社会保障論
1.社会保障の歴史と年金の改正の変遷についてまとめる
2.医療保険と労働保険制度についてまとめる

社会保障の歴史
源流は、イギリス1601年の救貧法、1834年に大改正。
慈善事業イギリス:Aトレンビー、Sバーネットのセツルメント。慈善活動は社会保障を促す要因となった。社会調査による裏付け:Cブースの『ロンドン市民の生活と実態』(1901)Sラントリーの『貧困−都市生活の困窮−』(1902)
工場法(1819)による労働者の改善Rオーエン:18歳以下の労働の禁止。(ウェッブ夫妻)ナショナルミニマム(国民最低限の保障)の促しが行われる。
友愛組合による共済活動:相互扶助の観点から、いまでいう企業内共済の源流。
ビスマルクによる社会保険:1883疾病保険、1884災害保険、1889養老及び廃疾保険。拠出制であり、救貧法と異なる。1878社会主義取締法と表裏をなし、飴と鞭の政策で有名。社会改良で階級融和を図る。イギリスでは友愛組合による共済が発達しており、強制加入には抵抗があった。が、1911国民保険法(疾病と失業)
1930年代の世界恐慌と第二次世界大戦を経て本格的な社会保障が発展する。
アメリカ1935年社会保障法。世界大戦は、戦死者の遺族や傷病兵の保障。戦勝国は財政的にも余裕があった。
イギリス:1942ベバリッチ報告:ILOの「社会保障の道」
フランスPラロック社会保障プラン。
1950年になるとナショナルミニマムよりも広範に保障されるようになる。いわゆる2階建ての保障である。
1980年の見直し。福祉ミックス論の台頭。1979年サッチャー政権による民間への委託である。
ナショナルミニマム:国民最低限の保障。wロブソン〜貧困の最悪の諸原因を除去すべきための原理。雇用条件、レクレーション、健康、教育
普遍主義:資産調査を行い、特定の貧困者に選別的に行わないこと。
財政面からの経済的要請:支出増大を抑制しようとする動き。大義名分〜地域生活、ノーマライゼーションなどを利用し、併せて費用の抑制を図る→医療の高コストから低コストの福祉への移行。
社会保障の概念と範囲:アメリカなどでは社会保障とは社会的な所得保障であるが、日本では、所得保障、医療、社会福祉、保健・公衆衛生をも含む概念として用いられる。この他、社会保障関連制度では、住宅、失業対策である。
財政:少子高齢化による国民負担率と給付のバランスが大きく見直されないといけない。

日本における社会保障:1875憮救規則、1922健康保険法、1938厚生省、1944厚生年金制度。
第二次世界大戦後は、1946〜生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、社会福祉事業法、1958新国民健康保険法、1959国民年金法、1961国民皆保険・皆年金が成立。
1973福祉元年。年金給付のスライド制。1982老人保健法。1985年金制度の改正。基礎年金+報酬制度の2階建てになる。1989年では学生の強制適用、国民年金基金の創設。1994年では特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引き上げ。1996年日本鉄道共済、日本電信電話共済、日本たばこ産業共済の厚生年金への統合。2000年では特別支給の老齢年金報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げ(平成25年)、年金額の改正方式の物価スライドへの一本化、総報酬制の導入(ボーナスを含む)などが盛り込まれる。この他、学生にかかる国民年金の保険料納付の特例、育児休業中の厚生年金保険料の事業主負担分の免除。標準報酬の上下限の改訂(9.2万〜59万から9.8万〜62万まで)

年金の種類は多様であるが、国民年金(基礎年金)厚生年金(比例報酬)に分かれる。
受給される年金は、老齢基礎年金(年/80.42万円)、障害基礎年金(障害認定:初診日から1年6ヶ月後)(1級:年/100.53万、2級:80.42万円)、遺族年金がある。
老齢厚生年金、遺族厚生年金(比例報酬3/4+中高齢寡婦加算or経過的寡婦加算)、障害厚生年金

共に被保険者と国庫によって財源が支えられている。

国民年金基金は1989年の改正で設立。1991年に施行される。これは、国民年金しか払わない自営業者が任意で加入し、老齢基礎年金に上乗せする二階部分の年金制度の役割を担う。(物価スライドはない)

