所得保障
(障害福祉+児童福祉+社会保障)
【key】
 障害厚生年金、基礎年金、特別児童扶養(または障害者)手当、労働災害補償、経済的負担の軽減
【point】
 いわゆる所得保障に関するまとめをここで行います。厚生年金や基礎年金の取得条件。どのくらいの額をもらうのか。通常の年金との違いは何かなどをまとめましょう。これは、案外出題される内容です。社会保障でも出題されております。
 労働災害による補償制度は、身体障害や精神障害になることでどのような保障があるのかをまとめるとよいと思います。
 いずれにしろ、障害者福祉論のテキストを中心に、社会保障や児童福祉論のテキストで補足しながらまとまるとよいかと思います。
 なお、国民年金の任意加入期間に加入しなかったことによって障害基礎年金などを受給できなかった障害者がいます。その要因は幾つかあります(学生無年金、障害認定の遅れなど)が、その福祉的措置として、「特別障害給付金制度」が2005年4月に創設されています。

 障害者の施策として、所得税、住民税、相続税などの優遇措置、NHK放送受信料の免除や郵便料金の減免、JRをはじめとする公共交通機関の運賃などの割引があります。あまり問題では細かいことは問われませんが、厳密に言えば、精神保健福祉手帳、療育手帳、身体障害者手帳、または児童なのか成人なのか、軽度なのか重度なのか、障害の種別によって細かい差異が存在します。大まかにまとめられるとよいかと思います。
 いずれにしろ障害者福祉分野それも相談業務に就いていないと、この手当の種類や所得保障はかなりやっかいな分野だと思います。それを見越したかのように、過去の出題でも割とつっこんだ問題が出ています。

第18回の社会保障論から
障害年金に関する次の記述で正しいものに○、間違っているものに×をつけなさい あるいは、第18回障害者福祉論でも
 障害者の所得保障に関する次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけなさいから2問抜粋して、  法令の全てを読む必要はありませんが、このように過去問で所得保障の条件などが問われますので、その都度まとめるのがよいかと思います。

7.障害者福祉の機関・関連施策
(障害者福祉+地域福祉論+高齢者福祉論+法学+社会保障論)
【key】
 日常生活用具の貸付、各種支援センター、更生相談所、地域権利擁護事業、成年後見制度、就労支援事業
【point】
 福祉サービスでは施設、在宅を中心にまとめますが、それ以外のサービスについてまとめます。特に地域権利擁護事業、成年後見制度、就労支援センターの取り組みに関しては、一体的に第18回障害者福祉論の事例にも出ていました。
 障害?特に知的障害の場合、軽犯罪や詐欺事件などが目立たない形で多数起きています。今後、在宅、地域福祉への移行が進むに従って、知的障害者が一人あるいは複数、街で暮らすことが多くなることと思われます。もしくは、暮らせるような制度が充実してくると思われます。その際、この財産管理や権利擁護の取り組みは大切になっていくことと思われます。
 他の科目を勉強する中で、この成年後見制度や地域権利擁護事業をまとめられることもありますが、障害者にとって今後重要な制度であることは覚えて欲しいと思います。

 就労支援に関しては、雇用制度との絡みで覚えるとよいかと思います。雇用制度とはもちろん、障害者雇用促進法を指しますが、この法律は、職業リハビリの推進、障害者雇用率制度、障害者雇用給付金制度などを設けて障害者の雇用の場を進めています。さらにこの法律は、2005年に一部改正され、精神障害者に対する雇用対策の強化など改善されていますので、テキストなどで確認していただきたいと思います。そして、この就労に向けた、人の動きや役割、流れなどを確認していただきたいと思います。
 
 日常生活用具に関しては、福祉サービス内容に重なるかも知れませんが、障害者自立支援法によって、補装具と日常生活用品の見直しがなされました。これは、介護保険と同じように、大幅な見直しでした。また割合出題されやすい所ですので、まとめられることをおすすめします。

