お楽しみはこれからだッ!!
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第9回 “魔獣降臨(まけものきたりて)ふたたび”
 掲載誌 霧笛4
 編集/発行 五×嵐耕/五×嵐耕・五×嵐宏子
 発行日 1990/11/30


 ごめんなさい。宮沢さんの“武蔵野会レポート”が載る筈の“糸納豆EXPRESS”には全く手もつけず“お楽しみはこれからだッ!!”ばかり描いてるたこいです。宮沢さん沢千代さんに続き“霧笛”にお邪魔させていただきます。

 さて、今回のテーマは“魔獣降臨(まけものきたりて)ふたたび”。

「私は今のまま──。八雲さんがだぁい好きな今のままがいいわ」

 三つ目を開けるとアナーキー、三つ目を閉じると精薄児、という黄金のパターン(『三つ目がとおる』)をしっかりと踏襲している高田裕三『3×3EYES(サザンアイズ)』なのであった(笑)。路線としては、まあ、伝奇アクション+ファンタジーRPG、と、いったとこ。最近の少年マンガの趨勢からいくと、これで売れなきゃ嘘である。

 三つ目の妖怪三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)最後の生き残りの少女パイ、と、パイの力で不死身の“旡(うー)”になってしまった藤井八雲。この二人がとにかくかあいい(笑)。

 第一部のラストで行方不明になったパイが、事故で孫を失った老夫婦に拾われて日本で女子高生していたという第二部の導入部も随分意外だったけど、第二部のラストには本当にびっくりした。こんなに気持ちよくペテンにかけられたのは実に久し振り。未読の人のお楽しみを奪わないため、敢えて詳細は伏す(笑)。

 それで台詞はというと、その第二部のクライマックスより。いや、やっぱりオリジナルのパイの人格より綾小路ぱいの方が性格にメリハリがあっていいよね。と、いうのは『3×3EYES(サザンアイズ)』を読んだ人にしかわからない話なのであった。


「ね…。あたしをつれてるのって…。やっぱり不知火の遺言?」
「おまえはなんでついてきたんだ?」
「妖怪退治がすきだからだと思う?
 あたしは女で、
 あんた…男なんだよ」
「おまえは女じゃなくてまだ忍びなんだろ?」

 色即是空、空即是色、盛者必滅、日々流転。男子三日会わざれば刮目して見よ。という言葉があるけど、それじゃあ女の子はどうなんだい。

 てな訳で、久し振りにりぼんの話。僕がりぼんをよく読んでたのは主に70年代後半だから、“三日”どころの話じゃないな。10年以上も昔ではないか。

 十年一昔という言葉があるけど、時間の流れが加速された80年代90年代にあっては三年一昔くらいのペースで物事は進む。してみると僕が毎月『砂の城』とかを楽しみにしてた頃ってのは、もう三昔か四昔くらい前ってことになる。今ではりぼんもすっかり様変わりしてしまって、昔の面影どこへやら。

 とはいったものの、個々のマンガをタイプ分けしてみると、りぼんという雑誌のカラーそのものは変わってしまっているように見えて、意外にそうでもないことに気づく。ある意味では保守的とさえ言っていいのかもしれない。

タイプ1→正統的乙女チック路線
  田渕由美子     柊あおい
  太刀掛秀子 〜〜〜 水沢めぐみ
  陸奥A子      谷川史子

タイプ2→ドタバタラヴコメ路線
  山本優子  〜〜〜 池野恋
  坂東江利子     浦川まさる

タイプ3→下品ギャグ路線
  土田よしこ 〜〜〜 岡田あーみん

 これが例えばさくらももこになると、特異点というか、空前絶後というか、ちょっと他に類例を思いつかない。そういえば一条ゆかりという人もいたが、この人は今もいるので後継者がどーとかいうレベルの話ではないな(笑)。

 さて楠桂。

 抜け忍が妖怪退治の旅を続けるという少年マンガ的な設定に少年マンガそのものの絵柄の『妖魔』なんか読んでると、どーしてこんなマンガがよりにもよってりぼんに載ってるのだろうか、とか思ってしまう。

 しかし楠桂のデビュー当時のプロフィールをみてみると、尊敬するマンガ家という項目にはなんとなんと“太刀掛秀子”の名前をあげているではないか! 全くもって、人は見かけで判断してはいけない(笑)。

 ともあれ、一見りぼんとミスマッチな印象のある楠桂だって、ちゃあんとりぼんの系譜の中に位置づけることができる。

タイプ4→少年マンガ的な絵柄、オカルト、SFタッチの設定、ノリが異常で、とにかく勢いのよいラヴコメ路線
  弓月光   〜〜〜 楠桂

 この説に納得がいかないという人はRMC(りぼんマスコットコミックス)から出ている弓月光の諸作と、楠桂『たとえばこんな幽霊奇談』を読み比べてみよう。

 因みに今回のテーマは“魔獣降臨(まけものきたりて)ふたたび”なので、台詞は『妖魔』より。主人公の忍者緋影(ひかげ)と、相棒のくの一抜け忍妖(あや)の、恋仲になりそでならないもどかしいやりとり。実はけっこう気に入ってたりしてね(笑)。

「あんとき…、どうしてにげろって?」
「あれが男で、おまえが女だからだ!!」
「へえ?」


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