甲飛第十三期殉國之碑保存顕彰会

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平成19年 4月 8日

第三十四回 甲飛十三期殉國之碑慰霊例祭

朗読された遺書

 

海軍少尉 小森一之君

戦友への手紙

伊五八潜にて出撃以来、至極元気。精神は澄んで一転の曇りもなく、北緯十度内外の太平洋は

きわめて静かで、一面のコバルト色。

艦首、艦尾に立つ白波が映えて、きれいに見えます。

そしてそれが入り日のくれないに輝く時こそ絵のように見えて、

これがいま決戦の最中だろうかと心を疑わせます。

谷道少尉殿

小森一之 拝

海原に神の潮をわきおこし 巻きて沈めん醜の敵艦

 

小森一之海軍少尉 遺品/富山縣護國神社 遺芳館

 

回天特別攻撃隊 振武隊・多聞隊  岡田 純 記

小森一之君は、大正十五年六月五日富山県に生まれ、

高岡工芸学校より昭和十八年十二月一日、三重海軍航空隊奈良分遣隊に入隊、

昭和十九年九月一日回天搭乗員として第一特別基地隊に配属、

昭和二十年七月、六隻の潜水艦と三十三名の回天搭乗員によって編成された回天特別攻撃隊多聞隊の一艦、

伊号第五十八潜水艦にて七月十七日山口県平生基地を出撃、七月二十八日グアム・レイテ間の海域にて

敵艦に突入、戦死されました。

当時十九才二ケ月、海軍一等飛行兵曹、戦死後功四級勲六等に叙せられ海軍少尉に任ぜられました。

 

同行した出撃搭乗員は予備学三期の伴 中尉以下予備学四期の少尉一名と甲飛十三期奈良空出身の一飛曹四名

の計六名でありました。

以下、伊五十八潜の戦闘詳報に基ずき小森兵曹の戦闘状況を申し述べます。

 

七月十七日の出撃以来、艦長橋本中佐は沖縄を基点とするレイテ・サイパン・ウルシー・パラオを結ぶ線の

交叉点付近が会敵の公算大と考え、次々と移動して七月十七日グアムーレイテの航路上に着き西に移動した。

二十八日早朝レーダーと潜望鏡の併用により水平線上にマストを発見した。

即ち駆逐艦を伴った大型輸送船であった。

直ちに回天戦・魚雷戦用意を発令したが遠距離の為、一四〇七に回天一、二号艇の発進を決意した。

一号艇伴 中尉、二号艇小森兵曹であった。

一号艇伴中尉が発進準備に手間取ったので、二号艇の小森兵曹が一番先に一四三一「有り難うございました」の

言葉を残して発進した。

続いて伴中尉が「天皇陛下万歳」と唱えて発進して行った。

両艇のスクリュー音は順調に聴音されつゝ遠ざかって行った。

海面は折から移動して来たスコールの為、目標の視認は出来なかったが、発進して約五十分後の一五二〇と

続いて一五三〇に爆発音が聴こえた。

伊五八潜は直ちに浮上したが、激しい雨の為、何も見ることが出来なかった。

 

以上が小森兵曹と他一名の戦死の状況でありますが、同時に出撃した四名は八月九日水井少尉と中井一飛曹が、

八月十二日林 一飛曹が夫々敵艦に突入戦死されましたが、

同期生一名は回天故障の為、終戦後の八月十七日伊号五十八潜と共に平生基地に帰還しました。

 

尚、此の間伊号五十八潜は小森兵曹が戦死した翌日の二十九日深夜午前〇時前に、米国の一万トン級重巡洋艦

インデアナポリスを命中魚雷三発にて撃沈しております。

この艦は広島に落とした原子爆弾をテニアン島に運んだことで有名で、

乗員が七百名戦死した事が米国内で大問題となり、戦後の米海軍々事法廷に当時の伊五十八潜艦長橋本中佐が

証人として出廷したことでも有名であり、又同艦より発進戦死された小森少尉を始めとする五勇士への供養とも

なると思い敢えて申し上げました。

 

さて、亡き小森少尉は、奈良空時代は二兵舎十二分隊に所属しており、

同分隊より回天隊に選抜されたのは二十五名で、彼はその中の一人であり、

これから遺文を奉読する近藤伊助君も、又斯く云う私も各々その中の一人であります。

二十五名の中の二十一名が三ケ月後に大津島基地に転じ、四名が光基地に残りましたが、小森君と近藤君は

その中におりました。

このように予科練、回天隊を通じて小森君と最も縁の深かった近藤君が、碑の前で遺文を奉読してくれる事を

彼も喜んでくれる事とおもいます。

以上で小森少尉の経歴と状況説明を終わります。

 

なお奉読者の近藤伊助君は二十年六月初旬に高知県須崎の第二十三突撃隊に配属され、

本土決戦に備えておりましたが、現地で終戦を迎えました。

この際に生き残り回天隊員としては唯一無二の体験をしております。

と言いますのは、突撃隊長の指名により実用頭部(一・五トンの爆薬入り)を着けた回天を操縦して

潜航・浮上を繰り返し須崎地区の一般人に秘密兵器をご披露した経験の持ち主であることです。

爆薬を装填した頭部を着けた回天を操縦した経験者は、戦死した出撃搭乗員以外には、

生存者は彼一人と言うことで、ご披露いたしました。 

 

  

遺書朗読(小森一之少尉の遺書)

経歴・状況説明/岡田 純 関西甲飛十三期会 相談役               朗読/近藤伊助 関西回天会々員

 

朗読された遺書    岡田  純

更新日:2008/04/20