(中間報告)施設職員の自律〜知的障害福祉関係を中心に

構成案については、別記事を参照のこと

目的
 第三部を書くにあたってこれまでの論考を整理する。そして、第三部の見通しをつける。

変更点

以下、第一部と第二部の要約を行う

第一部
 福祉従事者は、福祉の心とか清貧こそが美しいという言説によって、労働者の権利がないがしろにされる傾向にある。福祉に関わっている人は、お金のことに文句を言わずに、利用者のために粉骨精励しろとか。それがまかり通っている。これに対し、本来的に労働者としての意識を持つことを目的としている。

第1章では、福祉労働の現状について述べている。賃金、非正規職員の割合、離職率などを調査研究や先行文献から論述している。施設長ですら40万円弱の低賃金状況、非正規職員の拡大、離職率は他職種に比べてかなり高く、民間施設では、5年で全ての職員が入れ替わるような状態になっている。

第2章では、福祉労働の流動化について制度面や社会的言説について論述している。制度面では、昨今の契約、市場原理の導入による労働保障の縮小、社会的言説では、女性向けの仕事である(アンペイドワーク)、感情労働、福祉職の対象の偏見から来る一般社会との断絶などである。

第3章では、本質的に労働者の権利とは何かを論じている。年休の取得、健康管理、労働とは単に賃金を得ることだけではないこと、プライベートとビジネスを切り離すことの重要性について述べている。経営者の言いなりになってはこうした権利は容易にないがしろにされる。

第4章では、具体的に、労働者の権利を守るためにはどうしたらよいかをモデルを用いて論じている。労働者の権利は、闘わずして得ることが出来ないこと。一人では太刀打ちできないから連帯することなどを強調している。連帯し経営者と民主的に話し合う場を創るのは労働者である。

第二部
 施設業務は、誰でも出来る仕事のように思われている。食事・排泄・入浴介助は誰もが行ってきているからである。あるいは、施設は利用者の権利をないがしろにしているといわれる。いずれにしろ、施設に対して批判し、それに携わっている業務を軽視する傾向にある。これに対し、施設業務の本来的な専門性とは何かを論じている。

第5章では、いわゆる脱施設の根拠を明らかにし、それに対抗する形の批判に目配せをする。その上で、歴史的な背景も加味しながら本質的に施設の持つ役割について論じている。施設は、制度や政策に影響を受けながらも人権や生存権保障のために存在し続けていることを明らかにした。

第6章では、利用者をとりまく言説について論じている。普遍化、ニーズというキーワードを手がかりに論じている。また、社会一般の障害者差別とそれに対抗する運動、理論(本論ではICFと障害者の医療)を論じている。その上で、対象者は、政策的に作られること。あるいは、市場原理・競争原理だけではなく対抗する形で発達権・生存権が常にうごめいていることを明らかにしている。

第7章では、施設職員−援助者の望ましい姿とは何かについて論じている。施設に勤務していると、ケアワークとソーシャルワークが混在し、何もかも一緒くたにされている。それをある程度明確にしている。また、何をどう学べば専門性につながるか考察している。ケアワーク一つにしても専門性が宿っていること、利用者から学び、自分自身で理論を形成することを論じている。

第8章では、実際にどのような方法で専門性や理論を把持していくのかを論じている。まず、日常業務の規定、第一部からうけて感情労働の意味について詳述している。その後で、第5章〜第7章を受けて、モデルを提示して現場自体が専門性を持つことが発展的日常業務につながることを論じている。

第三部
 ここから構成の段階にはいる。
 あくまでも以下の章立ては仮であるが、

第9章では、倫理はモラルとエチカがあり、職業上の倫理を語る場合、エチカに近いことを述べる。その上で、仕事は単に生きがいや自己実現だけではなく、より広い意味で容認されたものであることを述べる。気をつけるのは、福祉は愛の仕事だからといった簡単に済ませないことである。

第10章では、生命倫理に触れて、偏見と差別を批判する。その上で、障害者とのふれあいは、ケアという配慮の中で行われていることを述べていく。そこには、感情規則や暗黙知を形作る要素が多分に潜んでいること。そして、その繊細なケアの倫理に触れることで虐待は乗り越えることが出来ることを考察する。

第11章では、第9章と第10章を受けて、モデルを提示し、説明を加える。論点としては、第二部で発展的プロセスを経て日常業務をより良いものにしていくことの根拠に、倫理性があること。倫理性に支えられて実践が行われていること。理論形成も倫理性を問うことによってより有効性を得ることを述べていく。

第四部
 第四部は一章のみである。それは、第一部から三部まで述べてきた【労働者】【専門性】【倫理性】の連関図である。これまでの論述のエッセンスをまとめつつ、モデルを作成し、説明を加えていくことになる。
2006.9.24

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