小中千昭のひみつ

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■実は、『ウルトラマンティガ』を観るまでの小中千昭氏に対するたこいの認識は、失礼ながら「あの小中和哉氏の兄」、というものであったことを正直に告白しなくてはならない(笑)。

■というのは、クリエイターとして名前が表に出たのは小中和哉氏の方が早いからである。
 アマチュアフィルムの世界では著名であった小中和哉氏が少年ドラマシリーズ・ザ・ムービーとして企画されたジュブナイルSF映画『星空のむこうの国』でデビューしたのは1986年のこと。
 その後、主に特撮の世界で着々とキャリアを重ね、現在は『ウルトラマンゼアス』『ウルトラマンダイナ』など主に劇場版のウルトラシリーズを代表作とする日本特撮界の顔の一人となっている。

■実は、たこいは小中和哉氏のアマチュア時代の作品を1本だけ観たことがある。
 それは、「地球に落ちてきた熊」という中編作品で、どうみてもぬいぐるみの熊にしかみえない宇宙人(?)をめぐっての騒動を描いた、アマチュアフィルムとしては破格にエンタテイメント性の高い作品で、役者の演技の稚拙さは気になったものの、非常に楽しく観ることができた。
 それで、小中和哉氏の名前は、商業デビュー前に知っていたわけなのだが、その当時は小中千昭氏には脚本家としての活躍はみられず、その作品の脚本も小中和哉氏であった。

■『ティガ』の後、前述の認識はすっかり逆転して、小中和哉氏に対する認識が「あの小中千昭氏の弟」というものになってしまったというのは、小中和哉氏にはいささか失礼とは思うが、これまた正直なところである(笑)。

■小中千昭氏のキャリアは、脚本家としてではなく、映像ディレクターとしてスタートしたとのことである。映像ディレクター、というとちょっとわかりにくいが、要は商業映画やTVドラマに限らない映像全般の監督、ということで、TV番組からPRビデオ、博覧会展示映像など手広く手がけていたらしい。
 また学生時代から、特殊映像(笑)専門のライターとして脚本ではないが文筆業にも手は染めていたとのこと。

■その後、たまたま脚本の仕事を始めてみたところ、これが水に合って、転進した、ということだが、現在の活躍ぶりをみるにつけ、それはご本人にとってもファンにとっても、非常に幸せなことだったという他ない。

■そんな訳で、二人で平成ウルトラシリーズを支えた小中兄弟だが、3年間のシリーズのスタッフリストを眺め渡してみると、和哉氏がメインの監督を務めた『ウルトラマンダイナ』には千昭氏の脚本作品はなく、千昭氏が脚本(&シリーズ構成)で参加している『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンガイア』には和哉氏の監督作品はない。何か兄弟間での申し合わせでもあったのだろうか? ちょっと興味深いといえば興味深いところではある。

■因みに、前掲の仕事リストの「小中千昭WORKS」の項にあげたのは、あくまでも「主な仕事」「代表作」に限ったものであり、実際に氏が脚本を手がけている作品はTVドラマからアニメOVAまで、実に多岐に渡り、非常に多作である(そのあたりは小中千昭氏のご本人のサイトでも情報を得ることができるので、ここでは割愛するが)。

■小中千昭氏の作風は、『ウルトラマンティガ』などの特撮作品においてはそのクールさが高い評価を得ている。
 近年氏が手がけた主な作品では必ず「シリーズ構成」という役職がクレジットされているが、作品世界を一段高いところから見下ろしてその世界観をきっちり構築する、というのが氏の基本姿勢として常にあるように思う。
 その創作姿勢が独特のクールさを産んでいると思うのだが、さらには「シリーズ構成」の分身(?)ともいえる、物語を一歩外から傍観する立場のキャラクター(フリーの記者とか、TV局のディレクターとか)が配置され、観る者に複数の視点、価値観の存在を感じさせることも多い(『魔法使いTai!』『ウルトラマンガイア』など)。

■しかし、氏の作風のもうひとつの特徴として、きめ細かな心理描写というのもある。『ティガ』においてもダイゴとレナのロマンスの描き方にその片鱗を見ることができるが、その特徴は、少女マンガアニメのジャンルにおいて、最も遺憾なく発揮されている。
 今回の特集では、氏のそのあたりの側面について特に紹介してみたい。

■なお、余談であるが、小中千昭氏と小中和哉氏は共同で有限会社こぐま兄弟舎というユニットを設立しており、そのユニットで『くまちゃん』という1本の映画が製作され、世に出ている。
 脚本小中千昭、監督小中和哉のその映画は、草刈正雄の主演で、優柔不断な彫刻家とその恋人のもどかしい大人の恋愛を一種のお伽話のようなタッチで描いた佳作なのだが、その物語は、主人公が地球に落ちてきた、どうみてもぬいぐるみの熊にしかみえない宇宙人(?)を拾うところから始まる……。
 小中兄弟のある意味原点を映像化したこの作品、たぶん現在はレンタルビデオなどでよく出回っていると思うので、興味のある人は探して観てみるのも一興なのではないかと思う。


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