 福祉サービスの項目では、主にサービス内容の概略でしたが、ここでは、機関にはどのような目的があり、その中で働いている人は、どのような役割や専門職性が求められるのかをまとめます。
 サービス内容と一緒でもかまわないのですが、大まかな各種支援センターや相談機関を抜き出して、そこで働く職種と機関の目的を簡単にまとめましょう。もちろん、まとまったものがあればコピーをして張り付けてもよいです。
 思いつくままに挙げれば、児童相談所、更生相談所、発達支援センター、障害者地域生活支援センター、障害者雇用支援センター、障害者職業センター、精神障害者地域生活支援センター、精神保健福祉センター等が挙げられます。
 いずれにしろ、これもまた出題数がある問題なので、過去問と照らし合わせながら知識をしっかりと身につけましょう。

過去問からは、第17回障害者福祉論から
正しいものに○、間違っているものに×をつけなさい  このように法の概略でもなく、福祉サービスの内容でもなく、各センターや事業、相談機関の内容についてまとめていきましょう。

8.障害者の思想・理論
(障害者福祉論+援助技術+心理学+社会福祉原論)
【key】
 ICF(ICIDH)、エンパワメント、ノーマライゼーション、発達理論、インクルージョン、マネジメント、心理判定(知能測定など)、その他の思想・理論
【point】
 制度運用や法律の概要が中心の障害者福祉論のレジメ構成だったため後半に持ってきましたが、障害者福祉の肝とも言うべき所ですので、しっかりと押さえておきましょう。とはいえ、障害者福祉に関わっていない人にとって、思想や理論は難しいかと思いますので、まずはどのような思想や理論があるのかを簡単にまとめる程度にしていきます。
 障害者福祉では、まずはノーマライゼーションがもっとも代表的な考え方ですが、リハビリテーションから発展したICFは、最近高齢者福祉の分野でも応用されておりますので、かなり注目する必要があるかと思います。また、障害者運動から発展したエンパワメント、教育分野ではインクルージョンが発達支援という視点から根強く提唱されております。その他、実際の制度運用などでは、高齢者のみならず障害者でもマネジメントが使われております。あと、障害程度区分では心理判定の技法が使われております。
 その他の理論として、障害者にたいする偏見や差別を助長してきたとする優生思想、エンパワメントと似たようなものとしてストレングス、最近では次に述べるようなアプローチ?技法にも関わりますが、ナラティブなどがあります。

 様々な意見がありますが、思想や理論はなぜ必要なのでしょうか。その理由に、私は思想や理論は究極的には他者の生の肯定への道筋を模索しているからだと思います。ノーマライゼーションやインクルージョンのように障害者も普通の人も当たり前の生活をする権利があるはずだとする考え方。ICFのように障害には多様な要素があり、それが障害者を形作っていることを構造的に明らかにする手法。エンパワメントやストレングスのように、その人の弱さを直すことだけに注目するのではなく、その人の持つ肯定的な、持っている能力に着目し、より能力を発揮させようとすること。ナラティブは、支配的な世の中の物語に異議を申し立てて、自分たちの価値観を肯定的に捉えようとする技法など、障害者というだけで社会の中から排除されやすい状態から、いかにその人達が排除されずに生きていけるのかを様々な角度から訴えていると言えます。そして、その理論が寄与するところは、障害者が生きやすい環境を作ることは、翻って自分も生きやすい環境であることに結びついていく?他者と自己の生の肯定がなされると言えます。

