佐藤順一のひみつ

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■まず、『みいファぷー』とは直接関係のない佐藤順一という人の話から始めてみたい。
 というのは、小中千昭氏という、主に特撮・ホラー畑をメインの活躍舞台としていた脚本家が『ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー』という、特撮でもホラーでもない魔法ものアニメの脚本を手がけるに到った経緯というのが、前ページのリストを眺め渡してみればおおよそわかっていただけるのではないかと思うのだが、そこでは、佐藤順一氏の名前を無視することは絶対にできないと思うからである。

■佐藤順一氏の名前はアニメに興味がない人は絶対に知らないと思う(笑)。
 でも、5年間にわたってシリーズが継続された某国民的美少女戦士アニメ(笑)や、日曜日朝8時半枠の『夢のクレヨン王国』『おジャ魔女どれみ』などの作品群は、子供のいる家庭の親ならば、まずタイトルやキャラクターくらいは絶対に知っていると思う。
 佐藤順一氏はそれらの作品のシリーズディレクターである(『おジャ魔女〜』は五十嵐卓哉氏との連名)。

■『とんがり帽子のメモル』の演出でそのキャリアをスタートさせた佐藤順一氏のその後の作品を見てみると『メイプルタウン物語』から、現在の『おジャ魔女どれみ』に到るまで、一貫して子供を主な視聴対象とした作品を手がけ続けていることがわかる。

■現在、TVアニメは深夜枠、衛星枠などを含めると実に膨大な作品数が放映されている。
 それはひとつには、放映後にLDなどのソフトとして販売することを前提とした製作システムが一般化したことが大きいのだと思うが、そのシステムは、作品が、その購買層である、それなりの購買力のあるマニア層をまず前提として作られる、という閉塞されたサイクルに陥る危険というものを、常に孕んでいる。
 もちろん、そのシステムをうまく利用して作家性の高い作品を送り出している人もいて、その代表格は、『新世紀エヴァンゲリオン』(そもそもそのシステム自体『エヴァ』の成功に端を発している訳だが)『彼氏彼女の事情』の庵野秀明氏や、『少女革命ウテナ』の幾原邦彦氏あたりになると思う。

■例えば、この2人の作品に共通していると思うのは、作品の持つ「アンダーグラウンド」な雰囲気で、近作においては、二人とも「自分のやりたいことをやりたいようにやっている」が、それは自分の名前だけでついてきてくれる固定ファンの存在を抜きにしては成立しえないスタイルである。
 いわば、「クリエイターとしての自分」が主であり、「作品」は従、という印象を強く感じるのである。
 それに対して、佐藤順一氏のスタイルは、あくまでも「作品」が主で、「クリエイターとしての自分」は従といえると思う。

■と、一口にいってしまうとなんでもないようだが、佐藤順一氏のこれまでの実績というものを考えてみると、これはもう並大抵のものではない。
 子供を対象としたアニメは、子供が「つまらない」と思ってしまったら、おしまいである。まして、子供はアニメを誰が作っているかなんてことは普通考えない。まさに「作品」だけの真剣勝負をキャリアのスタートから現在に到るまで、えんえんと続けて、しかも、成功し続けているのである。

■例えば某アニメ(笑)でいうと、佐藤順一氏は1年目と2年目の1クールまででSDの座は前述の幾原邦彦氏と交代しているのだが、合計5年間継続することになるシリーズの基盤は、間違いなく佐藤順一氏がレールを敷いたものである。近作である。『夢のクレヨン王国』でも、当初予定の「死神編」が1年間の年季を全うした後、さらに半年間「天使編」としてシリーズが延長されている。
 そして、現在放映中である『おジャ魔女どれみ』も、来年以降『おジャ魔女どれみ#』として新シリーズが始めることが既に決定している(なお、SDは五十嵐卓哉氏単独となる模様)。

■そう。佐藤順一氏の仕事のもうひとつの特徴としては、仕事を通じて人材を育て上げる、というのもあるような気がする。あるシリーズが軌道に乗ると、氏はいともあっさりと後進に道を譲ってしまうのである。「作家性」に重きを置くタイプの人はこういうことはまずしないのではないだろうか。
 先ほどから名前の出ている幾原邦彦氏、五十嵐卓哉氏などは、そうして頭角を現してきた人材といえるが、「作家性」の方に走ってしまった幾原氏と比べて、五十嵐氏は佐藤順一直系の弟子、という感じする(なお、五十嵐氏は『ファンファン』でもメインの演出ローテーションで腕を振るっている)。

■本当は、氏の演出の特徴などについてもページを割きたかったのだが、今回はあくまでも『ファンファン』の特集なので、その点はまた日を改めて、ということで(笑)。
 実は、リストを見てもらえばわかる人にはわかるが(笑)、ここ数年アニメ界でマニアックな話題を集めた作品には、佐藤順一氏が必ず(?)演出として参加していたりするのである。リストには氏が実名、変名で演出した作品を上げてあるので、興味のある人はそのあたりから佐藤演出に触れてみたりするといいかもしれない。


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