鳳来湖の岩場を愛するクライマーの会

2005年7月28日 作成


[提言] 終了点について


今年5月からの岩場整備作業に伴い、ボルトの位置(プロテクション、終了点)を一部変更したルートがあります。そのことに関連して、プロクライマーの南裏保恵さんが文章を寄せてくださいました。南裏保恵さんは、ボランティアで岩場整備作業に尽力してくださっている一人で、当会のメンバーでもあります。
なお、この文章は『フリーファン』No.49(2005年7月)にも掲載されています。(HP管理人)



終了点は立ちこんで終了していますか?
鳳来、特に鬼岩の終了点は、リップ下に打たれている場合が多いのですが、それにクリップするだけでは完登ではありません。知っていましたか? 実際に終了点クリップだけで降りているクライマーに声をかけると、大半は「そんなこと初めて言われました」と言うから驚きです。
終了点へ立ちこむか否かは、嗜好の問題ではなく、フリークライミングのルールです。基本的なことをわからないまま、かなり高グレードのルートを登っているクライマーもいます。今一度、自分がやっているフリークライミングという行為は、いったい何なのか、考える必要があります。そういう点では、ボルダラーのほうが、よっぽどフリークライミングを理解していると言えるでしょう。

鳳来の終了点事情
以前の終了点は、終了のボルトからハングのリップ下まで、長いスリングやロープを残置していたため、非常に目立つものでした。
2000年、鳳来にアクセス問題が発生し、登攀禁止という最悪の事態にならないために、岩場の景観を第一に考えたルート整備を行ってきました。ボルトは、目立たぬよう着色し、打ち変え。終了点は、強度的に可能な限り、ハングのリップ際に移設し、目立たなくて、しかも強度のあるチェーン等に代えました。それというのも、完登後のロワーダウンの際、エッジでロープが磨耗するのを防ぐための安全措置だったのです。決して、それ以上は登ってはいけないのだ、などと誤解しないでください。

ボルトばかりを追いかけるのはやめよう
以前のような長いスリングの終了点のままだったら、クリップしても、せめてボルトのあるところまでは登るべきだと自然にわかったものです。しかし現在のような、リップ下にある終了点では、それより上にボルトは見当たらないので、それ以上、登らないで降りてしまう傾向にあるようです。ですがそれは、ボルトだけを追いかけてしまうという、スポートクライマーの悪い習性です。 フリークライミングは、両手を離せる場所から、次の両手を離せる場所までが1つのルート。平山ユージのレッジ・トゥ・レッジの試みも、我々一人一人に通じるスタイルだということを認識してください。

 

北海道・名寄見晴岩の筆者
右上に古い終了点が見える
(©Kenji Iiyama)
他のクライマーへ伝えてください
私も駆け出しの頃、鬼岩でパレードを登っていたクライマーに、福原信一郎さんが「そのルートはマントリングしないと終了じゃないんだよ」と注意しているのを聞いて、はじめてそのことを知りました。その時は、なんでそんな細かいことをうるさく言うんだろう、と思ってしまいましたが、それは、福原さんの親心だったということを今ではわかります。クライミングのことを知らないで、誤解したまま登っているクライマーをほうっておけなかったのでしょう。
岩場には、全国からいろんなクライマーが来るので、他のクライマーがやっていることなんか知ったこっちゃないという考えの人も多いでしょう。が、せめて誤解したままの後輩クライマーに、親心を持って教えてあげてもらいたいものです。
「オレより強くなれ」の叱咤激励の意味も込めて、「最後で立ちこまないと完登じゃないぞ、もう一回登れ」と。

 
text by 南裏保恵

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