シュレーディンガー方程式<シュレーディンガー方程式とは> E=(1/2)mv2+U(x) ここで,U(x)は位置エネルギーである。 p=mv を代入して, E=p2/(2m)+U(x) … (1.1) 相対性理論によると, p=hν/c c=λνを代入して, p=h/λ … (1.2) (1.1)に(1.2)を代入して, E=h2/(2mλ2)+U(x) 変形して, 1/λ2=(2m/h2){E-U(x)} … (1.3) 波動方程式 d2X(x)/dx2=-(4π2/λ2)X(x) … (1.4) (1.4)は,従来からよく知られていた。 (1.4)に(1.3)を代入 d2X(x)/dx2=-(8π2m/h2){E-U(x)}X(x) 変形して, {-h2/(8π2m)}d2X(x)/dx2+U(x)X(x)=EX(x) … (1.5) これがシュレーディンガー方程式である。従来からよく知られていた波動方程式に,物質波の概念をあてはめたものである。物質波の概念自体は,相対性理論がもとになっている。なぜこの方程式が成り立つか不思議ではあるが,ニュートンの運動方程式のように,実験結果をことごとく説明しうる。 量子力学では, {-h2/(8π2m)}d2/dx2+U(x)をH,X(x)をΨ(x)で書く。 HΨ(x)=EΨ(x) Ψ(x)にHという数学的操作を行うと,出てきた微分方程式の解から,電子の波の形とエネルギーを求めることができる。 <微分方程式の解法> シュレーディンガー方程式 {-h2/(8π2m)}d2X(x)/dx2+U(x)X(x)=EX(x) … (1.5) (1.5)は二階の微分方程式である。 予備知識として,次の2つの事柄を知っていて欲しい。 1.n階の微分方程式の解はn個の定数を含む。 2.y”+py′+qy=0 の2つの解をu1(x),u2(x)とすると,その解は y=C1u1(x)+C2u2(x) <y”+k2y=0 (k2は定数) の解き方> y=eαx が解であるとすると, eαx(α2+k2)=0 そこで,2次方程式 α2+k2=0 を解くと, α=ki,-ki すると, y=C1ekxi+C2e-kxi が解となる。 ここで,オイラーの公式 eix=cosx+i sinx を用いると, ekxi=coskx+i sinkx e‐kxi=coskx+i sin(‐kx)=coskx‐i sinkx だから, y=C1(coskx+i sinkx)+C2(coskx-i sinkx) =(C1+C2)coskx+(C1-C2)i sinkx =Acoskx+Bsinkx … (2.1) (2.1)を二回微分して,方程式の解になっていることを確かめてみよう。 <方程式の簡単な場合の解法(箱の中の粒子)> (1.5)式で,簡単にするためにU(x)=0とすると, {-h2/(8π2m)}d2X(x)/dx2=EX(x) 変形して, d2X(x)/dx2=-(8mπ2E/h2)X(x) 8mπ2E/h2=k2 … (3.1) とおくと, d2X(x)/dx2=-k2X(x) … (3.2) ここで,kには条件がない。すなわち,電子1個が何の束縛もなく運動する場合,(3.1)よりエネルギーは連続している。 これを,自由粒子と呼ぶ。 (3.2)の解は,(2.1)である。 X(x)=Acoskx+Bsinkx … (2.1) ここで,原子や分子は端があるので, 0<x<L で U(x)=0 x≦0,L≦L で U(x)=∞ (電子は 0<x<L しか存在しない) という条件をつける。 この条件を「箱の中の粒子」と呼ぶ。 X(0)=0なので,(2.1)より,A=0 したがって, X(x)=Bsinkx … (3.3) X(L)=0なので, 0=BsinkL … (3.4) B=0では解にならないので, kL=nπ(nは整数) … (3.5) kには(3.5)の条件がついた。すなわち,電子が束縛されて条件がつくと,(3.1)よりエネルギーは不連続になる。 また,エネルギーは条件をつけると,式を解いていく過程で出てくることに注意したい。 (3.1)に(3.5)を代入して, 8mπ2E/h2=(nπ/L)2 したがって, E=n2h2/8mL2 … (3.6) エネルギーは正なので, n=1,2,3,… 結局,方程式の解は,(3.3)に(3.5)を代入して, X(x)=Bsin(nπx/L) … (3.7) <箱の中の粒子の計算結果がもたらすもの> E=n2h2/8mL2 … (3.6) n=1,2,3,… X(x)=Bsin(nπx/L) … (3.7) ここで,Lが大きくなると,Eが小さくなる。すなわち,電子の動く範囲が大きくなると,安定化することに注意したい。 (例)ヘキサトリエン分子 CH2=CH-CH=CH-CH=CH2 L=0.727 nm(分子の横の大きさ) h=6.626×10-34 Js(定数) m=9.1094×10-31 g(電子の質量) を(3.6)に代入して, E=1.14×10-19×n2 J …(4.1) この分子に光があたると,n=3→n=4の遷移が起こる。 ΔE=1.14×10-19×(16-9) J ΔE=hν=hc/λ c=2.998×108ms-1 より, λ=hc/ΔE=249 nm この値は,実測値247 nm(紫外線)とよく一致する。 |