醍醐長官 弔辞

 

資料提供:小野 正実様(故人甥)

勝山  淳海軍少佐:多聞隊(伊53潜)隊長のご実家に保管されていたもの。

 

 

弔 辞

 

謹みて回天特別攻撃隊員の英霊に捧ぐ

去る八月十五日終戦の大詔下り皇国は鉾を収めポツダム宣言受諾の已むなきに至れり

真に痛恨の極にして何を以てか之に喩へん 特に諸子が忠魂を偲びては哀々切々の情

胸に迫り五内為に裂けんとす

顧るに諸子志を海軍に立て勇躍大東亜戦争に臨みしが戦中途より利あらず 為に憂国

義に就かんとして回天特別攻撃隊員となり以て戦勢を挽回せんとす 其の闘魂真に鬼

神をも泣かしむ 而して克く秋霜烈日の訓練に従事し 一度出撃するや必死必殺の体

当り攻撃を以て敵艦船を轟沈するの偉功を樹て 以て悠久の大義に殉ず 真に其の忠

烈万世に燦たるべし 然れども諸子の武勲赫々たりしにも拘らず戦利あらず 遂に今

日の悲運に遭う 誰人か之を予期せんや 我等諸子の期待に副ひ得ず忠魂を慰むるに

由なし 嗚呼又何をか言はん

されど諸子が誠忠遺烈は万古国民の精髄たるべく 必ずや諸子の七生報国の精神は脈

々として永へに皇国を護らん

今や皇国は有志以来最大の苦難に直面し 今後に於ける荊棘の路は実に計り知るべか

らざるものあり されど我等諸子の特攻精神を継承し 堪え難きを堪え忍び難きを忍

び以て新日本建設に邁進せんとす 願わくば冥せよ

茲に恭しく敬弔の誠を捧げ諸子の英霊を慰めんとす 在天の霊来たり餐けよ

 

元第六艦隊司令長官

海軍中将 侯爵 醍醐忠重

 

回天特攻隊    勝山  淳

更新日:2003/09/14