編集後記#46
たこいきおし


■前号からまたおおよそ2年のご無沙汰でした。糸納豆EXPRESS46号をお届けします。
 もはや丸2年とか丸3年のブランクは当たり前となりつつはありますが、今年で一応創刊から31年。31年で46号というのは号数として微妙ですが、号数が年数を下回らない程度には細々と続けていきたい所存です(笑)。

■まずここで、2月末に逝去された殊能将之センセのご冥福をお祈りしたいと思います。訃報がtwitterで流れた3月末、SFファンダム、中でも名古屋系グループの知人の多い自分のTL上では氏への追悼、哀悼のツイート、また、追悼のblogエントリへのリンクであふれた印象でした。
 大学時代は仙台にこもっていた自分から見ると、ファンジンにおける氏の活躍は憧れであり、その後、ミステリ作家としてのデビューの際にはファンダムに激震が走ったのをよく覚えているし、奇想コレクションではよりによってアヴラム・デイヴィッドスンの短編集を編んでみせる等、「心憎い」という言葉がこれほど似合う人も珍しい、と思います。
ファンダムとは関係のない人々に対しては、最後まで「覆面作家」のままだったんだな、ということには新聞の訃報を読んで気づきましたが、最後の最後まで「粋」を貫いた、という印象。改めてご冥福をお祈りします。

■訃報といえば、糸納豆のこの2年のブランクの間にはスティーブ・ジョブズも世を去りました。最近ようやく日本語ペーパーバック版の伝記も読みましたが、ジョブズの数々の愚行もきちんと書かれた中立的なスタンスの内容ではあるものの、ジョブズ不在の間のアップルの歴史がほとんどなかったかのようにすっ飛ばれているあたりは読んでいて歯がゆくなる点も…。
 自分がMacintosh IIvxを使い始めたのはまさにアップルの長期低迷が始まった時代で、ある意味象徴的な「残念な機種」を最初に選んでしまったなあ、とは思いますが、おかげで今でもこんな風にDTPファンジンを作り続けてます。
 銀座のアップルストアの開店初日の行列にも並んだことがありますが、あれもある意味貴重な経験? TVとかではあまり語られませんが、開店初日はさておき、iPodがブレイクするまでの数年間は、あのストアは休日でも閑古鳥が鳴いてました。今となってはちょっと懐かしいかも。ジョブズ亡き後、逆風が吹きつつありますが、また閑古鳥が鳴く日が来ないことを祈りたい、かな。
 そういえばtwitterでつぶやいてちょっと気に入っている小ネタを一席。お題はジョブズ伝記のあらすじ?
「信頼していたスカリーにアップルを追われ、冷凍睡眠にかけられたジョブズが21世紀に目覚めてみるとなぜか自分の発明品で世界が変わっていた。現実歪曲フィールドが時間を超える傑作SF『 iへの扉』」

■因みに、今回の表紙は、昨年海外出張で行ってきたオレゴン州ポートランドで、ちょうど滞在期間中に開催されていたビアフェスティバルの寸景。今号の「お楽しみ〜」のテーマが『もやしもん』ビール編なので、ビールのお祭りの写真をセレクトしてみました。笑顔でビール!
 因みに出張の用事は今回もビール学会(4年に一度の世界大会。いわばビールのワールドコン? 略すとWBC (笑)になってしまうのはご愛嬌)でしたので、会場ではやっぱりアメリカのクラフトビールがいつでも飲み放題(笑)。

■ともあれ、今回の掲載原稿へのコメントなど。

□お楽しみはこれからだッ!! #61
 題材としてはかねてより懸案だった『もやしもん』、その中でも特にビール編について、他の人には書けないと思われるネタもいろいろ盛り込んで語り尽くしてみました。
 ビール業界(大手)は血を吐きながら続ける悲しいマラソンのような商品開発が続きますが、「笑顔が最も似合う飲み物」を目指してこれからもがんばります。

■因みに今回のBGMは2011年11月11日に活動休止を発表したムーンライダーズの中野サンプラザでのライブをCD化した『Ciao! THE MOONRIDERS』ということに。メンバーのソロ活動は休止以降むしろ活発化していてそれはそれでうれしい悲鳴だったりもしますが、いつかはまたムーンライダーズとしてのライブが聴ける日が来て欲しいところ。とはいえ、このライブを現地で体験できたことは、ファンとしては一生の想い出なのは間違いありません。

■毎号、予告らしきことをこの一節に書きつつ、実際には予告になっていないことが多かったですが、今回は、珍しく予告にあげていた、『もやしもん』ネタの「お楽しみ〜」を書き上げることができました。次はどうしようかなあ…。下手に予告しない方が正直でいいか。そうれもそうだ(笑)。
 ともあれ、来年のSFセミナーあたりでまたお会いしましょう。

(編集のBGM MOONRIDERS『Ciao! THE MOONRIDERS』)


「糸納豆EXPRESS・電脳版」に戻る。
「糸納豆ホームページ」に戻る。