峯 眞佐雄 奉職履歴

 

昭和20年 7月14日

故勝山 淳海軍少佐 航海日記

 

七月十四日 曇

此の日 大丈夫の首途の日ぞ 徳山湾内眠れるが如し 来し方を回顧すれば万感無量

 

〇五〇〇 

朝礼寸前の湾内を眺望し 今眞に大日如来の出でんとする彼方には思ひ出の数々を秘めたる蛇島

その向いに廃墟と化せる徳山 その右手に大島 追ひ行けば粭島 岩島 州島 馬島

又転じて首を左に向くれば 思ひ出の仙島 黒髪島 樺島 漂浪せる○○

一つとして思ひ出ならざるはなし

 

〇九三〇

今懐かしい大津島基地隊を離なれんとす

可愛い定員(締め上げたる役員、電信員)張り切った下士官搭乗員

種々迷惑を掛けた掌整備長 整備士 弟の如き目に入れても痛くない候補生の顔

斯くまでも不肖を頼み下される指揮官 司令の顔々

何故にやらずに置くものか

必ずきっと木端微塵に粉砕せん

桟橋を離れんとする秋の 村上  宮崎の顔々 何故か斯く心に跳まんとは肉親の愛

散る桜 残る桜も 散る桜

眞にさうだ 吾々大津島にての四人も 来る幾日かの後には二人 三人と征く

そしてその日こそ一大決戦の時なのだ

どうか体に気を付けて青年士官の意気を示して呉れ

斯く程までに期の有難き事を感ぜし事無し

宮崎  村上 皆 達者にて後を頼む

 

ハウスに乗りて 遠く見渡せば瞼に浮ぶ顔 何時か涙一つ 中に遥か調整場の彼方紅一点

今第一線に出出撃 天晴れ敵艦を轟沈せんと意気込みける余の胸にひしひしと迫る眞忠こそ

一生一代の忠に非ず 子々孫々末代に傳わる忠なり 一生一代の忠はそれこそ微々たるものなり

此の時 余は余の志を継ぐものを 併し之も はかなき夢

花も盛りの二十二才 今 神國の捨石とならん

愈 吾が栄光に映える伊五三潜 出撃

長官の最後の訓示 身の重責ひしひしと身に迫る

又しても司令 指揮官の顔々、候補生、整備長の面々 懐かしさわく

 

暮れて定かならず

何時か 思ひ出の湾口を出で 遥か島々を模糊の間は望むに至りぬ

半年有余才育まれし大津の基地の見納め 栄光燦たれ大津島回天隊 栄えあれ日本

今 生等狂瀾を既倒に廻すべく勇躍向わんとす

一七〇〇 豊後水道通過 愈檜舞台 見敵必殺

 

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更新日:2007/12/30