基地回天隊 回天十型

資料提供:小灘利春様(海兵72期、第二回天隊長、全国回天会会長)

 

「回天」十型は本土決戦用として開発、終戦を迎え実戦には使用されなかった。

 

「回天十型」の特徴

.               推進装置に92式魚雷(潜水艦用電池魚雷)を使用

.                 電動機推進なので発進・停止が自由。後進も可能。

.                 出撃後でも基地へ引き返し充電することができる。

.                 スピードは酸素魚雷ほど望めないが、構造が簡単なので量産が見込める。

.                 整備が容易。訓練回数が増え、搭乗員の練度が短期間でアップする。

 

.               操縦席に透明プラスチックを使用

.                 深度20メートルの耐圧に問題がある。

.                 昼夜とも肉眼で索敵が可能。搭乗員の練度が短期間でアップする。

 

「回天十型」の配備計画

.               使用方針

.                 停泊鑑攻撃に主用(速度の点から航行鑑攻撃は不可能)

 

.               基地施設

.                 震洋基地施設に準じ格納庫・斜路を構築

.                 既設震洋格納庫で未使用のものをなるべく流用する。

.                 海岸よりやや内陸に引き込んで隠蔽。陸上起動により使用することを研究中。

 

.               配備計画

.                 昭和20年8月から10月までに504基を生産・配備

 

回天各型要目

 

回天一型

回天二型

回天四型

回天十型

全長(m)

14.750

16.500

16.500

9.000

胴径(m)

1.000

1.350

1.350

0.700

重量(t)

8.30

18.37

18.17

2.30

安全深度(m)

80

100

100

20

速力(kt)

30

40

40

14

搭乗員(人)

1

1(2)

1(2)

1

炸薬量(kg)

1.550

1.550

1.550

300

推進装置

九三式魚雷

六号機械

六号機械

九二式魚雷

燃料

灯油、酸素

過酸化水素

灯油、酸素

蓄電池

生産基数

約420

2

4〜6

3

 

「回天十型」の生産状況

呉海軍工廠水雷部にて少なくとも3基を試作。横須賀海軍工廠水雷部にて生産することになった。

 横須賀軍港の吾妻島に組立工場として大型トンネル5本を掘削。4基ほど完成されたと予想される

が終戦で生産中止。

 

京都の「回天十型」について

昭和40年頃、ホノルル空港入口の中古自動車屋に展示されていた。現在の潜望鏡とハッチ蓋は

この当時取り付けられたらく、生産当初のものではない。

その後、ホノルル市会社員の自宅庭に移されたものを、昭和52年に日本人の航空会社社員・山

田氏によって神戸に輸送された。当時、マスコミでは「大戦中に使用された回天である」とか「真珠

湾に侵入した酒巻少尉の甲標的」などと報道されたが、当然ながら全くの別物である。全国回天会

にて現地調査した結果、記録に残る「回天十型」と採寸結果がほぼ合致し、横須賀工廠で本格生

産される前に呉工廠で試作されたうちの一基である可能性が極めて高いと考えられる。

 

準拠:小灘利春 全国回天会々長 「回天十型の物語」

 

湯豆腐嵯峨野

京都府京都市右京区

  

回天十型

 

  

海行かば・・・                            魚雷観音   

 

平成14年 8月、この回天十型は呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)へ移管された。

 

現在の状況(平成22年4月) …回天十型の碑が建立されている

 

呉市海事歴史科学館

広島県呉市

  

回天十型

 

回天特攻隊

更新日:2010/05/03