ブギーポップ

『ブギーポップシリーズ』
(上遠野浩平,角川電撃文庫)
【入手容易】

これも友人から借りて、かなりはまりました。
ブギーポップとは、不気味な泡という意味で、世界が揺れ動くとき、日常が微妙にずれて、それが大きなうねりになりそうな、それが些細な始まりであっても、そうした予感にブギーポップは生まれる。
物語は、何冊にわたって、同時進行しつつ、また、微妙にずれていき、時間が重なったり、前後したりして、めくるめく世界を作り出している。また、1冊の物語も時間的にも、空間的にもかなり断片化されている。しかし、物語は容赦なく、なし崩しに押し寄せてくる。その、テンポの緩急が、構成的にとても現代的な小説です。
ここでいう世界とは、いつも暮らしている日常の違和感、心情と現実の葛藤の狭間。心象と願望と現実認識の歪曲した自分を取り巻く世界。それが、取り返しがつかなくなる前(狂気に踏み込む前)に、ブギーポップという止揚が自己規制として現れる。ときには、その自己規制が苦闘するが、勝利した後には、別のしかし自分にとって、ちょっと新鮮な日常の光景が広がる。
中には、その普段の日常に戻れずに、また、まだ戻れない事情を抱えて、彷徨っていく登場人物もいる。しかし、それは、希望として書かれている。
何よりこの小説の魅力は、日常はいろんな見方があるんだよ。そして、一人一人、ささやかも知れないけど、その人にとって抱えている問題があって、それを抱え続けるのは、ちょっと大変だし、乗り越えるのはもっと難しい。しかし、解決のきっかけはたくさんあって、同じくらい、見逃している。もし、それと対峙しなくてはいけないとき、それは、個人のとって、すごい冒険なんだと。ささやいているところかナァ。

この作者は、いろいろと作品を書いています。
今油に乗っている作者といえます。


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