"La Jollaからのボトルメール" 第一回 "Bottle-Mail from La Jolla" #1 (白泉社、桑田乃梨子、その他の物語) 平岩"Ted"徹夫6
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平岩です。
今日は同室のブラジル人もいないし(話好きなのでよく話をする)、8時からの数学が終わってほっとしたためか蛸井のホーム頁(こういう書き方のほうがぼくは好きだ)を久しぶりみて楽しんでしまった。
数学の宿題も終わったしね。毎週出るんだけど。
桑田乃梨子の評論、面白かった。白泉社の"それ"系のコメディーライターは依然として私もフォローしている。内容からすると380円(だったっけ? 単行本の値段。すでに日本はかなり過去のものに成り果てている)はとても無駄なお金に思える話ばかりだ。遠藤淑子しかり川原泉しかり。
もっとも川原泉は単行本の値上げ後新刊はなかったと記憶するが。
しかし、桑田はちょっと毛色が異なるのではないか。
桑田の作品について考えよう。
蛸井はどこかしら非日常的な設定とコメントしていたが、彼女の作品の主要なおかしさは"あまりに日常的な状態における"+"どこかしら非日常的な設定"があることだろう。だれしも経験する中学もしくは高校に通う時間。
キャラクターたちの自分の生活時間(自宅近辺での)はバックグラウンドとしてほとん ど現われない。
読者と共有できる時間のみで勝負をかけている。そこに彼女ははったりをかけるのだ。
桑田のセーラー服にかける情熱は目を見張るものがある。
時間設定も高校生ではなく、中学生が多いようだ(未確認)。読者はたぶん高校生が主であるにもかかわらずである。
学生時代とは桑田にとってどんなものなのか?
拡大再生産される彼女のコメディーの舞台は基本的に同一である。
ライフワーク(笑)と言ってもいいだろう。
ノスタルジー?
たぶん桑田の動機はこれだ。
桑田の過去なんぞ私のかんがえるこっちゃないが、思惑は見え見えだ。
読者も分かった上で、楽しんでいる(何人いるんだろう、読者は?)
彼女は理想的な過去を作成しようとする過程でコメディーという形式をとる。したがって、主人公が狼男でも学校外まではなしは大きくならない。
アメリカ製のSFではこうはならない。"えらいこと"になってしまう(ストーリーテリングが上手だからね)。
彼女にとって理想的な過去の夢はいくつあってもいい。楽しければ。
コメディーじゃなければ"すくらっぷぶっく"か、さくらももこになってしまうから、ストーリーテリング、作画で勝負できない以上(まあ、無理だよなあれじゃ)コメディー+短期勝負は最適解となる。
この最適解はポテンシャルは低い。
4コマ漫画のような瞬発力はない。長い話が書けるほど持続力もなし(証明済み。2巻がせいぜいだろう)。
作画に徹している作家(つまりたとえば梶原一騎(一揆のほうが正解か?)+作画者のこと。ジャンプにありがち)よりも絵がうまくない点ポテンシャルは低くなる。
したがって、桑田は最低な漫画家とも結論づけることもできよう。(それを楽しんで いる読者っていったい…)
また、作者と同様に(?)おしなべて主要登場人物はスローモー+低レベルな感情表現しかしない。
われわれはこの深い谷底におけるわずかな感情の起伏を読み取り楽しんでいるのだろう。
しかし、コメディーとはいえ基本的に"学園もの"なのだからなにも起こるはずはない。
設定が異常でも生活は最終的に異常にはならない。成り切れない。
桑田は過去の夢を夢もようのように書き続けている、深い谷底で。
ほんのわずかな読者がその谷に吸い込まれていくのだ。
彼女をしてこのようなstable nodeで書き続けさせるプロデューサが存在しうる点、白泉社は依然として他社とは異なる存在だろう。
だからこそ、戦略をたてニッチを狙う必要があるのだろうが、別冊という刑式でとにかく売れそうな作者の作品を乗せるだけになるのはじりひんな会社に有りがちな手法である。
蛸井が憂慮するのも良く分かる。もっともかなり前から(そう10年ほど?)白泉社はこうだったのだが。
