お楽しみはこれからだッ!!
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第21回 “復活の時”
 掲載誌 TORANU TあNUKI 141〜143号(通巻第48号)
 編集/発行 渡辺英樹・渡辺睦夫・原科昌史/アンビヴァレンス
 発行日 1992/7/31


 あ、どうも、僕がSFセミナーで睦夫さんと一緒に“少女漫画の部屋”などという恥ずかしい(笑)合宿企画のゲストをしてしまったたこいです。ま、それはそれとして、今回のテーマは、“復活の時”。

「戦うのはあなたたちの勝手だわ。なのになぜ私たちがひどい目にあわなけりゃならないの」
「その答えは存在しないのだ……。
 姉上……。
 足元をごらんなさい。
 姉上はたったいまアリの巣をふみつぶした。さだめしアリの群れは憤っているでしょう。なぜ我々が迫害を受けねばならぬのかと」
「神や魔の目から見れば人間はアリでしかないのね」

 石川賢『聖魔伝』より。これは連載当時から気にいってた台詞の一つ。

 まあ、昔から同じダイナミックプロで、作風も画風も似ていることから、永井豪の陰に隠れがちだった石川賢なのだけど、永井豪が週刊少年マガジンにおける『凄ノ王』の連載中断を最後に事実上の作家生命が終わってしまった(と、個人的には思っている(笑))のとは対称的に、石川賢はというと、老いて(?)なお盛んといった風情がある。

 それを明らかに示していると思えるのが、かつてのロボットヒーローの焼き直しというコンセプトの永井豪『マジン・サーガ』(ヤングジャンプ→ベアーズクラブ連載中(当時))と、TVアニメの放映にタイアップして開始され、アニメが終わってもまだ続いている石川賢『ゲッターロボ號』(少年キャプテン連載中(当時))である。


 かつての永井豪のマンガは物語が作者の手を離れて暴走してしまったような作品ばかりであった。ほとんどのマンガは作者も先の展開がわからないで描いてるような圧倒的なノリがあった。坂道を転げ落ちるような暴走である。

 『デビルマン』というのはその暴走がたまたま奇跡的に整合性のとれたラストに落ち着いた、希有な作品だったのだと思う。他の作品はみんな、物語の暴走を御しきれずに中途で頓挫しているに近い。『魔王ダンテ』『ハレンチ学園(ハレンチ大戦争編)』『バイオレンスジャック(黄金都市(エルドラド)編)』『おいら女蛮』『イヤハヤ南友』『凄ノ王』などなど。こうして改めてみてみると、永井豪の作品でちゃんと完結しているものの方が珍しいような気がしてくる。

 でもそんなことは気にならなかった。先がどうなるかわかんないからページをめくらずにはいられなかった。物語の整合性なんか蹴散らしてあまりあるほど、それらの作品は面白かったのだから。つまるところ永井豪の魅力とは、型にはまらない“暴走”感だったといっても過言じゃないかもしれない。

 『マジン・サーガ』は妙に理に落ちちゃってる感じがする。物語の“暴走”感はカケラも感じられない。永井豪本人が自分を型にはめちゃってるような、妙にせせこましい印象を受ける。もっとも、これは『凄ノ王』以降の作品全般に共通する傾向ではあるのだけど。

 さらにいえば、『マジン』に出てくるものは全てかつて永井豪の作品に出てきたもの、かつて使われたことのあるパターンである。それはもはや、ダビングにダビングを重ねたビデオの映像のように劣化しきっている。

「いや、おみごとおみごと。
 一文字號。私が目をつけた男だ!!
 君の勇姿を見ていて、つい昔を思いだしてしまったよ」
「なんだてめーらは」
「私は神…、神隼人!! これから先きさまに地獄を見せる男だ!!」

 永井豪がある時期を境に覇気を失ってしまったのと比べると、石川賢はここ15年以上まったくボルテージの低下が見られない。まあ、やってることには何の進歩もないのだけど、それが15年以上続いてしまっているというのが凄い。

 もっとも、全く変わっていない訳じゃもちろんなくて、特に画風の点では、昔と比べはるかに繊細な線を描くようになってきている。時代が変遷している中で同じボルテージを維持し続けるというのは、実質的には明らかに向上しているということなのである。永井豪のようにボルテージを維持できなくなってしまった人は、その時点で既に後退しているといえるのかもしれない。

 という訳で、まさにかつての『ゲッターロボ』の現代版リメイクに成功している(と思う)『ゲッターロボ號』。いきなり神隼人が博士役で出てくるのにはびっくりしたけど(笑)、冒頭の展開が旧『ゲッター』のパクリになってるあたりなかなか泣かせるものはある(笑)。しかし最近の展開は凄いぞ。

 アラスカにおける西側諸国巨大ロボット連合軍との共同戦線で辛くも敵の大軍団を阻んだものの、ゲッターロボ號は大破。身一つで日本に帰ったゲッターチームは神隼人の指示で浅間山麓に向かう。世界の未曾有の危機を前にして、伝説の巨大ロボット、ゲッターロボGが15年の眠りから覚めるのか? 少年キャプテン要チェックだ(笑)!


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