「CB無線」(市民ラジオ, 「CB」は"Citizens Band"の略)は、電波法第4条の2(下記の太字箇条)に該当する無線局です。
(無線局の開設) 第四条 無線局を開設しようとする者は、郵政大臣の免許を受けなければならない。ただし、次の各号に掲げる無線局については、この限りでない。
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CB無線は26〜27MHz帯の電波を使うもので、出力は0.5W以下と定められています。主な用途は、工事現場で使われている大きなトランシーバを思い浮かべていただければよいでしょう。アマチュア無線とは異なり、使用できる無線機は認定を受けた市販機に限られ、機器の自作や改造はもちろん、アンテナの取り替えもできないなどの制約があります。市販のCB無線機は内部をいじれないように封印がされています。
日本において電波を発射して通信を行うためには、一般に、無線「局」の免許と、その無線局を運用する「人」の資格(無線従事者免許)の2つが必要です。それは放送局でもアマチュア無線局でも基本的に変わりありません。それに対し、CB無線局はかつて、「人」の資格は不要だが「局」の免許は必要な無線局でした。そのため、本ページ冒頭に示した免許状のように、放送局やアマチュア無線局などと同じく1局ごとに「きょうとBB3」のようなコールサイン(呼出名称)が定められ、誰でも(子供でも)開設できるにもかかわらず、れっきとしたな無線局としての体裁を持っていました。しかしこのCB無線は1983年以降、以下で述べる特定小電力無線と同じく、「局」の免許も不要となり、冒頭のような免許状は廃止されました。
CB無線は短波帯(HF)の電波を使用するため、アンテナが長い不便さがあり、また変調方式(音声を電波に載せる方式)は「AM」(振幅変調)と呼ばれる方式のため、音質が悪く混信に弱い難点があります。そのため最近は、後述する特定小電力無線などに取って代わられ、影が薄くなりつつあります。
「特定小電力無線」(特小)は、電波法第4条の3(下記の太字箇条)に該当する無線局です。
(無線局の開設) 第四条 無線局を開設しようとする者は、郵政大臣の免許を受けなければならない。ただし、次の各号に掲げる無線局については、この限りでない。
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上掲の電波法第4条の3に該当する無線局を「小電力無線局」と呼び、「特定小電力無線局」はその一部を指します。空中線電力は10mW(=0.01W)(PHSと同じ)以下で、周波数、通信方式、システム構成、用途などが定められており、また機器も技術基準適合証明を受けたものを用いることが決められています。その代わり、無線「局」の免許も、使う「人」の資格も不要です。特定小電力無線局としては、テレメータ(業務用、集合住宅検針システム、医療用)、テレコントロール、データ伝送(RS232C)、無線電話、ワイヤレスマイク、移動体識別装置、構内ページングシステム(いわゆる構内ポケベル)などがあります。これらのうちの「無線電話」が、私たちが楽しんでいる「特小トランシーバ」であり、街中での業務用や、スキー場や登山などのレジャー用に普及しています。ファーストフード屋の店員がヘッドセットをかけて厨房との間で交信していたり、道路工事現場で交通整理の人が使っていたりするのをよく見かけます。周波数は超短波帯(UHF)の400MHz台が割り当てられています。CB無線(短波帯)よりも高い周波数を使うため、CB無線と比べて電波の直進性が強い(陰に隠れた場所には届きにくい)性質がありますが、変調方式は「FM」(周波数変調)のため、CB無線とは対照的に、音質が良く混信しにくい性質があります。そのため、空中線電力がCB無線の50分の1しかないにもかかわらず、CB無線と同等あるいはそれ以上の到達距離が得られる場合があります。以下では、特に断りの無い限り、「特定小電力無線」とは「特定小電力無線電話」を指すものとします。
なお、同じ電波法第4条の3に該当する「小電力無線局」ではあるものの「特定小電力無線局」のカテゴリには入れられていないものとしては、無線LANやコードレス電話機などがあります。
特定小電力無線は一般に、業務用の連絡や、レジャーにおける同行者間の連絡などの実用に供されています。これらの用途は、近距離・相手方限定・情報伝送を主目的とするものといえます。それに対して、私たちは、遠距離・相手方不特定・通信行為自体を主目的とする使い方によって、特定小電力無線を楽しんでいます。この使い方はアマチュア無線と似ていますが、アマチュア無線には無い魅力があります。アマチュア無線と対比して、その魅力を紹介してみましょう。