少女むけのコメディーという分野を切り開き、依然として維持している(フォロワーはいなかった?)白泉社は、"中華三昧"を依然として出し続ける某社のようだ。
ぜひ98年も乗り切ってもらいたい。
最近、あのポストマンが映画化されたのはご存じであろう。どーも西部劇になってるみたいだけど。
スターシップトルーパー、宇宙の戦士までも映画化されてしまった。こいつはただのベトナム映画みたいなものらしい。強化服何ぞは期待してはいかん。
ポストマン公開時には家の近くの本屋にデビットブリンがサイン会をしていた。
ちょっと興味あったけど行きそびれてしまった。
ここに来る前に思ったんだけど、しばらく前に映画にもなったパラサイトイブ。
こいつはブラッドミュージックそのものだよね。話しははるかに後者がでかいんで好きなんだけど。ちなみにブラッドミュージックの最初の舞台となる研究所は家のすぐ近くです。UCSDはバイオ+海洋学で全米(全世界だってことだね)1、2位を争うところだそうだ。ブラッドミュージックはその条件を踏まえ、大学近くにスピンアウトした研究所を仮定している。
事実も同様で、いくつか研究設備、病院が存在する。ラホヤビレッジロードというのも実在。
SFの舞台がそのまま近くにあるのも変な感じだ。
そうこうしていたら秋学期の疲れがでたためか、大風邪をひいた。39から40℃ほど熱がでて頭がいたいのだが体の他の部分の調子は悪くない。発疹がでたので大学の学生用の病院に行く。ビールス性の風邪だそうだ。
吐き気とか、発疹とか単語知ってた? 医者がとても親切な人だったし真理子がいたので助かったが、サバイバルのための英語すら知らないことは問題だと強く認識した。
その後正月前後にもっと調子が悪くなったので大学病院のERに行ってしまった! この時点では筋肉痛でほとんど歩行不能になってしまったのだが、tylenolというとっても"安全な"解熱剤を飲めとしか指示されない。
発疹+40℃+歩行不能で、医者がいうには寝てろ、なにも悪いところはないそうだ。
注射何ぞはなんにもでてこなかった。薬は食事とは関係なしに飲んでいいという。新規に購入した体温計(もちろんF)をみると、平均基準体温は36.8℃とある。36℃以下の平熱を持つ私にとっては36.8℃なんぞすでに異常である。アメリカ人はつくづくタフであると認識を新たにした。
また、こちらの医者は本人の回復力を大事にしているとも。
今はようやく熱も下がり、授業に出ている。ときどき頭が痛くなるがたいしたことはない。
しかし歩くことが大仕事になってしまって苦労している。キャンパスが広いしね。
以前イギリスに行ったとき、たった一月の滞在だったのだがとても日本語の本に飢えた覚えがある。
今回も行く前はとても心配だった。荷物の梱包用の新聞まで広げて読んだという人の話しも聞いていたからだ。
しかし、現在滞在5カ月めだが、そのような気配はない。もともと醤油が嫌いな私にとって日本食は必需品でなかったことも驚きの一つだ。ほとんどの日本人は大部分の食料品を近くにある"ヤオハン"で購入しているようだが、わが家はまだ2回しか行ったことがない。近くのスーパー(ダイエーみたいなのが皆24時間営業!)ですべて事足りている。ここの生活はそういう点からもとても住みやすいところだった。
大学内の宿舎だから安全だし、とても静かだ。暖かいし。
中国系など移民がとても多いところなので、日本人だからといって差別されない。日本人としても識別はされない。見ただけでは出身はほとんど判別できないからだ。したがって、外人扱されず英語は達者なものとして扱われる。大変だけどね。真理子はさらに英語に磨きがかかりつつあり、かなり上達している。フィンランドとイタリア人の友達ができ、3人でいつも吊るんでいるようだ。30分位平気で電話で長電話している(もちろん英語)。"帰りたくない"と連発している。仙台は寒いし、言葉がね…。
ということで第一回"La Jollaからのボトルメール"はおしまい(冗談)。6カ月たっても届かない免許証のはなしなぞは次回といたしまする。
では、蛸井も体大切にね。また、mailする。
Tetsuo "Ted" Hiraiwa
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