モチコシ沢大滝

神奈川県足柄上郡山北町

モチコシ沢大滝  丹沢山塊には、いったいいくつの滝が存在しているのだろうか。それぞれの沢に十ぐらいと見積もるのは妥当なところだろうから、 数百ということになるのだろうか。それらの中のまだいくつも見ていない段階で、無理を承知で、このモチコシの大滝は五指に入ると断言してしまおう。 なにより高さのあること。50mはあると思う。そして新緑の中で映える花崗岩の白い岩肌は本当に涼しげで美しい。
モチコシ沢大滝
 玄倉でバスを降り、湖面を眺めながら5分ほど林道を歩くと、玄倉川は湖面から清流に変わった。 河床の石がはっきり見えるほど、水はよく澄んでいる。発電所が道の脇に建っている。上流の玄倉ダムから取水しているのだろうか。 有効落差258mとの説明書きがある。これから向かうモチコシ沢は、このダムのすぐ下流にあるのだから、今日これから登らなくてはな らない高度差を示しているのだろう。
 川に沿って林道を歩き続けると、分岐に出た。西丹沢県民の森に向かう赤い鉄橋が樹間に見える。分岐からユーシン方面にさ らに林道を進むと、車止めが現れた。越えて進むと、最初のトンネルである境隧道が現れる。河原へ降りるのは2つめのトンネルのあた りを予定していたから、もう近くまで来ていると思ったのだが、それから15分ほど歩き、やっと2つめの青崩隧道に着いた。
 見下ろすと、川はかなり深いところを流れている。さてどこから下ろうかと見まわせば、このトンネルの入口につけられた洞門の脇 の岩には、赤ペンキでモチコシと書かれていた。ここは丹沢なのだ。沢登りに訪れる人も多いのだろう。指示にしたがって、すぐ手前の急 斜面のほとんど涸れてしまっている沢沿いを下って古い堰堤の上に出た。
 玄倉川の河床を上流に向けて歩き始める。見上げると沸岩がそびえ立っている。この岩を越えるためにトンネルが掘られているようだ。 車道とガードレールが見える。玄倉川は、少し上流にある玄倉ダムから、この沸岩までは流れが北に屈曲している。この屈曲部の再奥でモチコシ 沢は流れ込んでいる。  湾曲部に入り、しばらくは右岸を歩き、徒渉し左岸に渡った。水も少なく容易だ。徒渉のために使ったのであろうか、水際にがボルトが打たれていた。 これを目にしたとき、ふと今日の装備の軽いことが気にかかった。せっかくここまできたけれど、滝までたどり着けずに帰るはめになるのではないか。 滝を見るだけとのことで少しなめていたかもしれないと不安になる。
 河原には大石が散在するようになる。3mぐらいの大石が行く手を阻む。山側のや ぶを登り、乗り越えてみれば、対岸に渡らなくてはならない。ふたたび徒渉して右岸に渡り草の生えた露岩の下に出た。水際の岩を乗り越え、河原に降 りると、流れは右に続いている。再奥部に到達した感じだ。モチコシ沢の出合いはこのあたりにあるはずである。 出合
 知られた大きな滝があるだけに、大きな 沢の流れ込みを頭に浮べていたが、これははずれだった。V字形にえぐり取られた岩の隙間から勢いよく水が滑り落ちている。これがモチコシ沢であった。 岩に邪魔されて流れが30cmほどの幅に凝縮されているから勢いが強いのだ。岩の前に立ち覗き込むと、白っぽい岩の滝が見えている。
 せっかくここまで足を運んだのだから全体像をカメラに収めたいが、滝全体を見るためには壁をへつっていく以外に方法はなさそうだ。河原に荷物 を置き、広角レンズをつけ、右岸の岩にとりついた。足場を見つけては、恐る恐る足を進める。幸い、もし滑ったとしても怪我をする程度で済みそうではあるが、 それでもけっこう怖いものだ。
大滝のすぐ下には小滝があり、渕になっていた。この渕は泳ぎでもしないと越えられそうにない感じだ。もう滝の全体は見えてい るのであるから充分だろう。ここで写真を写すことにしよう。
 左手で岩のかどをつかみ、片手での撮影となった。滝を訪れていると不安定な場所での撮影はもう慣れっこになってはいるものの、 幅が5cmにも満たない足場に立って、弱腰で覗き上げるのであるから、滝は益々威圧的に見える。しかし全体に美しい滝だ。シャッターを押す瞬間は、本当にここまで来て よかったと感じた一瞬でもあった。
モチコシ沢の流れ込む附近 上流にある棚
モチコシ沢の流れ込むあたりでは、玄倉川は狭まった峡谷となっている。 少し上流の露岩には水が落下していた。高さは30m以上あるだろうか、これも立派な滝である。

訪問のために

<アプローチ> 小田急、新松田駅前から西丹沢自然教室行きに乗って、玄倉で下車する.玄倉は丹沢湖東の外れに位置し、ユーシン方面の入口. 玄倉を経由しないバスもあるので注意が必要.
<所用時間> バス 45分.青崩隧道までの林道歩き 1時間30分.遡行 30分.
<地形図> 中川(1/2.5万).


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