もともと近距離の連絡を目的としている特定小電力無線が、実は遠距離通信にも使えるという意外性に、大きな魅力があります。アマチュア無線の場合、周波数帯や出力によっては地球の裏側とも通信できるものであり、意外性の魅力という点では、特定小電力無線に一歩譲るように思われます。私は、自宅マンションのベランダで、免許・資格不要な10mWの特小トランシーバによって、遥かかなたに霞んで見える山との間で初めて交信ができた時の驚きを、忘れることができません。
特小トランシーバは、免許・資格が不要な代わりに、機器の改造やアンテナの増強など、通信性能をハード的に向上させる工夫は一切許されていません。また同じチャンネルを他の局が使用している際には重ねて電波を発射できない仕組みになっていたり(混信防止のため)、連続3分以上の通信ができない(トランシーバにタイマーが内蔵されており、3分を超える連続通信の際には一旦数秒ほど発射を中断しなければならない)、といった、アマチュア無線には無い制約があります。しかし、実はこの制約の多さがむしろ運用上の工夫を生むことになり、誰もが同じ土俵で工夫を競い合うことができる魅力につながります。それに対してアマチュア無線は、出力を上げてアンテナを良くすれば必然的に通信距離が伸びるわけで、いわば財力勝負になってしまう面があることは否定できません。
特定小電力無線は、アマチュア無線と比べれば通信距離が短く、また我々のように遠距離・相手方不特定・通信行為自体を主目的とする使い方を趣味としている人は極めて少ないので、普段、不特定の相手方との通信が偶然成立するチャンスは、アマチュア無線ほどには多くはありません。その代わり、特定小電力無線にはレピータ(中継器)が認められています。レピータはトランシーバの電波を受信したら反応電波を返すようになっていますので、自分や同じ趣味の人が設置したレピータにアクセスしてみて、どんな場所からアクセスできるかを一人で試して回ることができます。レピータの設置ももちろん免許・資格不要ですので、自由勝手気ままに設置・撤去できます。アマチュア無線のレピータのように、日本アマチュア無線連盟によるコントロール下で設置運用に制約が多いのとは対照的です。また、業務用に設置されている特小レピータが街には多数存在していますので、意外な場所でレピータを発見する楽しみや、そのレピータがどこに設置されているのかを突き止める、アマチュア無線におけるARDF(電波を使った方向探査競技)のような遊び方も一人でできます。
アマチュア無線の通信内容はアマチュア業務に限定されており、従って仕事の連絡などに用いることは法的に禁止されています。それに対して特定小電力無線は、通信内容は一切限定されていないため、用途がぐっと広がります。
アマチュア無線は国が定めた呼出符号(コールサイン)の送出が義務づけられており、送信者が特定されてしまうのに対し、特定小電力無線の場合は、コールサインの代わりに自分で勝手に決めたコールサインもどきやニックネームを自由に使うことができます。従って送信者は自らの正体を明かすことを強要されず、インターネットのように無線の世界だけのいわばバーチャルな存在として振る舞うことが可能です。
居合わせた知人などに即、トランシーバを渡して通信相手になってもらえる便利さがあります。仲間作りが容易なのが特定小電力無線の特長です。
免許を要しない無線局や、その中の特定小電力無線局について、わかりやすく紹介されています。
1976年に京都市伏見区で開局したCB無線局「きょうとBB3」は、現在は東京において特定小電力無線を主体として活動しています。
きょうとBB3の局長は非常時通信技術の研究開発に従事しており、業務上の実験機器として以下の特定小電力無線レピータを設置・運用しています。これらのレピータは特定小電力無線を非常時通信に応用する技術研究のために設置・運用しているものですが、非常時通信システムは平常時から使いこなされていなければ役に立たないものであり、また、多くの方々のご協力を得て特定小電力無線の通話可能範囲を探ることも技術研究上の有益な活動になる、という考えから、一般の皆さんにも利用を開放しています。ただし実験目的で設置・運用しているものであり、将来に渡る安定的な運用は保証いたしませんので、重要な業務に活用することはお避け下さい。「こんな場所からアクセスできたよ」といったレポートをお寄せいただけましたら幸いです。
