てんかんについての覚え書き
レンノックス症候群を中心とした、走り書き。覚え書き。
薬の辞典、神経系の薬の効能と併せて、脳と薬の関係を掴むためのメモ。
『最新てんかんの診断と治療』
てんかんと家族
症例:薬の概要
関連サイト
『最新てんかんの診断と治療』
発作の分類
部分性(焦点性、局地性)
単純、複雑、2次性全般発作
単純は意識は決して失われない
「焦点性」「ジャクソン型」
複雑部分発作では発作の間に意識が障害される
「精神運動」「側頭葉」
成人に見られるコントロールの難しい発作型の主要なもの
発作の「自動症の型」は欠神発作でもおこることがある。
急性不安発作は、自律神経系の反応を含む
2次性全体発作は、全般性強直間代発作痙攣を特徴とする。
全般性発作(最初から脳の両側半球が障害)
初期から意識が消失する
欠神発作のように意識消失のみを伴うこともあり(小発作)
発作後、正常状態にすみやかに回復する
強直-間代発作をひき起こすこともある。(大発作)
ほとんどは遺伝性で構造的な脳内病巣はない
様々な単純発作に見られる症状が出る
思春期や小児期に発病する
若年性ミオクロニーてんかん発作
群発はしない欠神発作、強直間代発作に特徴がある
しばしば年令とともに減少する古典的な欠神発作とは異なり、生涯を通じて持続する傾向がある
原発性全般性ミオクロニーのなかで治療抵抗性の一群であるレノックス・ガストー症候群から鑑別することが大切である。
レンノックスを示す小児の知能遅滞は、通常重度である。
それよりも重体なのが、ウエスト症候群がレンノックスに先行する。
反復性のてんかん発作(重積状態)
発作が長時間にわたり持続するか、発作の回復が見られない程頻回に生じること
てんかんの治療
単剤治療が原則として良い
副作用の判断、管理、最高の効果の達成を試みるための治療的決定が複雑になる。
薬物の血中濃度が治療範囲であっても、中毒作用が生じうる。
それぞれの薬物の果たしている役割の評価が困難になる。
単剤治療は治療薬物に対する患者の服薬の規則性を改善させる。
多剤併用療法は、慢性の中毒作用を発現させる機会を増大させる
単剤でも十分に効果が得られているという報告もある。
抗てんかん薬における原発性全般発作の抑制は、部分発作の抑制に比例して、一般により容易に達成できる。
抗てんかん薬は、長期投与されることから、潜行性に進展する把握しにくい副作用を認識しておくことが重要
認知機能、記憶力、注意力などの障害、課題解決能力の減退、人格障害などはきわめて緩慢に現れることがある。
薬の選択など
記号
CBZ:カルパマゼピン
DZP:ジアゼパム
ESM:エトサクシマイド
PB:フェノバルビタール
PHT:フェニトイン
PRM:プリミドン
VPA:バルプロ酸
薬の効用
部分発作のほとんどは、CBZとPHTによって有効。
PRMは、全身におよぶ副作用があるが耐えることができれば、CBZとPHT同様有効
PB同様、広いスペクトルを持つが、認知機能、鎮静効果が強い。
CBZは、単純と複雑部分の両方の抑制に有効。ただし、副作用も開始時期にある。
PBは、単純、複雑、強直ー間代性全般発作にきわめて有効。
鎮静作用があり、集中力と運動速度を障害する。
PHTは、PRM同様の効果があるが、慢性の美容上の副作用がある。
原発生全般発作に関しては、ESZ,VPAが有効である。
ESZは、強直ー間代発作、ミオクローヌスを合併していない時には、欠神発作の治療の選択薬物となる。
VPAは、ミオクロニー、強直ー間代が合併している患者に有効。
若年性ミオクロニー、遺伝性辺性進行性ミオクローヌスの主要な要素
クロナゼパムもVPA同様であるが、副作用が強いため第2選択となっている。
副作用
PBは、慢性の活気無さと学業成績の低下に関連する。学齢時には不適応
用量依存性、用量非依存性、特異体質、長期投与のための潜行性
心理的に最も影響をおよぼす薬物は、PHTとバルビツール酸系薬物
臨床薬理学
血清蛋白(アルブミン)と結合している。通常の検査室での抗てんかん薬の血清濃度を測定しているのは、全体の薬物濃度であり、遊離型の薬物濃度でない。
薬の蛋白結合が低いとすれば、薬物の中毒作用と治療効果は、より低くともあり得る。
小児期のてんかんに対する特別な配慮
点頭てんかんとレンノックス、ガストー症候群は、原発性および続発性を生じ、「小児のミオクロニーてんかん」に分類される。