 他にもたくさんの理論や思想がありますが、まずは【key】で挙げた項目だけでもまとめられることをおすすめします。その中から、簡単に図式として提唱しておきます。

サービス提供者

サービス利用者

リハビリテーション→



←エンパワメント・自立生活

ノーマライゼーション

基本的人権

 障害者福祉の全ての思想に基本的人権とノーマライゼーションが、全ての思想や理論の基盤にあります。リハビリテーションは主にサービスを提供する側が障害者の生活の質に焦点を当てるような思想として捉えることができると思います。逆に、自立生活思想やエンパワメントはサービス利用者が問題解決能力を付けていく中で、利用者が新たなサービス提供者として活動していく思想として捉えることができると言えます。
 基本的人権が確立していくまでに、優生思想が対抗思想として存在していました。ノーマライゼーションは、近いところでは、潜在能力の開発という視点で、アマルティア・センの思想が昨今では社会福祉分野では盛んに議論されています。
 あるいは、リハビリテーションはICDIDHからICFへ変化しました。さらに、リハビリというと機能回復に目がいきがちですが、全人間的復権の意味として使われ、ADLのみならずQOLの快復も視野に入れた取り組みが進んでおります。
 エンパワメントは、様々な自立生活運動と切り離すことのできない思想です。セルフヘルプ運動、権利擁護活動と密接に関わっております。

 社会福祉士を取得し、もし障害者分野に関わることがありましたらこれらの思想や理論をじっくりと勉強していただけたらと思います。まずは、簡単にまとめられた上で、過去問とリンクさせながら必要な知識を身につけていただけたらと思います。いずれにしろ、思想の形成の背景、代表的な人、内容について簡単にまとめてください。

過去問からは3題ほど挙げておきます。
第19回障害者福祉論から
 障害分野におけるインクルージョンに関する次の記述で、適切なものに○、適切でないものに×をつけなさい 第18回障害者福祉論から
 国際生活機能分類(ICF)では、病気だけではなく、加齢や妊娠なども含む、「健康状態」に着目し、さらに「環境因子」や「個人因子」などの「背景因子」にも注目し、それぞれの要素が影響し合う双方向のモデルという考え方を示した。○か×か

第19回心理学から
 適切なものに○、適切でないものに×をつけなさい  心理判定や発達理論は、ともすれば障害者への心身面へのアプローチになりがちですが、どちらかと言えば、個別性と言うよりも全体的なものなので、ここでまとめられるとよいと思います。

9.障害者の心身面へのアプローチ
(心理学+医学一般+障害者福祉+介護概論+援助技術)
【key】
 後天性、先天性、障害種別、心理、治療方法、介護技術
【point】
 先の障害の定義では、障害の特徴を中心に学習をしますが、ここでは例えば、後天性の障害は自らの障害を受容するまでいろいろと心理的に葛藤します。それに対する援助者はどのようなサポートが求めれるかなどが問われます。その他、医学的な見地から各種の障害にどのように介助・アプローチをするべきなのか。どう振る舞ったらよいかについてまとめていきます。
 これは事例問題としても扱いやすい内容ですし、介護概論、医学一般でも出題しやすい内容となっています。また、心理的なアプローチは先に述べた発達理論と絡めて出題されます。言うなれば、実際に障害者に関わる時の具体的なアプローチ法となりますので、是非まとめておきましょう。

 とはいえ、これは身体障害者への介助の仕方?例えば片麻痺に対する身体補助(介護技術)やリハビリ的アプローチから思春期精神病の心の葛藤とそれへの治療(箱庭、遊戯療法など)まで幅広くあります。または、知的障害児や自閉症児の療育に関しても様々な技法(動作法、TEACCH、行動分析など)があります。これらをじっくりと学ぶことは困難ですので、以下のような枠組みでまとめられたらよいと思います。そして、過去問から抽出しながら一つずつ埋めていく方法がよいと思います。とはいえ、まずもって幅広く、様々なアプローチがあることをまとめておくことで、様々な科目に対応できるかと思います。