小金井第1レピータ |
機器故障のため、2002年10月10日をもって運用を終了いたしました。 |
小金井第2レピータ |
機器老朽化のため、2009年11月6日をもって運用を終了いたしました。 |
小金井第3レピータ |
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運用開始日 | 2009年11月6日 |
【写真】 |
設置場所 | 東京都小金井市・東京学芸大学付近 | |
地上高 | 60m(鉄塔頂上・露出設置) | |
指向性 | 全方位。 | |
アクセス可能エリア | 鉄塔の南東縁に設置のため、小金井市から見た東〜南側方面(三鷹市、調布市、府中市、稲城市、多摩市など)が特に良好と思われる。 | |
運用時間 | 24時間(電源はACより供給) | |
機種 | STANDARD RP808 | |
チャンネル | レジャータイプ半複信第4チャンネル |
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アクセス制限 | なし |
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使用方法およびレピータの反応の仕方 |
トランシーバのPTTを1秒程度押す。 ↓ レピータから中継開始音(ピピピ)を送信。 ↓ 通話を開始。 ↓ 通話が途絶えると、1.9秒間隔で終了予告音「ピッ」を2回送出し、更に1.9秒経過すると中継終了音「ブブ」を送出し、中継を終了。 |
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最長連続中継時間 | 3分 |
昭島レピータ |
2008年10月4日をもって運用を終了いたしました。 |
●始めたきっかけ
京都に住んでいた私は中学2年生だった1976年にアマチュア無線局JF3CGNを開局しました。同じ年に、確かアマチュア無線雑誌「CQ Ham Radio」に載った広告だったと思いますが、CBトランシーバを通販で購入し、CB無線局も開局したのです。そのトランシーバは27.040MHzの1波しか出せないものでしたが、AMラジオも内蔵された珍しいタイプでした(注)。電源は電池専用で外部電源端子(ACアダプター)が無くて不便だったため、電池ボックスに穴をあけて電源端子を取り付ける改造を施しました(電波に影響しないこういう改造は違法改造には当たらないとは思いますが....)。このトランシーバを使って、近所に住んでいた中学時代の先輩と交信実験をしたことを覚えています。
小遣いが足りなかった私は、このトランシーバをやがてハム仲間に売り払ってしまいました。確か5千円で売却したように記憶しています。
(注)ヨコハマAA973さんのホームページにあった「日本の合法CB無線機リスト」によりますと、私が所有していたのは、三洋電機(発売はブリジストン)のTA-95Rという機種だったようです。
●日本CB無線協会に加入
私が大学生になった1980年頃、CB無線を「無線従事者免許が不要なアマチュア無線」として扱うブームが起き、日本CB無線協会が誕生しました。私は前述のCBトランシーバを既に手放してしまっていましたが、CB無線の動向に興味を持っていたので、同協会に加入しました。1981年版の同協会のコールブック(CB無線局名簿)にも「きょうとBB3」が掲載されています。
●こんなことが....
日本CB無線協会に加入してしばらく経った頃のことです。中学生位の男の子の声で電話がかかってきました。「先ほどあなたと交信した者ですが....」状況が飲み込めなかったので話を聞いたところ、どうも私の名前を騙って電波を出している人がいたようなのです。交信相手がニセ者だったと知ったその子はがっかりした様子でした。どうして私の名前を騙られたかについては、同協会のコールブックが使われたとしか考えられません。私は実害は無かったものの、自分の名前を世の中に出すことには慎重さが求められることを痛感しました。
冒頭に掲げた「きょうとBB3」の免許状の裏面です。通信の方法などについて細かく記載されています。注意事項の内容を見ても、CB無線が立派な無線局として扱われていることがわかります。 | ||
トランシーバを使う際には、この証票(または免許状本体)を携帯することが義務づけられていました。 | ||
電波監理局から免許状とともに送られてきたリーフレットです。CB無線についての一般的注意が書かれています。 |