海軍大尉 小灘利春

 

平成9年度

特潜碑顕彰祭 参列報告

 

真珠湾攻撃の九軍神に始まり、西はマダガスカル、南はシドニ−を攻撃、更にソロモン、キスカほか各地に進出し

奮戦した特殊潜航艇の関係戦没者、殉職者あわせて四四五柱を祭神とする「嗚呼特殊潜航艇の碑」が広島県安芸郡

音戸町波多見 の八幡山神社境内にある。

 

本年度の顕彰祭は平成九年五月一七日(土)この特潜碑の前で御遺族、来賓を含め百余名が参列して

一三時三〇分より厳粛に執行された。

軍艦旗が新緑にひときわ映えるなか、加藤宮司執行のもとに顕彰の祭儀が進み、終わって「同期の桜」を

一同斉唱した。

特潜会世話人代表の八巻悌次氏より式典終了の謝辞と今後方針の説明があった。

八巻氏は特潜第二期の講習員であり、甲標的三〇号艇長としてガダルカナル攻撃に参加しておられる。

光輝ある特潜の会を象徴する最も大切な事業と位置づけられるだけあって、終始清々しい雰囲気に包まれていた。

 

慰霊の対象は、特殊潜航艇(甲標的、蛟龍)に搭乗し出撃した戦没者は勿論であるが、各進出基地で陸戦に

移行した後の戦死者、また一般潜水艦へ転属後或いは便乗中など他の場所、職域で戦死した特潜関係者も

含まれている。

なお、水中特攻艇「海龍」関係六四名の戦没者(特攻死はない)、殉職者がすべて包含されており、

「回天」の場合は特潜の艇長当時この人間魚雷を創始し戦没した二人のみである。

 

特潜碑は昭和四五年八月に建立され、以後年々顕彰の式典が続けられている。

付近にある大浦崎の広島県水産試験場は特潜の訓練地として搭乗員(艇長、艇付)約二六〇〇名を養成した「P基地」

のちの「第一特別基地隊」「第二特攻戦隊大浦突撃隊」の跡地であり、見学して当時を偲ぶことが出来る。

 

この碑に詣でるには呉駅発倉橋島方面行きのバスで約四〇分、波多見神社下車。タクシ−なら呉駅から約二五分。

平清盛が切り開いた有名な音戸の瀬戸も途中にあるが、呉市 の海上自衛隊潜水艦訓練隊の諸訓練設備および史料室は、

事前に申請が要るものの、年間三千人の一般見学者があるという。

特潜碑顕彰祭は今後とも毎年五月の第三土曜日に開催されるので、参加の折りはこれらを訪れてみては如何かと思われる。

 

海軍大尉 小灘利春

更新日:2008/08/24