お楽しみはこれからだッ!!
YOU AIN'T READ NOTHIN' YET !!

第13回 “誰も知らない”
 掲載誌 TORANU TあNUKI 132〜134号
 (通巻第45号)
 編集/発行 渡辺英樹・渡辺睦夫/アンビヴァレンス
 発行日 1991/10/31


 “お楽しみはこれからだッ!”連載第13回はTTの番だ。星のめぐりが悪いんだかなんだか、TTでは細野不二彦ばっかりネタにしてたんで、たまには少女マンガの話でもすることにしよう。今回のテーマは、“誰も知らない”。

「く…くやし…。
 なぜあんたみたいな奴で…なきゃならないのか…」
「そりゃ…、こっちこそだよ。
 なんで、あんたに限って、こうイライラするのか…」

 あははは(笑)。こいつを知ってたらエラい! アベ浩子「制服の少女」(LaLa1986年7月号掲載)より。この会話は、男の子と女の子のハッピー・エンドの台詞としてはなかなか異色ではないかと思う(笑)。男の子の方は結構もてるけど、深いつきあいはしたがらない醒めたタイプ。女の子の方は、一見とっつきにくいポーカーフェイス、実は単に要領が悪いだけ。女の子は彼の前でだけはポーカーフェイスを保てない。男の子の方も、彼女に対してだけは醒めたポーズをとり続けることができない。お互いイライラしてさんざん口喧嘩して、たどりついた結論は……。

 こういう、全然ロマンチックでない恋愛ってのは、少女マンガの題材として使われることはあんまりないかもしれないけど、この作品は割とうまく扱うことに成功している、と思う。なかなかよい作品なのだが、アベ浩子という人、単行本は一冊も出ていないので、興味があるという人にはLaLaのバックナンバーをあたってもらうしかないな(笑)。


 アベ浩子のデビュー時期はというと、同じLaLaでいうと、星崎真紀あたりと大体同じだった、と思う。凄い傑作とかは描いたことはない(笑)。絵もそんなにうまい訳ではない(笑)。それでも結構長いことLaLaに作品を載せてもらっていた。本誌よりも増刊号が主な発表舞台で、全作品を集めれば単行本の2〜3冊位は出せるんじゃないかと思う。

 とはいえヒット作のない悲しさ(笑)、デビュー後何年たっても一冊の単行本すら出してもらえなかった。この「制服の少女」のちょっと後に、ニューヨークに住む優柔不断の狼男を主人公にしたシリーズが三作くらい発表された。このシリーズは一作50ページ位の中編であり、もしかするとこれはアベ浩子のコミックスが出る前兆か(笑)、と思ったものであったのだが、結局そのシリーズも地に埋もれてしまった。まあ、人気がなかったんだろうなあ(笑)。実際、同じような設定でも、桑田乃梨子「ひみつの犬神くん」の方がはるかにインパクトが強いのは否めない。

 余談だが、成田美名子『エイリアン通り』の後半部のモブシーンのほとんどはアベ浩子がアシストをしている。一目で成田美名子の絵とは違うとわかる端役は大体この人の絵だと思って間違いない(笑)。

 最近は全然名前を見かけなくなってしまったが、今頃はどこで何をしているのだろうか(笑)。こういう、そこそこいい話を描けるんだけど、メジャー受けしない、人気が出ない、ほんの少しだけ才能が足りない、といったような理由で結局は芽が出ないままに終わってしまうマンガ家のいかに多いことか。まあ、仕方のないことではあるのだけどね。

「明日も会ってね。
 お願いします。
 好きよ」
「あ…。
 はい。
 ありがとう」

 あははは(笑)。今回は妙な台詞を集めてみました(笑)。これはまあ、身もフタもないというか(笑)、飾りも何もないというか(笑)、けっこう間抜けな台詞ではありますまいか(笑)。

 作品は橋本みつる「歓迎と別離」。掲載誌は花とゆめPLANET増刊1991年9月1日号。

 橋本みつるもやはり単行本は出ていない。これから先出る可能性があるかっていうと、ちょっとあやしいと思う。デビューは88年くらいだと思うけど、僕の持ってる資料では特定できない。年に五指に足りないくらいしか作品を発表しないし、それぞれが短いので、まあ、寡作という部類にはいるマンガ家である。

 あ、因みに絵ははっきりいって下手です(笑)。

 この人の作品は何といっていいのか、普通のマンガの文法からちょっとはずれたようなとこがあって、ストーリーテリングというような意味でのストーリーがない日常スケッチとでもいった感じ。そこに描かれている感情は、作り物っぽくなくて、ナマの感情って感じがして、なんか、いいのである。

 おっと(笑)、作品に言及するスペースが無くなってしまった(笑)。ま、橋本みつるについてはそのうちまた、日を改めて(笑)。


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