海軍大尉 小灘利春

 

平成 6年

回天烈士ならびに回天搭載潜没潜水艦乗員追悼式

平成 7年 2月

 

大津島の回天追悼式に参列して

人間魚雷回天の発祥の地、徳山市大津島における慰霊、追悼の式典は昭和30年以降、地元有志の方々が中心となって

結成されている回天顕彰金が主催し毎年11月に開催されて来た。

 

平成6年は回天出撃の第一陣である菊水隊が米艦隊の前進基地であったウルシー泊地に突入した日に合わせて

11月20日に回天烈士ならびに回天搭載潜没潜水艦の五十周年記念追悼式として大津島回天碑の前で執り行なわれた。

島へは徳山駅新幹線口に近い徳山桟橋から出るフェリーおよび旅客船が就航しているが、徳山湾を渡るのに四〇分かかる

にも拘らずご遺族約一〇〇名を含め八〇〇名を超えたと報道される多数の人々が参加され最も盛大な式典となった。

船便も臨時に三便が往復とも増発された。

 

正午開式、国家斉唱、黙祷、式辞のあと、山口県知事、徳山市長、市議会議長により追悼の辞が述べられ、

次いで献花が遺族、戦友代表、各機関、団体代表、国会議員などにより次々と行なわれた。

当財団からは右の戦友代表を兼ねて全国回天会会長が参列、献花した。

式典の間に慰霊飛行の編隊が度々上空を通過した。

 

また、大徳山太鼓回天振興会の人々による勇壮な太鼓が演奏された。

海を望む回天碑の立つ回天記念結前庭には戦没者ひとりひとりの名前を刻んだ碑石が並んでいる。

この地こそ、これら搭乗員の宿舎があった場所である。

激しい太鼓の音を聴くうち、此処から次々と出撃し再びは還らなかった数多くの戦友の顔が目前に浮かんでくる。

「五〇年を経た今、若人達が御身等を偲んで力一杯演奏してくれているぞ」と叫びたい思いで、感動感謝の泪を抑

えることが出来なかった。

この回天太鼓は前年わが国を訪れた英国の国営放送BBCのプロデューサーも非常な感動を覚え丁寧に録画して行った。

テレビ番組に取り入れられ、いずれは世界各国で放映されると思われる。

 

最後に海上自衛隊呉音楽隊が内外の名曲を参列者のための演奏した。

今回の変った行事としては俳優森繁久弥氏の詩碑の除幕が式典の途中で行なわれた。

徳山市の小川市長から偶々回天の話を聞いた森繁氏が深く感動し、その席で「浮きつ島鼓海を訪ふ」と題する一編の詩を

したため市長に渡した。

その筆跡のとおり徳山のライオンズクラブが御影石に刻み、回天碑の傍らに建立した次第である。

森繁氏からはさらに今会の除幕に寄せる詩が前日送られて来た。

大津島の回天基地跡はJRの周遊指定地にもなっているが、観光的な要素もこれで加わることと思われる。

 

次の回天追悼式は平成7年11月12日(第二日曜日)と既に決定しており、これまでどおりの方式で式典が行なわれる。

 

海軍大尉 小灘利春

更新日:2007/09/30