海軍大尉 小灘利春

 

回天頭部の爆薬について

 

1.添付資料ほか:

@回天の実用頭部に装備した爆薬は九八式爆薬である。--- 海軍水雷史

. トリニトロアニゾ−ル 60% ヘキサニトロジフェニルアミン 40%を混合溶融して成型したもので、

. 回天の頭部はすべて舞鶴の第三火薬廠で充填を行った。

. 強力であるが衝撃に対する感度は著しく鈍く、耐弾性が高い。--- 火薬厰史

A信管には慣性起爆式の二式爆発尖を使用した。--- 海軍水雷史

B信管には安全装置が掛けてあり、解除するには解脱装置の把手を10回転廻さねばならない。--- 回天操縦操式

C手動の電気信管には掛金が掛かっている。蓄電池が既に効かないので発火電流は流れない。

D海中の腐食の進行は海面付近では錆びるのが速いが、百米程度の深い海底では酸素の供給が少ないので、

. 錆はあまり進まない。

 

2)武者広吉氏(呉、光海軍工廠で回天一型、四型生産を担当  33期技術士官)

@爆薬は海水に溶けないか、溶けても微量である。

A回天頭部の内側の蓋は10Kgの耐水圧テストを行っており、水深100mでも浸水しない。

. 信管部分も同様。

 

3)磯村八三郎氏(呉海軍工廠火工部 東大火薬科卒  33期技術士官)

@回天の頭部火薬は最高級の爆薬であり、水には溶けない。

A信管用の火薬は耐水性が劣る。

B呉工廠では回天頭部爆薬の充填は行っていない。

 

4)米今  呉海軍工廠砲熕実験部  戦後中国火工:砲弾機雷等分解処理)

@土木用爆薬は一般に水溶性であろ。

A粉状爆薬は水に溶けるものが多い。

B回天の爆薬は溶融して充填した爆薬であって、僅かに水に溶けるが、全体は変質が起こらず、

. 安定している。

C成分はアニゾ−ルとヘキシ−ルの混合であり、触れると殆どの人がカブレる。

 

海軍大尉 小灘利春

更新日:2008/08/24