今後のパソコン利用について



はじめに
介護保険の導入に伴い、老人福祉分野では現場でもパソコンの導入が図られ、ケース記録や様々な日誌が打ち込まれ、蓄積している施設も増えてきている。また、市役所などの行政においては、パソコンの導入が図られて久しい。
(これらは、業務の省力化と情報の重要性を把握している現代の姿である。)

以下、具体的に当施設でのパソコン利用の発展と予想される利用方法について述べる。

ケース記録のデータベース
施設の中には、ケース記録をすでに打ち込んでいるところもあるが、元々の提案は1996年頃とされる。ケアマネージメントや処遇の科学化などが提唱されてきていたこともあり、書くために書いている記録に終始して、ケースが個人の貴重な臨床体験が、個人に埋没し、職員同士、あるいは、異職間で共有できていないと言うことから始まっている。

ケース記録は、もっとも連続的に記録される、最も重要な情報である。
代々の担当者がどのように考え、どのように対応し、利用者はどのようなことがあったのか、それは過去の利用者との対話であり、今後の援助計画の重要な資料である。
そのためには、見やすい、どのようなことがあったのか検索しやすい資料作成を目指すには、パソコンの利用が最適である。

1)データベースでの管理
各棟と管理部門とパソコンをつないで、一つのパソコンに情報を集積させる。
管理部門のパソコンにデータベースを統一させて保存させて行くようなシステムを構築する必要がある。ケース記録は最重要な情報なため、おおもとは自由に書き込んだりしないようにする必要がある。

*データベースとは何か
関連した情報を一つのカテゴリーとして、たとえば、日付、氏名、住所、、内容など区切って入力することによって、目的によって自由に検索、並び替えを行うことができる書式である。
わかりやすい事例として、住所録、電話帳などがある。

2)ケースをデータベースで行うことの利点
たとえば、利用者の健康、行事、医療、問題行動、などカテゴリーに分けて、本文に記述を行い蓄積していった場合、時間軸で発作があったと記述された部分を抜き出したり、その本文を閲覧したり、また、医療と関わった記述などを自由に抜き出して見ることができる。そして、利用者にとって何が問題になって、どのような対応ができているのかを分析もできる。
(現在では、ケース記録は時間軸での列記で、項目も不明確な部分が多くしかも、混在しているため、問題や計画の所在が見にくい。また、書くための記録となっていて、管理にも問題がある。)


*ケース記録とは何か
看護部門、管理部門で作成された利用者の資料が一元的に閲覧できるようになると、思考を深めることができる。様々な分野で(宿直日誌、看護日誌、無断外出簿など)で書かれたことが、そのままシートに流れ一覧となり、現在の書き写すような手間がなくなる。
ケース記録を全部担当が書くのでなく、情報の集積として、利用者一人に絞った検索リストの項目を作ることでケースになる。よって、日々気づいたことだけを書くだけでよい。ここでのケースとは、チームワークを指す。

ケースの書き方に関しては、ここでは、私たちが現在書いているような程度でよいとする。特記事項を簡略的に書く人もいるし、毎日どうだったのかく人もいる。分類もたくさんあるよりも大まかにして、見やすくする程度でよいとする。中にはカテゴリーに含めれない事項もあるが、柔軟に書けるようにする必要もある。しかし、カテゴリーをもうけることで、意識的にどのようなことがあったのか明確にすることができる。

3)データベースと管理に関する発展
ケース記録に限定していたが、あらゆる記録、棟やクラブ日誌など、指導部のみならず、調理や看護、管理部門の利用者に関わるすべての文書のデータベースでの統一と管理がなされることにより、すべての情報を一元にすることによって必要な情報を並び替え、閲覧でき、新たな書類を作成するときに、精密なものを作ることができる。

4)最後に
ケアマネージメントと介護保険でなぜパソコンが必要だったのか。それは、上記のように、精密な情報の集積が利用者を正しくマネージメントするためであり、その為には、多面的情報の照合が必要と認識されたからである。

インターネットと施設、その発展性
インターネットの普及は、地域社会でもNPO活動の拠点になったり(阪神大震災などでネットワークが活躍したのは記憶に新しい)、自分の施設のPRも兼ねてホームページを開設して、様々な交流を行っている施設もある(情報交換や地域と行政への連携など)。
(これは、今後ますます増えていくことであろう。)

1)社内でのネットワーク
パソコン用語では、社内LANと呼ばれるものだが、各部署のパソコンが一つの端末となり、書類の提出の催促や書類の提出がすべて、画面上で行うこと。
これは、フロッピーを使わずにダイレクトに一括してホストコンピューターに保存され、各部署のパソコンはホストコンピューターに集積された情報を、必要な部分や分類されたものとして再構築し、様々な用途に応じて、新規の書類作成の材料とする。

市役所での業務処理が参考になる。住民票を例とすれば、市民から提出された住民票の記入欄の名前などを窓口の端末がホストコンピューターから引き出し、照合し市民へ必要な情報が送られる。そして、窓口で処理した一連の作業記録はホストに送られ、記録される。また、ほかの課との連携が必要なケースでも、別の課へメールで打診をし、照合などを移動せずに行っている。

社内ネットワークは、書類のデータベース化と同時に導入することで、より効果を発揮する。(社内ネットワーク=データベース化)

2)関係機関とのネットワークの共有
これは、現在あまり例がないが、将来的には拡大していく分野である。介護保険の充実、支援ソフトの共通化が、関係機関との情報の共有を可能にする。
介護保険の普遍的評価は、バラバラなプログラムやソフトでは、発展しないし、評価基準を正確に処理してくれるソフトが、行政主導で統一的なソフトが推奨されるようになるだろう。そのとき、行政への申請書の提出、関係機関への打診、必要な書類のやりとりが統一的な書式で共通のソフトでやりとりがされるようになること。

当施設を例に挙げると、児童相談所、療育センター、福祉事務所などへの書類の提出がネットを介して、共通の書式でのやりとりを行うこと。仮にデータベースを作っても、各事業所がそれぞれ独自であると共有化が図れない。

3)インターネットの活用
社内でのネットワークでは、いわゆる電子メールでの様々な指示ができるようになるが、関係機関の他に、外部へのネットワークをつないでいき、様々な交流を広げていくことができるようになる。
たとえば、全国の施設との交流や中央省庁の情報を引き出したり、イベントの呼びかけを地域に行ったりと様々な用途がある。
ホームページづくりは一つのきっかけを与える。施設のPRにもなるし、交流の場を提供することもできる。すでに、老人施設では、ホームページを開設している施設の全国マップのようなものもある。
また、ホームページを介して、施設が連携したり、交流会が定期的に行われているという事例も報告されている。

4)最後に
キーワードは、共有化である。共有化は、クリアをしなければいけないことが多くあるのだが、チャレンジをする価値は十分にある。はじめは、気負わずに導入をし、みんなが使いやすいように心がけるだけでよいと思われる。使っていく中で、いろんな意見が出ると思われるが、柔軟にまたこまめにその都度改善していけば良いだけである。データベースとネットワークは、今後、より発展していき、現場でもますます重要となって行くであろう。パソコンは「習うより慣れろ」である。


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