「アアいやだ、いけすかない男だよ」と、きざでいやらしげな若旦那はこう陰口をたたかれる。いやらしい・虫が好かないなど、毛虫やなめくじを見たときのような生理的な嫌悪感を表す言葉といったところです。
「いけ」はもともと古くからあった関東方言の接頭語で、江戸開府とともに江戸言葉にとりこまれ、すっかり江戸っ子の専売特許になってしまいました。
「いけすかない」「いけずうずうしい」「いけしらじらしい」「いけシャアシャアと」等々、ただの強調というよりも、卑しさ、恥を知らぬという意味合いがこめられ、江戸っ子気質によく適合したからでしょう。
この「いけ」シリーズ、今の世の中で大変使い勝手がよさそうで、ぜひとも復権したいところですが、女性に「いけすかない」と言われたら、どこの何がいけないわけじゃない、ただただ生理的に嫌いということ。男は立ち直れないかもしれません。
似た言葉に「いけず」があります。女が男の額を指でつついて「この、い・け・ず」てな場面(ほんとうにあるのかね)で使われる。これは上の「いけ」とは全くの別物で、「行けず」。強情・意地っ張り・悪者の意味ですが、反語としての使用はかくのごとし。
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