原発性、特発性であれば、予後が良好である。ACTHを投与することが重要。
レンノックス、ガストー症候群は治療が難しく、複数の発作型の共存、脳波波型、発達停止および退行、脱力(転倒発作、欠神、および非定型欠神発作、部分ないし全般性強直ー間代発作
PB、PHT、CBZはこの症候群の脱力発作と非定型欠神発作を悪化させることがある。
特に、全般性強直間代発作の病歴があればそのかわりに、VPAを投与されるべき。
部分発作、2次性全般化発作が問題であればPB、PHT、CBZもありうる。
てんかんと家族(1990.7:金剛出版)R.レヒテンバーグ
てんかんの特徴
大脳皮質の表層において多くの神経細胞から統制されていなかったり、タイミングの悪い電気インパルスの発射があると発作がおこる。
てんかんの定義は反復する発作活動少なくとも反復する発作活動の危険性を意味する
誘発刺激
- 抗てんかん薬の不規則服薬
- 断眠
- 外傷
- アルコール離脱
- バルビツール剤離脱
- アンファタミン乱用
- 閃光刺激
発作閾値
脳の障害が値を低く(発作を起こしやすく)する。
症状として
- 脳など背景にある問題の唯一の症状であるなら、症候性てんかん
- 脳損傷など関連する神経学的所見もなければ、特発性てんかん
初期症状
- 凝視
- 夜尿
- 記憶の途絶
- 道をそれる
- 夜間の咬舌
- 睡眠中の筋肉の激しい痙攣
てんかんの類型
全般性発作
欠神発作
- たいていが子供に見られ、意識の一時的消失(瞬目などわずかな顔面の運動をともなくことがある)動作の中断など
- 発作の予期が出来ない
- 姿勢保持の喪失がない
- 尿便失禁はない
- 肢や体の激しい運動はない
- 発作後の意識障害はない
複雑部分発作も同様の症状になるが、意識の清明はすぐになく、混濁が数分から数時間続く
全般性強直間代けいれん発作の症状
- 発作の予期がほとんどあるいは全く出来ない
- 自傷の危険性の高い姿勢保持の喪失
- 意識喪失
- 尿便失禁
- 肢や体の激しいれん縮
- 数分にわたる発作後の意識障害
重篤な脳波異常と全身を巻き込む頻回のけいれん発作、点頭てんかん
全身の筋肉の一瞬のれん縮、ミオクロニー発作
幼児期に見られる筋トーヌスが障害を受ける発作、脱力発作
部分発作
複雑部分発作:全般性に移行することがある(強直など)
症状としては
- しばしば前兆がある
- 脳波上の異常は局在性に始まる
- 姿勢保持の喪失や四肢の異常運動を伴うことがある
- 意味のない行動が起きることがある。
- 意識の変容や喪失を伴うこともあり得る
- 発作の間に感情や志向の障害が浮きぼりになることがある。
- 発作後の意識障害は数分から数時間続く
深い意識減損の状態になる。発作後、見当識障害や動きの減少が起きる。
前兆
- 胃の不快感や嘔気
- 排便要求
- 不快な匂いや味覚:側頭葉の鈎回に由来している。嘔気と腹部のけいれん、発汗や蒼白化。
- 聴覚性ないしは視覚性の幻覚:音楽やブザー、脅威的である脅迫の声
- 一連の自動的な行動
- 離人感:自分のからだから遊離した感じ
- 既視感:現在起きている事柄に強い親近感を感じる
- 未視感:これまで何回も経験してきた事柄に親近感がわかない
単純要素性部分発作(焦点性運動発作、焦点性感覚発作、ジャクソン発作)
症状
- 予測はほとんど出来ない
- 限局した部分での脳波異常
- 焦点性運動発作での限局された四肢の運動
- ジャクソン発作での筋肉の収縮の移行
- 焦点性感覚発作での限局した部分でのしびれ感や熱感やちくちくした感覚
- 意識喪失はない
- 発作後の意識障害はない
- 全般性に移行することもある(二次性全般化)
治療
発作抑制の見通し
良好
- 全体発作のみの症状
- 複雑部分発作のみの症例
- 特発性の発作
- 知的障害、性格障害なし
- 正常脳波または軽度の背景脳波異常
- 発作発現後1年以内に治療開始
- 二歳から5歳まで発症
不良
- 複雑部分発作で強直間代発作を伴う症例
- 腫瘍、卒中、挫傷、髄膜炎などによる発作
- 低い知能指数、明らかな性格障害
- 前側頭部、または前頭部における脳波異常
- 治療の遅延
- 1歳以前の発症
抗てんかん薬
*あらゆる抗てんかん薬には治療域がある。血液中の薬剤が一定の濃度にあれば副作用はほとんどあるいは全くない。あまり反応を示さない患者では、血清中の薬剤レベルを定期的に測定しなけれなならない。
PHT