医療保険
国民皆保険の加入により低額で誰もが医療を受けることができるようになる。一般に健康保険といわれるが、正式には医療保険であり、健康保険の種類は多様にある。一般被用者保険(政府管掌健康保険、組合管掌健康保険)、特定被用者保険(公務員・船員など)、自営業者保険(国民健康保険)、地域保険(市町村国民健康保険)などがある。
この他、退職者医療制度(厚生年金を払っていた被用者と家族)、老人保健制度(70歳以上、あるいは65歳から寝たきり高齢者について医療保険の医療給付の対象から外して老人保健制度の医療を受けれるようにするもの)
企業・事業所を単位とする被用者保険が制度創設以後、適用人口の比率を一貫してあげながら発展、充実してきたことに比べると、国民健康保険は経済や地域状況によって左右されやすく、基盤が脆弱である。現在は高齢者と他の医療保険に加入できない低所得者のための保険集団と化している。

医療保険は、現物支給と高額療養費などは一旦保険者が支払った後に帰ってくる償還方式の二つを採用している。現金給付には、傷病または出産による休業補償としての障害手当金、出産手当金と出産一時金や埋葬料などの実費保障的な給付とがある。自営業者は休業による所得損失の確定が困難という理由で保険給付として実施されていない。
医療制度の問題点については、大学院のレポート参照

労働保険制度
社会保険の制度のうち、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険を総称して労働保険と呼ぶ。労災保険と雇用保険は、労働者の雇用関係を前提とした制度であり、労働者であるために被るかもしれない業務上あるいは通勤途上の病気・怪我、障害または死亡そして失業という固有の危険への保険制度であり、保険の社会保険とは性格を異なる。
1960年の改正で長期補償制度の導入・障害補償の一部年金化がなされる。1965年の個別事業主による労働基準法上の災害補償のための責任保険を大きく超えることになる。重度障害者から中道修会社への補償もなされる。また、リハビリテーションのよう後がはじめて使われる。1974年の改正でILOの給付水準を満たすほどになる。1990年の改正では全産業・前期簿を通じて一本化し「給付基礎日額」をスライドさせる方式に変更された。1995年の改正では介護補償給付及び介護給付が新設される。1999年には心理的ストレスによる精神障害などに係る業務上・外の判断指針の策定がされる。2000年では、過労死や定期健康診断における有所見率が高まっており、再検査などの2次検診および保健指導を労災保険の保険給付として行う。
労災保険については、農林水産業の事業の一部が暫定的に任意適用事業となっている以外、労働者を一人以上雇用するすべての事業に適用される。公務員は公務員災害補償法、船員保険法に基づいているので適用除外されている。
種類は業務災害、通勤災害に分かれ、療養補償給付、休業給付、傷病年金、障害給付、介護給付、遺族給付、葬祭給付がある。
労災保険年金給付と厚生年金・国民年金の給付と調整はされ、同一の事由によって重複支給された場合は、政令で定める一定の率を労災年金額に乗じて減額し、調整される。
あるいは労災保険と民事損害賠償での調整もなされる。〜労災が支給されている間は賠償の支給をしないでよいケースとその逆がある。
労働福祉事業では、労災リハビリ作業施設、労災就労保育援護費、未払い賃金の立て替え払い。これらの労働福祉事業は、所轄労働局長が直接行うものと、厚生労働省の外郭団体である労働福祉事業団が行うものがある。

雇用保険は、失業保険が前身にある。雇用保険は1975年から実施された。労働者が育児休業や介護休養を取得し易くし、その後の円滑な職場復帰を援助・促進することを目的とする給付も雇用保険の中で実施されている。
1947年失業保険法、失業手当法、職業安定法が制定。1975年に失業保険法を改め雇用保険法が施行。
1989年は主にパートタイム労働対策(短時間労働者の管理の改善などに関する法律)
1994年は高齢化と女性の職場進出に関する施策。高年齢雇用継続給付の創設、育児休業給付の創設である。
1998年は少子化・高齢化がますます進むこと。介護休業給付、教育訓練給付などである。
2000年は早期再就職を促進するための給付体系の整備(中高年リストラ層への休職者給付の重点化、再就職手当の見直し)、少子高齢化の進展に対応した就業支援対策の見直し。国庫負担の引き上げなどセーフティネットとしての役割を厚くする。
対象は、パートタイム・登録型派遣社員にも適用される。
この他、雇用保険三事業については雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業がある。
ちなみに2000年の完全失業者数は男性193万人(5%)、女性117万人(4.5%)となっている。雇用保険の受給者実人員は104万人、基本受給率は3.1%である。初回受給者数の性別構成では女性が52.4%出た回。年齢別では男性では45歳〜49歳が31.5%であり、女性では30歳未満が44.3%で最も高い。
2005.12.3

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