種類

アプローチ

身体障害

片麻痺

内部障害


治療方法や介助の際の留意事項、
後天的なものによる援助者の心理的
サポートなどが挙げられます。
特に各障害特徴を踏まえた介助面は、
押さえておく必要があります。

知的障害

自閉症

学習障害


TEACCH、動作法、遊び療法、語用論など、
各障害にはどのような療法が使われるのか。
ここでは発達的視点が大切とされます。

精神障害

統合失調症

うつ病


SST、薬物療法、精神分析、生活モデル、
入院・在宅での療養の注意事項などの
治療面の知識、各症状に対する援助者の
心理的アプローチなどが挙げられます。

 最近の試験の動向では、一般に各種別の障害者(身体、あるいは各精神症状)が陥りやすい心理状態の特徴(特に精神障害)からどのように援助者はアプローチをするべきかが問われる問題が多いと思います。または、発達障害支援法や特別支援教育法などにより、知的障害でも発達障害への具体的アプローチが求められています。よって、障害特徴による対応の違いや療育技法を問うことも予想されます。
 さらに昨今では、障害者自立支援では、精神障害者が他障害との統合が図られ、どうアプローチするのかがクローズアップされています。精神障害分野では、生活モデルが主流になっていますが、このモデルは医療モデルから発展した考え方なので、その違いについて簡単にまとめておくとよいと思います。

 過去問としては、これも科目にまたがって出題されています。2題ほど…

第19回心理学から
 障害の受容に関する記述で適切なものに○、適切でないものに×をつけなさい 第17回介護概論から  このように、障害の特徴そのものよりも、心理状態やどのように関わるべきかを問う問題を中心に、過去問と学習ノートをつなげていくとよいと思います。

10.障害者の統計
(障害者福祉論)
【key】
 身体障害、知的障害、精神障害、在宅・施設、発病率、年金の種類など
【point】
 障害者はどのくらいいるのか、その中でも在宅・施設・地域生活の割合はどのくらいなのか。疾病、例えば精神障害は、症状別にどの程度いるのか、その発病率はどのくらいなのか。あるいは、年金受給者の割合はどのくらいなのか。もしくは、障害者がどの程度生活保護を受給しているのか。などなど、厚生労働白書や障害者白書などを参照にして簡単にまとめてみましょう。
 さらには各障害の生活ニーズは何かなども分かればなおよいと思います。こうした統計にはいくつかの実態調査がありますが、大抵上記の二つに程良く載っていますので、参照してください。
 ただ、この統計は、だいたいが福祉手帳保持者を中心とした調査です。実は、この手帳保持というのがくせものでして、むしろ障害者の中で手帳を保持していない人が多数いることが明らかにされています。それが顕著なのが、精神障害者で、在宅で生活している精神障害者の約13%程度しか手帳を保持していないとされています。
とはいえ、それでもまずもって大体のニーズなどは統計から押さえておきましょう。もちろん、まとまった表があればコピーして張り付けてもかまいません。

 過去問ではここ3年あまり出ていませんが、全体的な対象の大きさなどは把握しておく必要があるでしょう。

第18回障害者福祉論から、
 文部科学省の調査(平成14年)では、発達障害により学習や行動面で特別な教育的支援を必要とする小中学校に在籍している児童・生徒は、義務教育段階での全児童・生徒の約15%とされている。○か×か

 10問という限られた中では、歴史から制度運用までたくさんの知識を問う以上、数字だけ追うわけにもいきません。さらにどの数字が問題に出るか分かりません。よって、常識的な範囲の数字を覚える程度で、厳密に実数を暗記する必要はないかと思います。

おわりに
 このように障害者福祉分野のレジメを組みましたが、その一つ一つが、かなりの奥行きがあり、私の勉強不足から述べきれなかったところもたくさんありました。とはいえ、ある程度の範囲をカバーできたのではないかと思います。
 社会福祉士試験では、かなり意地悪な問題やつっこんだ内容の問題が出ますが、まずはその分野の知識をまんべんなく身につけないことには、問題の意味すら分からないと思います。このレジメをきっかけにみなさんが知識を深められることを願います。

ホームインデックス