代謝を阻害する薬剤として
ジアゼパム、クロールプロマジン、メチルフェニデート、シメチジン、クロルジアゼポキサイド
PB
現在使われているうちで最も古い抗てんかん薬である。
安全性が高いが効用としては第二薬として使われることが多い。
血中濃度が60ミクログラムに達すると成人でも混迷をすることがある。
PRM
構造的にはPBに類似している。分解して一部はPBになる。
大発作、複雑部分発作などに有効。
CBZ(テグレトール)
複雑部分発作に有効な選択薬である。
ESM
小発作の選択薬。胃腸障害が副作用として強い。
VPA(デパケン、ハイセレニン)
どの抗てんかん薬とも構造において共通点はない。
いくつかの全般発作に有効。ミオクローヌスなど
ベンゾアゼピン
ジアゼパムはてんかんの重積の治療に経静脈的に投与するとしばらくの間は非常な効果をもたらす。
症例:薬の概要
レンノックス症候群、27歳男性。知的な遅れが目立つ。就寝後、毎回、大発作がある。予後はよい。
アレビアチン:0.33:ヒダントイン系(フェニトイン)
てんかんの大発作の治療に使われる。小発作には無効ないし悪化させることもあるので使用されない時もある。鎮静催眠作用もあることから、不整脈、頭部外傷による痙攣発作にも使用される薬もある。
類似製剤のクランポールは、大発作、焦点発作などの痙攣を伴うてんかん発作、精神運動発作、自律神経発作に効果がある。
副作用として、特に、めまい、運動失調、不眠、悪心、便秘などがおこることがあります。血液障害、薬によっては、肝障害・腎障害のほか、連用すると歯肉の腫れ、くる病、骨軟化症。
使用上の注意:勝手に中止すると重積状態になることがある。
過労や睡眠不足、飲酒、喫煙などが原因で薬の効果が低下して発作がおこりやすくなったり、副作用が強く出たりします。
他の薬と併用すると、この薬や併用薬の作用が増強したり、低下したりします。
デパケン:3T:バルプロ酸ナトリウム
各種のてんかん発作およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌、おこりっぽいなど)治療および予防に使われる。〜最近よく使われている。
発疹などの過敏症状を起こすことがある。他の副作用についてはフェニトイン同様。
他に、夜尿、鼻血、脱毛など。
まれに、血液障害、肝臓障害などがおこることがある。
錠剤を噛んだり、シロップを炭酸飲料と混ぜて飲むと口の中やのどを刺激する。他の使用上の注意はフェニトヘン同様
テグレトール:4T:カルバマゼピン
てんかんの大発作、精神運動発作のほか、てんかん性格(情緒不安定など)やてんかんに伴う精神障害の治療に使われる。三叉神経痛や舌咽神経痛の治療に使われる時がある。
ときに、バルプロ酸の副作用がでる。
他には、精神錯乱などがおこることがあります。
ザロンチン:エトスクシミド系製剤:眠剤
小発作、小型運動発作(ミオクロニー発作、無動発作、点頭てんかん)を治療するために使われる。
類似製剤として、クロナゼパム製剤がある。〜精神運動発作、自律神経発作を中心に。
副作用としては、一時的に眠気、頭痛、食欲不振、悪心、嘔吐などの症状が出ることがある。
フェニトイン製剤と併用すると併用薬の作用が増強されることがある。
発作の種類
焦点発作:皮膚部位の異常が、対応する運動機能または感覚機能の異常を生じる
精神運動発作:側頭葉てんかんともいう;目的のない反復運動や衝動的行動を取り、その間の記憶がない。
薬補足
バルピツール酸誘導体;フェノバルビタール
大発作、焦点発作、自律神経発作に有効、長時間の睡眠薬、フェニトインと併用することが多い。
バルピツール酸誘導体はもともと、睡眠薬で(熟睡薬)で、フェニトインは特異的に抗てんかん薬となる。
代謝は肝で行われ、連用すると薬物代謝酵素を誘導するため、ある種の薬物はバルピツール酸誘導体との併用で代謝が促進され、効果が減退することが知らされている。
関連サイト
最近の小児てんかん特にウエスト症候
小児てんかん
関連の論文を読み直しましたので、そのサマリー(日本語)を下記URLに置いておきます。
http://epilepsy.med.nagasaki-u.ac.jp/resources/west_ref.html
http://epilepsy.med.nagasaki-u.ac.jp/resources/early_intervention.html